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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十五話「夢にまで見るその背中」

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炎対策

「炎のほうに突っ込むからフォロー頼むな。ちょっと水を体にまとわせてくれると助かるかも」


「構わないけど・・・あれだけの炎だとすぐに蒸発させられちまうぞ?」


「それでいいんだよ。ある程度体は守るから任せてくれ。ベルは向こうの水の魔術師にちょっと圧力かけてくればいい」


「わかったわ。そこまで圧力はかけられないから気を付けてね」


「まぁ水の攻撃ならウィルの防御を抜けることはできないだろ・・・問題なのは窒息させられかねないってところかな」


炎の魔術に関しては強引に突っ込み突破することができるのはすでに立証済みだ。熱量とその攻撃を受けている時間によって限界があるだろうが、数秒程度であればウィルの防御膜は問題なく康太の体を守ってくれるだろう。


だが水の魔術に関してはウィルの防御でも防ぎきれない。何せ水でおおわれてしまっては息が吸えなくなる可能性があるのだ。


そうなると攻撃が効く効かないの段階を越えてしまっている。今警戒するべきは水の魔術師なのだ。


「行くぞ、フローウィル」


康太の合図とともにウィルがその姿を変えて康太の体を守る鎧となって見せる。


炎を体で受けても問題がないように全身を覆った状態で康太は勢いをつけて一気に炎を扱う魔術師めがけて突進する。


唐突な乱入者に二人は即座に勘付いた。


黒い何かをまとった魔術師、止めに来たのかそれともこれを機に拠点を奪いに来たのか、どちらか判断できない二人、特に直接狙われている炎を扱う魔術師は康太めがけて強力な炎を放つ。


どれほどの熱量があるのか判別もできないが、康太は即座に大きく息を吸ってからウィルの鎧の隙間を完全にふさいで炎に対する対策をして見せた。


そしてそれに呼応するかのように康太の体の前に水の盾が現れ、康太の体を包み込むように水の膜が現れる。


水の盾が現れたことで、康太が水を扱う魔術師の仲間ではないかと思ったのか、さらに炎の攻撃を強めていくが康太はその炎に臆すことなく突っ込んでいく。


もとより攻撃に突っ込んでいくのは覚悟の上なのだ。相手が水を蒸発させるだけの熱量の攻撃を使ってきても突進するのをやめるつもりはなかった。


自身を守っていた水がすべて蒸発するのを確認しながら、康太は暴風の魔術を発動する。


風と炎の相性は良い。風は炎を強め、炎は風を巻き起こす。


康太は自身の周りに風を起こすことで炎の方向を変えわずかでも体の周りに炎がないような状況を作り出そうとしていた。


だがやはり、さすがにかなりの高温。ウィルの鎧で防御していても康太の体にわずかにではあるが熱量が伝わってくる。


時間はかけられないなと、康太は一気に魔術師との距離を詰めた。


炎の魔術というのは炎の性質上、術者の近くで発動するのを避けるべき魔術だ。


低い威力などであれば問題はないが、今回のような高い威力を有している炎の場合、その熱量と発せられる光だけで人体に大きな影響を与えてしまう。


具体的に言えば光に当たるだけで火傷をするのだ。それだけの熱量を持った炎を扱う際、術者自身が自らの炎に焼かれるなどということがないように炎を顕現する場所は多少術者から離れた場所に設定する。


つまり炎を扱う魔術師と戦う上で最も安全なのは、術者と距離をゼロにした場所。接近戦こそが最も適した戦いなのだ。


康太が炎を突っ切って魔術師の前に現れると、動揺してはいるものの迎撃の態勢は整えられている様子だった。


そう、炎を扱う魔術師は自らの周りが安全地帯だということを熟知している。それゆえに近接戦闘をある程度行えるものが多いのだ。


相手がイチかバチかで近づいてきても対応できるようにある程度訓練を積んでいる。


この辺りの魔術師が多い場所で荒事を起こすような魔術師だ、戦い慣れているというのは最初からわかっていた。


だからこそウィルだけを分身として派遣せず、康太自身が直接出向いたのだ。


相手は自身に肉体強化をかけて応戦しようとしている。この反応は康太も十分予想できたものだ。


肉体強化を扱えることくらいは予想済み。おそらくは肉弾戦もある程度こなせる魔術師だろう。


だがそれでも、戦闘に特化し、肉弾戦を最も得意とする康太には及ばない。


康太にめがけて襲い掛かる拳を軽く受け流すと、その腕をつかんで思い切りひねりあげる。相手がバランスを崩した瞬間に足めがけて再現の魔術を発動する。


康太にしては珍しい、蹴りの一撃を再現したことにより相手は体勢を完全に崩してしまう。


いくら肉体強化をかけていても、別に人間を超えた動きができるわけではない。重心は変わらないし、関節がいつも以上の可動範囲を持つこともない。


人間の体の動き方を知っていれば取り押さえるのはそこまで苦労はしない。


何より今康太の体にはウィルがついているのだ。康太がその体をつかんだ瞬間に即座に動き出したウィルはそれぞれの関節にまとわりつくと硬質化しその動きを阻害する拘束具となった。


康太自身も肉体強化をかけ相手を完全に組み伏せると小さくため息をつく。ウィルが防御をやめたことでその肌に周囲の熱気が伝わってくる。


これだけの熱量、直撃を受けていたら間違いなく死んでいただろうと冷静に分析しながら状況を終わらせることができたことに安堵していた。


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