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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十五話「夢にまで見るその背中」
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結果と次の戦い

「私たちが聞きたいのはあなたたちがなぜこの場所を拠点にしたのかということです。お聞かせ願えますか?」


康太と倉敷が話をしている中、文はさっそく二人に対して本題を切り出していた。


どうして拠点にしたのか、そんなことを唐突に聞かれたが何となくそれを聞かれるということに心当たりがあったのか二人はどう答えたものかと悩んでいるようだった。


「質問に答える前にいいだろうか、なぜ君はそんなことを聞く?何か理由があるからだろう?」


質問に対して質問で返す。康太や奏だったら即座に拳が飛んで発言できる立場かどうかをわからせるところだろうが、あいにく今の質問者は文だ。彼女の思うようにやらせるのが一番いいだろうと康太は静観し周辺の警護に努めていた。


「さっきも少し言いましたけど、修業の一環なんです。師匠からこの辺りの魔術師の密度が妙に多いということを聞きまして・・・その原因を突き止めて来いと・・・」


「なるほど・・・調査に加え戦闘の可能性もある・・・総合的な魔術師としての依頼を想定した修業なわけだね・・・」


何やら納得しているようだったが、実際はすでに何度も依頼を受け、今回のこれも支部長から直々に受けた依頼なのだが、そのあたりは黙っておいたほうがいいだろう。


文が目的を素直に話した時は少し康太も驚いたが、文の修業のためという名目に二人の魔術師はどういうわけか警戒を薄め、なるほどと納得しているようだった。


「修業なのはいいけれど、ブライトビーが一緒にいるのはどうなんだ?一緒じゃ修業にならないんじゃないのか?」


「もうお二人とも知っているかもしれませんが、私とビーは協力関係・・・同盟を結んでいます。二人とも未熟な魔術師ということで師匠同士もつながりをもって互いの弟子を指導しているんです」


その関係でビーも今回の修業を受けさせられているんですよと文は笑って見せる。嘘はほとんど言っていない。真実と嘘を適度に混ぜることで相手をけむに巻いているという印象だ。


文のことを特に警戒していない二人の魔術師には十分有効な手段だろう。


実際文の師匠である春奈から何度か課題を出されたこともある。逆に文が小百合から課題を出されることもある。


どちらも両方の師匠から指導を受けているため、完全な嘘というわけでもないのである。


「じゃあそっちのは?魔術師じゃないみたいだけど・・・?」


そっちのと言われて指さされたのは倉敷だった。先ほどからほとんど何もしていないように見える彼がいったい何なのか二人は気になっているらしい。


「あれはうちの小間使いになってる精霊術師です。今回の修業の採点役で同行してます。基本的にただついてくるだけなので気にしなくていいです」


ただの採点役。またうまい嘘を言ったものだ。小間使いという言い方が少し気になるが今の倉敷は確かに春奈のもとでいろいろと手伝いなどをさせられている。そういう意味では小間使いでも決して間違いではないだろう。


本人からすれば不名誉な言われ方だが、ここでは黙認する以外に方法がなかった。


「もう一つ・・・これだけ魔術師がいる中で俺らを選んだ理由は?穏便に話を済ませるならほかの傍観してた魔術師たちに話を聞くとかでもよかっただろうに」


この質問に文はどう答えたものかと一瞬思案してしまった。


「あー・・・それはですね・・・」


確かに彼の言う通りなのだ。もし仮に文が全く戦闘を想定しておらず、話し合いでこの状況を調べようとしているのであれば戦いを行っている二人よりもそれを眺めている魔術師たちに話を聞いたほうがよほど安全だし迷惑がかからない。


戦っている二人を選択し、わざわざ話を聞きに行ったその理由。本当はこのような状況でもいざこざを起こしている二人が何か特別な事情を抱えているということを予想して選んだのだが、先ほどの文の回答からこの答えを出すのは少々不自然なように感じた。


そんな時、文の背中に何かが当たる。


いや当たるというより、何かにつつかれているような感覚がある。それが康太の使う遠隔動作の魔術であると気付くのに数瞬を要したが、文は康太が自分に助け舟を出してくれているということをすぐに理解した。


「実をいうと・・・主にあいつが原因でして・・・私の制止も聞かずに勝手に突っ込んじゃって・・・すいません、私がちゃんと止められていればこんなことにはならなかったんですが・・・」


申し訳なさそうにそう切り出した文は康太のほうに視線を向ける。そしてその視線と言葉に気付いたのか、康太はあぁん?と明らかに異を唱える声を出して見せた。


「なんだよ、ちゃんと無傷で捕まえたんだからいいだろうが。負傷させずに無力化させるのがどれくらい大変かわかってんのか?」


「あんたの場合完全に戦闘不能状態にさせるから可能な限り動いてほしくないのよ。今回は良かったけど次からは勝手に動かないでよね」


はいはいと康太はため息交じりに手をひらひらと振っている。先ほどの遠隔動作の意図はしっかりと伝わっているようで康太は内心安堵していた。


理路整然とした文の思考では先ほどの行動は明らかに矛盾する。だから何をするかわからないが代名詞であるデブリス・クラリスの弟子である康太が勝手にやったことにすればこの流れを切り抜けられるという風に考えたのである。


結果その考えは思ったよりもうまくいった。ブライトビーが勝手に動いたのであれば仕方がないなという考えに加え、ライリーベルは苦労しているのだなという同情にも似た感情を抱いているようで、すでに先ほど文に向けた質問をこれ以上追及するつもりはないようだった。


康太の機転のおかげで何とか切り抜けられたなと文は内心冷や汗をかいていた。


「質問は以上ですか?なら私の質問にも答えていただきたいです。あなたたちはなぜこの場所を拠点に選んだんですか?」


これ以上聞かれるとさすがにぼろを出すかもしれないと文はせかすようにそう切り出した。


別に聞かれたところで別の嘘や考えを口に出せばいいだけだが、それらが思いつかなかった場合どうしようもない。


先ほどはうまいタイミングで康太が助け舟を出してくれたが、次も康太が何か良い案を思いつくとは限らない。


さすがに話を先に進めないと次は何を聞かれるか分かったものではないのだ。


「わかった・・・まぁ質問には答えよう、こっちもいろいろ聞いてしまったからね・・・えぇと・・・まず私がこの辺りを拠点にしているのは大体五年前から、拠点にしている理由は勤め先の関係でこの辺りに住んでるから・・・としか・・・」


「ということは地元民の方ですか?あんまり方言じゃないですけど・・・」


「住んでるのはこっちだけど、もともとは千葉出身だからね。そこまで方言はないさ」


どうやら片方の魔術師は今回の魔術師の密集とは全く無関係な、もともとこの辺りを拠点にしていた魔術師であるらしい。


それなら最近変わったことはなかったかと聞きたいところではあるが今はもう一人の魔術師からも話を聞きたい。その質問は後回しにするべきだろう。


「俺は割と最近だな。一カ月くらい前か」


「最近ですね・・・ちなみに理由は?」


「あぁ、俺もともと別の場所を拠点にしてたんだけど・・・そこを別の魔術師に取られちゃってさ・・・困ってたら拠点を譲ってくれるってやつがいたんだ」


「あの・・・もともとどのあたりを拠点にしてたんですか?九州近辺?」


「いいや?俺は石川のあたり・・・日本海側だな」


その言葉に文は眉を顰める。もともとこの近くに拠点を持っていて他の魔術師に奪われ、知り合いから新しく拠点を譲ってくれる人が現れこの場所にやってきたというのであれば別段不思議なこともなかったが、石川県に拠点を持っていたのに唐突に九州の大分県に拠点を移すというのは少々、というかかなり不自然だ。


仮に拠点を譲ってくれるといっても場所が遠すぎては拠点にはならない。移動そのものが面倒なのだから。


「なんでいきなり石川県から大分県に・・・?拠点を譲ってくれるって言ってもさすがにそれは・・・」


「門が使えればぶっちゃけ距離はあんまり関係ないし、何よりその拠点が結構いい場所でさ・・・まぁここまで魔術師が増えてるとは思わなかったけど・・・」


「いい場所って・・・具体的には?」


「俺好みっていうか、なんていえばいいんだろうな・・・なんか気に入ったんだよ。雰囲気とかそういうのが」


要領を得ないこの回答に文と康太は何となくではあるが勘付いていた。


好みや気にいるというのは、あくまでその個人の感性の問題だ。そこに他人から口出しできるような理屈や理論などは入り込む余地はない。


デザインなどを例にしても、人によってどの形がいいかなどは千差万別。人の感性に特定の常識というものは通用しないのだ。


今回の場合拠点を気に入ったということだが、その拠点のどこを気に入ったのか具体的に彼は言っていない。全体的な雰囲気が気に入ったというニュアンスなのだろうが、おそらく本人も具体的にどこが気に入ったのか理解できていないだろう。


これはあたりを引いたかもしれないと文は内心ガッツポーズをしていた。


「その拠点を譲ってくれたのってなんて人ですか?さすがにこんな魔術師が密集してる場所を紹介するなんて・・・ちょっと詐欺っぽいですよ?」


「金とかはとられてないから安心してくれ。まぁ、ちょっと人が多いのは気になるけどな・・・えっと確か名前は・・・なんだったっけ・・・?」


「知り合いではないんですね?」


「あぁ、拠点とられた・・・三日あとくらいかな?どうしたもんかなって協会で途方に暮れてたら話しかけてきてさ・・・なんて奴だったかな・・・?」


拠点を譲ってくれる。少なくとも本人が気に入っているような拠点を譲ってくれた人物であったなら名前くらい覚えていてもいいだろう。


だが彼は覚えていない。なぜか思い出すことができずにいる。


明らかに不自然なことが重なっている。何よりタイミングが良すぎる。


拠点を奪われるというのはつまりほかの魔術師たちに襲撃を受けたか、留守中に乗っ取られたかしたのだろうが、どちらにしろ拠点を奪われて三日で拠点を譲ってくれる人物が話しかけてくるというのは明らかに不自然だ。


今回の手口が大まかにではあるが見えたなと文は小さくうなずいていた。


まず奪いやすい戦闘能力の低い、あるいは奪いやすい拠点をしている魔術師の拠点を奪い行き場をなくさせる。その後に拠点を譲るという話を持ち掛ける。


無論そんな話を唐突にされても当人は信じないだろう。そこで実際に見学という形で昼間にでも拠点の場所を紹介しに行く。


昼間ならば魔術師たちの活動はそこまで活発ではない。魔術師の活動が活発でなければ索敵なども使わず、この辺りにある方陣術にも気づかなくても不思議はない。


そして拠点を見せたところで暗示に近い魔術を使用する。


これは当人の好みなどに干渉する一種の洗脳に近い魔術だ。無意識に干渉しその人物の好みを改変、あるいは操作しその拠点が魅力的であると認識させる。


あとは紹介した魔術師に自分の名前や顔などを忘れるように記憶操作して拠点を譲ればいいだけだ。


そういった手口を繰り返せば必要最低限の苦労で特定の場所に魔術師を集めることができる。


中には断るような魔術師もいるだろうし、好みを変える魔術も効きが悪い魔術師もいるだろう。だが数をこなせば問題なくこれだけの数はそろえられる。拠点を奪い、紹介し、譲る。最短で三日に一人魔術師をこの辺りに呼び込めることになる。


「ありがとうございます。ちなみにですけど、この辺りを拠点にしてて何か変わったことはありますか?特にどれくらいの時期から魔術師が増え始めましたか?」


「んーと・・・どれくらいだったかな・・・半年くらい前から少し増えたって思い始めたかな?ただあくまで私の感想だから正確ではないかもしれないけれど・・・」


半年前というと今年度が始まってすぐのことだ。そのあたりから徐々に増え始め、最近になってようやく人数が増え始めたというところだろう。


もともとこの辺りにどれくらいの魔術師がいたのかはわからないが、仮に百人集めるために必要な日時を先ほどの工程で三日に一人集めることができたとすれば三百日あれば百人集められることになる。


だが実際は半年、つまり百八十日程度しか使われていない。複数人でこれらを行った説が濃厚になってくる。あるいは複数人で一緒に使っていた拠点を奪えば一気に複数人を特定の場所に連れてくることもできるだろう。


個人個人で交渉するよりはずっと効率的だ。もっともその分難易度も増すことになるが。


「増え始めた時期に何か変わったことは?特に特定の魔術師がうろついてたり問題を起こしてたりだとか・・・」


「とくにはなかったと思うよ?話題になるようなことも、別段騒ぎになるようなことも・・・うん、特にはなかったと思う」


記憶を掘り起こして何かあっただろうかと思い出しているようだがまったく心当たりがないのか申し訳なさそうに首を横に振る。


だが今回の事象が何者かによって引き起こされていること、そしてその手口の一部が露見しただけましだと思うべきだ。


最初の接触で最近この辺りにやってきた魔術師に遭遇できたのは運がよかった。そして昔からこの場を拠点にしていた魔術師に会えたのも同時に運がよかった。


この辺りに最近やってきた魔術師の分布などを知ることができるだろう。


「あの、よかったらでいいんですけど、この辺りに最近やってきた魔術師たちの拠点の場所を大まかでいいので教えていただけますか?」


「あぁ、構わないよ。といってもこの辺りはほとんど最近やってきた人たちばっかりだけどね・・・」


「それと可能ならお二人の拠点を見せてほしいんです。無論ダメというのならあきらめますが・・・」


「別に構わねえよ、荒らさなけりゃな。見られて困るものもないしな」


「同じく。ただまた魔術師たちがにらみ合ってるところを突っ切らなきゃいけないけど」


彼らが拠点にしている場所に足を運ぶということはつまり先ほどまで康太たちが歩いていた魔術師だらけの場所へ向かうということになる。


またあの場所に向かわなければいけないのかと文はいやそうな表情をし、康太は心の中でいつ戦闘が起きてもいいように覚悟を決めていた。


「そのあたりは問題ありません。ビー、露払いは任せたわよ?」


「了解。とりあえず威嚇程度はしておくよ」


戦闘は康太の領分と言わんばかりのセリフに康太は少しだけため息をつきながらも文の考えを理解していた。


ここまで徹底して康太に戦闘面でのアピールをするということはそれだけこの魔術師たちに康太の、ブライトビーの存在を印象付けたいからなのだろう。


この辺りにいる魔術師同士でコミュニケーションが取れているかは微妙だが、これをきっかけに康太の実力が大げさに広まってくれれば今後のこの場での対応が非常に楽になる可能性がある。


意味があるかはさておきやっておいて損はないということだ。意味があり今後康太の存在を意識してくれれば御の字。その程度の行為でしかないが、もとより康太は戦闘しか能がないタイプの魔術師だ。


こういう扱いは慣れているし、この扱いに不満もなかった。


「んじゃ移動するときは言ってくれ。それなりに準備するから」


「了解よ。あとお二人とも確認したいことがあります。お二人はどうして今夜戦っていたんですか?」


この状態でいざこざを起こすことそのものがだいぶ特殊な事例なだけに文はここだけは聞いておきたかった。


あれだけの魔術師が見ている前で魔術師戦を行うということはそれだけ自分の手の内を明かす結果にもなってしまう。


何よりあれだけ戦いにくい状態で戦闘を行うだけのメリットがあるようには思えなかったのだ。


文の質問に二人は顔を見合わせてどう答えたものかと困っているようだった。


戦っている内容など軽々しく答えるものではない。他人からすればどうでもいいことかもしれないが本人達からすれば真剣な物事であることもある。


今回の場合がどのような理由か、もしかしたら二人の魔術にもかかわる可能性もあるために非常にデリケートな問題だがこれは聞いておかなければいけないことだと文は確信していた。


「どうする?」


「別に話してもいいと思うぞ。隠すほどのことじゃないしな」


「いいのかい?少なくとも君の事情を少し話すことになるけれど・・・」


「話したところでばれるようなものじゃないからな。それに話したところで何が変わるわけでもないし」


どうやら今回の戦いにはそれなりに事情があったようだ。邪魔しておいてなんだがほんの少しだけ申し訳なくなってしまう。


片方の了承が取れたからか、もう片方の魔術師が説明をするべく口火を切った。


「簡単に言えば縄張り争いなんだけど、実は彼の使う魔術が私の縄張りに干渉してきてね。彼はその魔術を割りと頻繁に使うんで、再三やめるように言っていたんだけどやめなくてね・・・」


「それで最終的に戦って決めるってことになったんだよ。性能的に範囲縮小は避けたいし、何よりそれじゃ意味がなくなる。だから使うことを許可するか否か、話し合いも最初はしてたんだけどな」


基本的に魔術師も人間だ。よほどの戦闘狂でない限り戦いは避けたいと考えるのが自然な流れだろう。


だが譲れないこともある。だからこそ話し合いを超え戦いで白黒はっきりつけることにしたのだ。そこに康太たちが立ち会った、というか邪魔をした結果になる。どのような魔術なのか文は気になったが今はそのことは置いておく必要がある。あまり深くまで聞きすぎれば相手に警戒される可能性があるからである。せっかく文は今まであまり警戒されずにいるのだ、なるべくこの状態を維持したいと考えていた。


「あと最後に一つ、この辺りで最近いざこざはどれくらいありました?それはどのあたりでありました?」


「割と最近多いぜ?人が多くなったっていうのもあるけど、たぶん警戒状態が長くなってるからみんなピリピリしてきてるんだと思う」


「そうだね、ちょっとしたきっかけで戦いに発展するっていうことはあるかもしれない。私たちはまだ理性的に話を進められたけど、感情的に戦いになるっていうこともあるかもね・・・この辺りで言うと・・・ちょっと待ってね」


魔術師は自分の携帯を取り出して地図アプリを起動するといざこざがあったと思われる場所をマークしていく。


文はその地図アプリを見ながらマークを自分の携帯にも残していく。今後の調査で必要な情報であるために非常にありがたかった。


どれほどの規模のいさかいがあり、いつ頃行われたのかまでは覚えていなかったようだが、場所が分かっただけでも収穫だ。


今度調査に行くときはその場所を中心に調べれば何かしらの成果が得られるかもしれない。


「ありがとうございます。すいません、戦いの邪魔をしてしまったのにいろいろと質問してしまって・・・」


「構わないよ。むしろ彼に襲われて五体満足でいられるだけ運がよかった」


「かもな・・・ていうかお前よくあいつをコントロールできてるよな・・・あれってデブリス・クラリスの弟子だろ?」


小声でそんなことを言う魔術師に文は苦笑してしまう。彼らの中では康太の印象はかなり悪いらしい。


戦闘面に関しては康太は確かに数々の功績をあげている。最近では門の管理を行っていた神父を再起不能にしているのだ。


ただでさえ実力を認められている門の管理を任されている神父でさえ廃人同然にさせられたという事実。すでにその神父は何者かによって亡き者にされているが、そのきっかけを作り出したのが康太だ。


協会内での康太の評価が一度正確に知りたいところではあるが、少なくとも良いものばかりではないのは確かである。


「慣れちゃえば大したことはありませんよ。それに一応同学年ですし?」


「そうか?明らかに人の言うこと聞くようなタイプじゃないだろあれ・・・ていうか近づいただけでつぶされそうだわ」


「それは言いすぎな気もするけど・・・さすがにさっきは死を覚悟したからね。完全に不意打ちをもらったとはいえ、殺されても文句言えなかったよ」


「だろ?ありゃ完全に何人かやってる目だぜ?お前付き合う相手は選んだほうがいいぞ?」


「まぁあいつはあいつでいいところありますよ?割と単純な性格ですから。犬とかと一緒ですよ」


「聞こえてるぞ。本人目の前にいるんだからもう少し静かに内緒話してくれ」


わずかに殺気を込めてにらみつけると文以外の二人はその殺気に気圧されているのか、わずかにたじろいでしまう。


今回のことでブライトビーのことを印象付けたいのは康太もよくわかっているがさすがに犬扱いは康太としても許容しかねる。


犬のように付き従うつもりはないし、犬のようにしっぽを振るつもりはない。


さすがにある程度線引きをしておかないと文がこの勢いのまま突っ走ってしまいそうで怖かった。


次の日にブライトビーはライリーベルに飼われているなんて噂を耳にしたらいろんな意味で死にたくなってしまう。それは避けたいところだった。


「おしゃべりはもう十分だろ?拠点を見せてもらうなら早めに動いたほうがいいと思うぞ?」


「そう?そんなに長く話したかしら」


「そもそもその拠点の主がここにいるんだ。放置してある拠点をそのままにしておくほどこの辺りの魔術師はのんきなのか?」


ただでさえ過密な状態のこの地域、少しでも拠点を広く保ちたいと思うのが自然な考えである以上放置されたままの拠点がそのまま残っているということ自体が考えにくかった。


そして二人もその可能性に気付いたのか勢い良くその場で立ち上がる。


「そうだ!まずい!早く戻らないと!」


「っざっけんなよ!勝手に人の拠点とったら承知しないぞ!?」


「・・・はぁ・・・ってなわけでビー、さっそく出発するわ」


「了解。先行するぞ?」


こうして康太たちは即座に移動を開始した。途中何人かの魔術師に発見されたようだが康太たちが複数人で動いているということもあって手を出してくるものはいなかった。


多人数で行動している利点と欠点が良い形で発揮されたと思うべきだろう。













「よかった・・・私のほうは無事のようだ」


「こっちもだ・・・あぁよかった、また根無し草になるところだった・・・」


自分たちの拠点にたどり着いた二人の魔術師は、それぞれの拠点を索敵し中が無事であることを確認するとため息をついていた。


いつ拠点を奪われてもおかしくないという状況はずいぶんと精神に負担をかけるようで、二人の様子から無事だったことへの安堵が伝わってくる


「それだけ警戒する必要があるなら別の場所にでも行けばいいのに。なんでここにい続けるんだよ」


「仕方がないだろう?私はこの辺りに住んでいるんだから・・・今更別の場所に移ろうとは思わないよ」


「ふぅん・・・そっちは?」


「俺か?俺は今の場所が気に入っちゃってるからな。ここを動くつもりはないぞ」


気に入っている。それが本当にこの魔術師の感性によって引き起こされているものであれば康太自身もそこまで気にはしなかったのだろう。


だが話を聞いている限り、何者かによって感性をいじられた可能性が高い。実際に拠点を見てみるまで判断はできないが少なくとも強い違和感があるのは間違いなかった。


「とにかく、拠点の中を見せてもらいましょ。何かあるかもしれないし」


「何かといってもあまり大したものはないよ?それと一応もう一度言っておくけど」


「拠点内部に危害は加えない。それは約束する。何なら外で待機しててもいいぞ?」


「俺的にはむしろそっちのが不安になるわ・・・別に入っていいからついて来いよ」


魔術師の後についてその場所に入ると、そこはアパートの一室のようだった。ただの一室ではなく妙に雑というか、がたが来ているような印象を受ける。


昭和や大正時代のアパートとはこんな感じだろうか、いかにも昔の漫画に出てくるような風呂トイレ共同の畳のワンルーム。


現代にこのような物件があったことに驚く康太だが、本人はこれが気に入っているようだった。


「な?いいだろ?手狭だけどこの雰囲気がまたいいんだよ」


「・・・ これは確かにすごいな・・・未だにこんな部屋があるなんて」


戦っていた本人もこんな部屋がまだ実在していたという事実に驚いているようだった。その驚きは康太たちも同じだ。


だが同時に康太と文は内心舌打ちしていた。


「どう見る?」


「正直わからないわね・・・こういうのが好きな人って結構いるし、判断材料の一つではあるけど決定打ではない感じかしら」


「確かに・・・廃墟マニアとかもいるくらいだしな・・・レトロマニアくらいいても不思議はないか・・・そうなると・・・どうしたもんかね・・・」


これでこの部屋がただの何の変哲もないワンルームなどであればまだ疑いようがあったのだが、良くも悪くもこの部屋は特徴的すぎた。


こういったものが好きな人間がいる可能性が高いうえに、この魔術師がそういったものを好んでいる可能性もあるため、彼が何者かによって感性をいじられたと断言できない状況になってしまったのである。


「お気に召したか?召さなかったらちょっと不機嫌になるぞ」


「いいものを見せてもらえました。写真に撮りたいくらいですけど・・・」


「それはさすがにやめてくれ。記憶に収めるだけにとどめてくれるとありがたい」


文の外面の良さのおかげで何の問題もなく拠点を見ることができた。これは幸先がいい。だが同時にもう少し決定的なものがほしかったとも思えてしまう。


先ほどまで確定だと思っていた考えが少しだけ不安定なものになりつつある。こればかりはどうしようもないとはいえ、二人はなんとも言えない複雑な気分になっていた。


「ちなみにあんたはこの部屋のどこを気に入ったんだ?」


「どこをって、むしろこの部屋を気に入らないところが見当たらねえよ。ありとあらゆる意味でエッジがきいてるこの見た目、雰囲気あるだろ?こういう雰囲気たまんないだろ?」


「あぁ、まぁ確かに特徴的ではあるよな」


建物として、人が住む場所として最適かと聞かれれば首を横に振るがここを魔術師の拠点とするならばという観点で見れば確かにこの場所は雰囲気があっていいのかもしれない。


だが県を越えて、それどころか地方さえも越えてこの場所を拠点にするだけの魅力があるかと聞かれると微妙なところだった。


だがこの辺りは感性の問題だ。趣味に何百万も使うものがいるように、人の好みというのは場合によってはその人を暴走させる可能性を秘めている。


そういう意味では感性をいじられていてもそれに気づけない可能性があるだけこの事象は非常に厄介だった。


これが他人によって引き起こされた人為的なものなのか、それとも彼が自分で本気でそう思っている自然的なものなのか。


少なくとも一人の検証結果では答えは出せない。半年から今に至るまでの間にこの辺りに来た魔術師たちに話を聞いて、みな一様にこのような反応をしたら確定的に康太たちの仮定が正しいということになるが、まだ答えを出すにはデータ不足である。


「続けていくしかなさそうだな・・・最低でも十人くらいはデータがほしい」


「そうね・・・最短で十日・・・もう少し短縮できるかしら・・・どっちにしろ今日はもうこれ以上の成果は望めなさそうね・・・」


拠点を見せてもらえたのは幸いだった。調査開始の二日目にしては上出来すぎる成果といえるだろう。


明日以降もこのような形で調査していく必要がある。問題は今回のような接触ができるかどうかということだ。


「それじゃあ次は私の拠点だね。ここみたいに特徴はないけれど」


康太と文と倉敷はもう一人の魔術師の拠点も見せてもらい、本人の言うように何の特徴もない魔術師の拠点を見たところで引き上げることにした。


報告事項が山ほどあるだけに文はこの時点で支部長に報告する内容をまとめ始めていた。











「以上が二日目の報告になります。現段階では拠点を譲ると持ち掛けてきた魔術師が怪しいかと・・・」


「・・・んー・・・なんだか妙な話になってきたね・・・半年前位から今にかけてか・・・それに拠点を奪うっていうのも・・・」


文の話を聞いて支部長は頭を抱えてしまっている。


その場にいる康太と倉敷もその話を聞いていた。一応今回の報告は三人で行ったほうがいいと考えたのである。


初日のアリスの土地調査と違い今回の調査は三人で協力し、なおかつ三人で考えた結果この結論に至ったのだ。


報告するにも本人の考えを残しておくべきだと思ったのである。


「私としては君たちの意見がききたいな・・・単刀直入に聞くけど、今回の件、単独犯だと思うかい?」


単独犯か否か。支部長が気にしているのはそこだった。


今回の事件、というか状況は約半年ほど前から徐々に魔術師が集められているという内容だ。


これがもし単独犯だったのならそれはそれで問題だが、これが組織的な犯行だったらさらにいろいろ問題である。


特殊な状況に慣れた康太、その補助をしている文、そして先入観などのない倉敷。この三人に意見を求めるのは適切な判断だといえるだろう。


「正直に言えば、俺としては組織的な犯行であると考えたいですね。話がトントン拍子で進んでるのもそうですけど、あの人の拠点を奪えるっていうのはかなり高い戦闘能力を持っていると考えるのが自然です」


「へぇ・・・君がそこまで評価するのかい?」


康太は実際に戦闘していた二人の間に入って捕縛した人間だ。あの二人の実力は大まかにではあるが把握している。


片方ではあるがあの魔術師から拠点を奪うということがどれだけ難しいか康太は理解していた。


「えぇ、少なくとも高い集中を維持できている状態だと、俺も近づくのは苦労しそうなくらいです」


康太が近づくのに苦労する。それがどのような意味を持っているのか文はよく知っていた。


康太は接近戦を得意とする魔術師だ。そのため魔術を回避しながら無傷の状態で魔術師に接近する術に長けている。


それはアリスの一件で見せつけたとおりだ。その康太が近づくのに苦労するとまでいうのだ、あの魔術師の実力はそれなり以上だということだろう。


あの魔術師が実力を発揮できなかったのであればまだ康太も考える余地があるだろうが、拠点を奪われたということは戦ったということだ。これは本人からも直接確認が取れている。


戦った相手そのものは一人しかいなかったようだが、それだけの戦闘能力を持っている人間がただ人を誘導するなどということをするとは思えなかった。


何人かの魔術師が結託して役割分担をしている可能性があるというのが康太の考えだった。


「ふむふむ・・・ライリーベル、君の意見は?」


「私としては単独犯の可能性を上げたいですね。先ほども報告に入れましたが相手は感性をいじる魔術を持っている可能性があります。特殊な魔術ですがそれを使えば全く関係のない魔術師同士を戦わせることもできるのではないかと」


相手が感性をいじることができるのであれば、確かに好き嫌いを変化させて戦いを勃発させることも十分可能だろう。


康太が複数犯文が単独犯。二人の意見は真っ向から分かれた結果となる。


「なるほど・・・魔術師が魔術師を戦わせて拠点を奪わせた・・・と・・・」


「はい。わざわざ自分で苦労するよりも楽ですし、何より観戦していればタイミングの良さはどうとでもできます」


「それなら複数犯でもそれはあり得ることにならないか?感性いじくって味方作って攻略するとかさ」


「その場合、仲間を作るっていうより適当な魔術師を利用するってことになるでしょ?そうなると主犯はあくまで一人ってことになるじゃない」


康太の言うように感性を変化させる魔術を使用して仲間を作った場合、その仲間は自由意志で仲間になったとはいいがたい。


無論効きやすさには個人差があるためにどれだけ効果があるかはわからないが、ひとつの拠点を攻め落とすくらいの時間は十分に聞くだけの効果を持っていると考えたほうがいいだろう。


康太の一人ではできることが限られているために組織で動くという考えと、文のできることが限られているならばできることをして利用できるものを利用するという考え。


どちらもあり得るだけに支部長は参ってしまっていた。実際どちらの可能性も十分あり出るのだ。


だが二人の意見で共通しているのはこれを起こしているのが一人ではないということである。


自発的行動か感性の操作によってそうさせられているのかはさておき、どちらも複数の人間がこの件に裏でかかわっていると考えたのである。


高い戦闘能力と高い情報操作能力を両立させる難しさは二人もよく知っている。


接近戦の戦いに特化した康太と、情報操作と遠距離射撃に特化した文。この二人だからこそ一人の魔術師が抱え込めるキャパシティのようなものを強く感じるのだ。


一人の人間ができることには限界がある。そのため手段はともかく複数の人間が裏にいることは二人の共通している意見といえるだろう。



「ふむ・・・トゥトゥエル、君はどうかな?」


支部長が倉敷の名前を憶えていたことに康太は素直に驚いたが、名指しされた倉敷は康太以上に驚いているようだった。


康太たちとかかわりがあるとはいえ、日本支部の支部長がただの精霊術師の名前を憶えていることそのものに驚いたのだ。


支部長は基本的に気を遣う性格をしているために知っていても不思議はないという気もしたが、名乗ったことがなかったはずの倉敷は名前を知られているということに大いに驚いていた。


「えっと・・・俺も複数犯っていう風に思います。主犯格が一人だとかそういうのはよくわかりませんけど、少なくともこれだけの規模で事が起きてるなら一人の仕業ってことはないと思います」


康太と文はあくまで主犯が何人かという考えで話を進めていた。だが倉敷はそういった主犯が何人かということが重要ではなく、何人の魔術師が動いているのかというところに焦点を当てていた。


何人動いたかによって協会としても対応の方法を変えるはずだ。そういう意味では複数犯であることを最初から想定しているのは間違いではない。


だが複数犯がいたとしても主犯を見つけられなければ意味がないのもまた事実だ。


現状確認できているのは拠点を奪った者たち、そして拠点を譲ると持ち掛けたものの二つのグループ。

この二つが背後でつながっているか、あるいはただ利用しただけなのかはまだ判別できない。


主犯が一人の可能性も、そして複数人の可能性も十分あるためにどちらとも言えない状態になっているのである。


「複数人であると考えるのはいいけどさ、その中で主犯が一人しかいない場合と複数人いる場合じゃ対応が随分変わるわよ?主犯一人取り逃がしたら終わりの状況だとある程度隠密行動しなきゃいけないし」


「そりゃまぁそうだけどさ。ぶっちゃけ今の段階でそこまで考えても仕方ないんじゃないかって感じがするんだよ。ざっとした情報しか知らないけど、少なくとも今ある情報だけじゃこれくらいしか考えつかないって」


倉敷の言うように今ある情報だけでは考えられる状況が少なすぎるというのも確かだ。あまり可能性だけを論じすぎても動きにくくなるだけだ。


現状の情報収集は順調に進んでるといっていい。この状態を維持して少しずつ可能性を絞っていけばいい。それから本格的な方針を決めても遅くはないだろう。


「確かにこいつの言う通りかもな・・・考えすぎるなってよく言われてるし・・・今のところは支部長への報告ってことだけで終えとくか?」


「僕としてはそれでもかまわないよ?二日目にしてこれだけの情報を集めてきてくれたんだし。これからはその情報の精査にかかるって感じかな?」


「そうですね。いざこざを起こした魔術師たちのある程度の行動範囲もわかりましたしそのあたりにアプローチをかけてみるつもりです。もしそれで今回と似たような状況が続いたら」


「手段としては確定的、ついでに言えば何かしらの目的をもって行動していることも確定的・・・か・・・あんまりうれしくない結果だけど、まぁわかるだけましか」


今までは全く調べられなかったためにこうして情報が上がってくるだけでも十分ありがたかった。


だが今回のような状況が多いのであれば支部長まで情報が上がっていてもおかしくないように思えるのだ。


無論支部長が慎重に動いているため支部専属の魔術師たちが動くことができないということもあるが、拠点を奪ったり奪われたりという話くらいは通じていてもおかしくないように思えるのだ。


「支部長は今後別の場所で起きている拠点の奪取などのいさかいと、拠点を奪われたとかいう魔術師がいたら警戒をお願いします。引き続き拠点を移したいという魔術師にも目を向けていただければと思います」


「わかった。といってもそう易々と出てくるとは思えないけどね。このペースだと君たちが何か情報をつかんでくるほうが早くなりそうだ」


「それが理想ではありますけどね・・・今回は運がよかったです。明日以降はもう少し強引な手段に出るかもしれません」


「おいおい、今日の明日でもう強引な手段に出るのか?一日くらい様子見ないと妙な噂が立つぞ?」


「別に急ぐわけじゃないけど、なるべく早い段階で情報を集めておきたいのよ。あんたとしても戦いは一日一度くらいがいいでしょ?」


「そりゃそうだけどさ・・・」


康太の素質的にも、そして持っていける装備が限定されていることを考えても、この状態で戦闘できる数は多く見積もっても二度が限界だ。


しかもその戦闘のうちの一回は相手の不意を突いた状態での一方的な攻撃も含まれる。


連戦ということが苦手な康太としては一日にそう何度も戦うことは可能な限り控えたいところだった。


そう考えると一日必ず一回は戦って相手を戦闘不能にしてから話を聞くというのが一番スマートなような気がしなくもない。


「ていうか戦うこと前提だけどさ、お前ら話し合いとかする気ないのか?戦わないで普通に話し合えばいいじゃんか」


「それができれば苦労はしないわよ。ただでさえピリピリしてる魔術師たち相手に話し合いができるならそうしたいわよ。まぁあの場所でも普通に話の通じる魔術師はいるかもしれないけどさ・・・」


今日話した魔術師はまだ理知的なほうだったが、それでも康太が急襲した直後は攻撃的な態度をとっていた。


あれだけ冷静な判断ができる魔術師ですらあの状態なのだ。あの区域の魔術師はかなり殺気立っているとみていいだろう。


「戦うのは構わないけれどあまりやりすぎないようにね。少なくともあの場所にいるのは被害者に近い立ち位置の魔術師の可能性が高いし」


「もちろんその可能性もありますけど、私としてはあの中に主犯がいるんじゃないかと思ってるんですよね・・・」


「ほう?それはどうして?」


「これだけのことをしたのなら集めるだけってことはないと思うんです。たぶん経過観察って形であの場所のどこかに拠点を持っているんじゃないかと思って・・・毎日その場所にいるかはさておいて」


なるほどと支部長をはじめとしてその場にいる男性陣は感心してしまっていた。


集めることが目的だとしても、集めただけでは何やら苦労に対して成果が見合っていないような気がしなくもない。


魔術師を集めた後でその様子を観察するという行動を起こしていたとしても何ら不思議はない。


「でもさ、そう考えてるならなおさら荒事を起こすのは問題じゃないか?いろいろと観察してるんだろ?」


「だからこそよ。観察するってことは余計な邪魔が入らない状態での経過を見たいはず。私たちみたいに意図的にあの場所に干渉しようとする魔術師はむしろ邪魔なんじゃないかしら」


「あれを実験だと解釈してるってことか・・・?まぁ確かにそれなら俺らみたいなのは邪魔かもしれないな」


魔術師たちを集めるというあの状況をただの実験として考えていた場合、被験体はあの場に集められた魔術師たち。


特定の条件を満たす魔術師たちが集められ、密集した場所に長時間いた場合どのような行動を起こすか。


そういった実験を行っているのであれば意図的に、条件に満たない魔術師が勝手に行動するのは邪魔以外のなにものでもないだろう。


「でしょ?だから撒き餌的な意味も含めて荒事を起こすのもありかなって思うのよ。特に幸か不幸か、あんたはあのデブリス・クラリスの弟子だからね」


「なるほど、良くも悪くも予兆なく勝手な行動をしても不審がられないってことか」


今日試してみてわかったのだが、デブリス・クラリスの弟子というネームバリューは恐ろしいものがある。


康太がどれだけの功績を重ねても、康太がどれだけ紳士的に対応しても、少し暴力的な行動をして『デブリス・クラリスの弟子だからな』という一文を添えるだけでなぜか納得されてしまうのだ。


自分の師匠ながらなんて厄介な存在なのだと康太は眉をひそめていた。これから一生彼女の弟子として生きなければいけないと思うとため息しか出てこない。


真理はいったいどれだけ苦労して今の地位を確立したのだろうかと、自分の兄弟子のすごさを再認識しながら逆にこの状況を利用してやろうと考えていた。


「てことはあれか?ブライトビーだけ別行動する感じか?」


「それはどうかしら・・・でも戦闘の理由としてはビーの勝手な行動っていうのを使おうとは思ってるわ。そのほうが相手も素直に納得できるだろうし」


「その分俺の評価がどんどんと地に落ちていくわけだがな・・・これは晩飯おごってもらうくらいじゃ割に合わないぞ」


「評価と引き換えの成果だからなぁ・・・俺だったらごめんだね」


「そういわないでよ、私だってやりたくてやってるわけじゃないんだから。ご飯くらいいくらでもご馳走してあげるから」


自らの魔術師としての評価、そして性質を犠牲にすることで得られる成果。味方を作り敵を作りたくない康太としては真逆の行動といえるだろう。


小百合の弟子だからというある意味伝家の宝刀的な理由をもとに行動するとはいえ、結局行動しているのは康太自身なのだ。


あの場にいる魔術師たちだけとはいえ普段以上に攻撃的な性格を見せることになる。


正直あまりやりたくはないが情報が少なすぎるこの状況を打開するには多少身を切ることも必要だと康太自身理解していた。


「まぁあれだよ、一応僕のほうからも多少のフォローはできると思うから。噂が独り歩きしない程度にだけど」


「ありがたいです。でも今回俺はベルの補助って形なんで・・・あんまり急激に評価が上がったりするとまた別の意味で噂が出てしまうかもですね・・・」


「そのあたりは難しいところだね・・・けど可能な限り力にはなるよ。こちらが頼んだことで君が苦労することはない」


「ありがとうございます。そういっていただけるとありがたいです」


支部長は割と康太のことを気にかけている。康太が魔術師になったとき、そして小百合の弟子になる決定的な理由を作ったのがこの支部長だ。


半年以上たった今でも彼はそのことを気に病んでいるのだ。


あの時自分が余計なことを言わなければ康太は小百合の弟子にならずに済んだのではないかと。


小百合の弟子になるということがどれだけの重荷になるか、支部長はとてもよく理解している。


小百合が暴れればそのたびに弟子である彼らに影響があり、弟子である彼らが少しでも暴れれば小百合を引き合いに出される。


魔術師として正当に評価されるには多大な苦労を必要とする。


それをなしている真理も恐ろしい才能を持っているが、康太はそこまで器用ではない。だからこそ支部長はなおさら気にかけてしまうのだ。この支部長の気遣いが康太には本当にうれしく感じられた。それは断じて嘘ではない。













翌日、康太たちは大分県の三日目の調査を始めていた。


先日教わった以前いざこざが発生した地点を見に行くと、確かにそのあたりには魔術師がいた。


というかどこもかしこも魔術師がいるためにこの中の誰がいざこざを起こした張本人かは直接調べてみない限りは難しいだろう。


「さてと・・・どうする?これだけの人数がいる中でいきなりアクションを起こすのは避けたいぞ?」


「さすがのビーでもこれはさばききれないかもしれないわね・・・そもそも装備がない状態だし・・・」


「あんまり長居するのもよくないんだろ?ちゃっちゃと済ませちゃおうぜ」


未だ文の索敵妨害の魔術は完璧とはいいがたい。あまり一つの場所にとどまり続けると何かしらの違和感を相手に与えてしまうかもわからない。


うまく場所を移動しながら適当な場所でアクションを起こす必要があるのだろうが、問題なのはそれぞれの魔術師がある程度警戒を強めていることだ。


あらかじめ話を聞いていた通り、以前いざこざがあってからこの辺りにいる魔術師は多少警戒を強めているらしい。


はたから見ている康太たちでさえこの辺りの空気がさすような鋭さを持っているのがわかる。


「また俺が勝手に動いたってことにしてもいいけどさ・・・さすがに何の脈絡もなく襲い掛かるのはやめたいんだけど・・・そのあたりわかってくれてる?」


「わかってるわよ。そんなことしたら通り魔じゃない。あんたの評価を意図的に下げてまで成果を得たいとは思わないわ」


文としても一緒に行動している康太の評価が著しく低下するというのは避けたいようだった。


特に小百合の弟子だからという理由で康太の評価は下がりやすいのだ。いや悪評を受けやすいというべきだろうか。


どちらにせよあまり思慮に欠けた行動をさせると康太の今後の魔術師人生にも大きくかかわってくるだろう。


可能な限り穏やかに、それでいて適切な形で干渉してほしいのだが、さすがにこの辺りの魔術師が何のアクションもしなければ康太も動きようがない。


「いっそのことこっちからちょっとアクションを起こして周りの連中の動きを誘発するか?そうすればある程度接触はしやすくなるだろ。たいてい喧嘩っ早い奴はいるだろうから誰かしら動くと思うぞ?」


人が集まれば何人かは好戦的な人間がいるものだ。この辺りのいざこざがどのような理由によって生まれたのかはわからないが、最も早く行動を起こすのは状況把握に努めようとする人間か、何かが起きたとき動かずにはいられない思考よりも行動で物事を解決しようとする人間のどちらかだ。


何かアクションを起こした場合、特に活発に動いて見えるのは後者のタイプだ。そういった魔術師が行動を起こせば当然ほかの魔術師も何かしらの対応をせざるを得ない。そこで康太たちが動いて何とか接触しようとすれば状況は良い方向に転がるかもしれない。


「ただ、そういう奴ってたいてい実力に自信がある奴だから、多少苦戦するかもしれないけどな・・・昨日と比べると周囲への警戒も怠らないだろうし・・・」


先日接触した二人の魔術師は一対一の戦いに集中していたために周囲の警戒を完全に怠っていた。


暗黙の了解がある中でそれをあっさり破ってしまった康太たちにも非はあるが、あの場合警戒を怠った彼らにも非がある。


だが今回の場合そう簡単にはいかないだろう。何せ何かしらのアクションを起こすということはその場にいる魔術師たちは何が起こってもいいように身構えることになる。


仮にこの辺りにいる魔術師の誰かが行動し、それが戦闘に発展したとしても周囲への警戒は一切緩めずに戦闘し続ける。


その場合不意打ちを決めるのはほぼ不可能だと思っていい。そうなると康太が実力でその魔術師を組み伏せなければいけないのだ。


ただでさえ装備が万全ではなく、戦闘能力が下がっている状態だというのにそのような戦いがあるのは本当なら避けたいところである。


「そのあたりは何とかしてとしか言いようがないわね。一応私とトゥトゥも可能な限りフォローはするけど・・・妨害やってるとあんまり大した魔術は使えないわよ?」


「ぶっちゃけ俺の場合相手への嫌がらせしかできないからそのあたりよろしく」


「そこなんだよなぁ・・・まぁお前らの嫌がらせって結構えげつないからそのほうがいいのかもしれないけどさ」


文の扱う電撃は一瞬とはいえ相手の肉体的な動きを封じることができる。その気になればそのまま相手の体の自由を奪うことだってできるだろう。


倉敷の扱う水の術は相手の体の自由を奪うと同時に広範囲に展開できるために相手の行動を制限することもできる。


周囲に展開する水に加え、ピンポイントで打ち込まれる電撃。この二つを同時に受けることになる魔術師は気の毒としか言いようがない。


そしてさらにそこに康太まで戦うのだ。これ以上ない三人の嫌がらせ攻撃が始まることは目に見えている。


「ファーストアクションは誰がやる?」


「俺だとすぐに犯人ってばれちゃうから・・・最初はトゥトゥ頼めるか?不自然に霧を作って周りの人間を煽ってくれ」


「オーライ。ばれること前提だな。んじゃ派手にいくか」


最初からばれても問題ないのであれば不自然なほど急に発生した霧を作り出すことも十分可能だ。


倉敷は意気込んでから周囲に霧を展開し始めた。


夜の街が霧に覆われていく中、最初に動いた魔術師は自身の周囲に炎を発生させ霧を蒸発させ周囲の視界を確保させようとしていた。


そしてそれに触発されてか、ほかの魔術師たちもこの霧に対して各々対応しようと魔術を発動していく。


火を発生させるもの、風を起こすもの、同じく水の魔術で霧を巻き込んでいくもの、使える魔術や得意な魔術によってその対応はそれぞれ全く違うが、処理されているはずの霧は一向に消える気配はない。


いつまでたっても消えてなくならない、それどころかどんどんと濃度が増していく霧に、その場にいる魔術師たちはこれが魔術によって発生させられているものであると理解しつつあった。


なにものかがこの霧を発生させている。いったい何の目的があってこんなことをしているのかは判断できなかったが、その目的が何であれここまで積極的に干渉してきているのだから何かがあるとその場の魔術師全員が警戒を強めていた。


改めて索敵を張るもの、周囲を警戒するもの、どこから攻撃が来てもいいように身を守るもの、近くにいる魔術師を警戒するもの、その対応は魔術師によって異なるが、中でも一人周囲に炎をまき散らし続けている魔術師はとにかく霧を消し飛ばそうと空中に炎を飛散させていく。


あれだけ派手に炎をまき散らせば一般人に見られてもおかしくはない。この状況を作り出しておいてなんだが明らかに魔術師として不適切な行動をとっているように思えた。


「随分とあいつ攻撃的だな・・・干渉するか?」


「やめておきましょう、まだ待ったほうがいいわ。あの状態を放置しておいていいとは言わないけど・・・たぶんそろそろ動くはずよ」


そろそろ動く。文のその発言の数秒後に近くにいた魔術師の一人が炎をまき散らしている魔術師に対して攻撃を仕掛けた。


その攻撃は水の魔術によって作り出された水の弾丸だ。威力自体はそこまでなく、ただ強めに水をかけられた一種の打撃に近い攻撃である。


周囲に炎をまき散らしていた魔術師は突発的なその攻撃に反応することができずに全身水びだしにされる。そして炎で周囲を照らしながら水の飛んできた方向にいる魔術師に目を向けて殺気を放っていた。


ダメージはほとんどないに等しい。むしろダメージがないことが彼の怒りに火をつけたといっていいだろう。


周囲の炎に対して的確に命中していく水の弾丸。どうやら水を扱っている魔術師はこれ以上炎が強くなると一般人に見つかる可能性があると感じ、炎を使う魔術師に対して自粛するように、頭を冷やすように促しているのだろう。


もっとも、それが完璧に逆効果であることは言うまでもない。いきなり水をかけられれば誰だって苛立つ。少なくとも唐突に全身ずぶぬれになるレベルの水をぶつけられれば腹が立つのは無理のない話である。


炎を扱う魔術師は自身の周囲に炎の弾丸を発生させると、水を放った魔術師めがけて打ち込んでいく。


水と炎、相性は互いに良く、互いに悪い。相互関係が成り立つ水と炎では単純に出力の高さとその扱いのうまさが勝敗を分けることになる。


「やっぱりね、さっそく勃発したわ・・・周りの魔術師の反応を見る限り、たぶんあの二人が比較的短気みたいね」


周囲にいる魔術師は二人が戦闘を始めたのをきっかけに一般人に見つけられないような工作活動に従事し始める。


その連携とも取れるような対処の早さは少なくともこの戦闘が一回二回程度のものではないことを物語っていた。


「これだけ集まってる状態でも関係なく戦闘開始か・・・短気っていうよりあの二人の相性が特に悪いってだけのように思えるけどな・・・」


「それもあるんでしょうね。似たようなことが何度かあったんじゃないの?少なくとも二人とも戦いなれてるって感じしてるわよ?」


「水と炎か、個人的には水を応援したいな。というわけでブライトビー、炎のやつをやっつけろ」


「確かに対応としては炎のやつをやっつけたほうが適切かもな・・・水のやつのほうはまだ状況を把握できてるっぽいし」


戦闘を始めるきっかけになったのは水の弾丸による先制攻撃だが、これはあくまで一般人にばれないようにするために必要な措置だ。


炎が強くなりすぎればそれだけ光も強くなる。その光を抑えるために仕方なく水を放った。本人にもわかるように水の弾丸を直撃させることで頭を冷やす効果も与えた。


完全に逆効果だったとはいえ水を扱う魔術師はまだ魔術師としての模範的な行動がとれているように感じたのだ。


それならば炎を扱う魔術師を拘束して話ができる状況にしたほうが良いのではないかと思える。


倉敷の水属性へのひいきはさておき、間違った判断ではないために康太はどうしたものかと悩んでいた。


「ベル、周りの連中への妨害はどんな感じだ?」


「今まで通りやってるわ。でもさっきも言ったけどこの状態でまともなフォローは期待しないで。弱い電撃が撃てるかかどうかってところよ」


まだ妨害の魔術に慣れていないためにほかの魔術を同時に使用することは文としても難易度が高いのだろう。


それでも使い慣れた電撃の魔術であれば問題なく扱えるあたりさすが文というべきだろうか。


「よし、それじゃちょっとちょっかいかけますか」


康太はいつでも介入できるように準備を始めると二人の魔術師の片方、炎をまき散らす魔術師に狙いを定めていた。


この状況でまず止めるべきはあからさまに目立っているあの魔術師。あれさえ止めてしまえば場を鎮静化することができるだろう。


良くも悪くも周りが直接抑えるのではなく、静観、ないし隠匿に努めてくれている状況であれば邪魔も入りにくい。


そしてあの二人の魔術師もそれに気づいている。周りからの邪魔はない。邪魔なのは目の前にいる魔術師と消えないこの霧だけ。


急襲するには絶好の機会。千載一遇のチャンスといえなくもないこの機会に康太は眉をひそめながら状況を正確に把握しようと努めていた。


「突っ込むなら合図して。そのタイミングで攻撃するから」


「同じく。水の魔術に合わせて攻撃すれば相手も嫌がるだろ」


二人が援護をする態勢はできている。文に関してはあまり性能の高い魔術は扱えないが単純な射撃魔術なら十分扱えるだろう。


だが康太はこの状況で突っ込むつもりは最初からなかった。


「まぁ待てって。せっかくいい感じに白熱してるんだ。ここは少しからめ手で行こうぜ」


ここで康太が突っ込まなかったのはあの二人の魔術師の間に奇妙な感覚を覚えたからである。


先ほど文も言及していたが、周りの反応からこの二人が戦うことに慣れているように感じたのだ。


つまりこの二人は犬猿の仲、何かと理由があれば攻撃して戦闘をするような魔術師である可能性が高い。


そういう二人の間に無理に干渉するとどうなるか、最悪二人を同時に相手にする可能性がある。


直接倒すのではなく、なるべく水の魔術を扱うあの魔術師に勝ってほしい。そのための妨害をするのが今のところのベストであるように感じたのだ。


特にあの炎を扱う魔術師、かなり厄介だ。


ウィルを身にまとって突っ込めば倒せなくはないと思うが、炎の扱いに関してはかなり高いレベルを持っているように思える。


先ほどからかなりの量の水を一瞬で蒸発させるだけの熱量を出し続けている。水の量自体が弾丸の形をしているせいもあって少なくというのもあるだろうがあれだけの熱量に突っ込んで康太が無事でいられる保証もない。


一対一の状態ならば突っ込んだかもしれないが、周りに魔術師も大勢いて、何より水を扱う魔術師も同時に敵になる可能性があるとなると下手に突っ込むのは逆効果のように思えたのだ。


「じゃあどうするのよ。あの二人が決着つくのを待つわけ?」


「いや、そこまで悠長に待っていられないな。ちょっかいはかける。ただばれにくい形ではあるけどな」


そういって康太が発動したのは収束の魔術だった。互いに射撃系の魔術を扱っている状況で発動された収束の魔術、一定の法則をもって進む射撃系魔術は康太の収束の魔術によってその狙いは大幅に変更されてしまっていた。


二人は同時にその変化に気付いただろう。今まで水と炎が直接ぶつかっていた状況がいきなり変化したのだ。


それが互いに何か仕掛けたのではないかと疑いを持っている。


康太がしたのは硬直しているこの状況への変化をもたらすことだ。互いに何かしらを仕掛けたと考えているのであれば次の一手を互いに模索するはずだ。


そうなれば戦闘の質が変わる。いつもと違うという状況から互いに真剣な攻撃と防御を繰り出すはずだと康太は考えたのだ。


「無属性魔術はばれにくいのが特徴だからな。こういう時はわりとすごく役に立つぞ、地味だけど」


「そうね、状況を第三者が動かすには十分って感じかしら・・・相変わらず地味だけど」


無属性はほかの属性魔術と違って地味なものが多い。だが地味というのはつまりばれにくいという特徴でもあるのだ。


隠密性に優れているというのはそれだけで優位に立てるだけの利点の一つである。こういう形で相手にばれない形で状況を動かすには最適の属性といえる。


そして康太がにらんだ通り、二人の戦いの質は大きく変わった。


先ほどまで互いに弾丸に近い魔術を連発していたのに対して、今度は流動体に近い形の魔術を操っている。


より高威力の魔術になったことで、戦いのレベルが一つ上がったと考えるべきだろう。


より戦いに集中し始め互いの攻撃に対する警戒のレベルが上がっていく。


周囲への被害こそ出していないものの、あのまま続けていればどうなるかわかるものではない。


「・・・あれだけの戦闘を毎回やってれば、そりゃ周りの魔術師は必死になって隠すわよね・・・地味に迷惑な二人だわ・・・」


「まったくだな・・・おいブライトビー、止めなくていいのか?」


「もうちょっと待とうと思ってたけど・・・これはさすがに止めないとまずいよな・・・ちょっと行ってくるかな・・・」


攻撃力が高い魔術を互いに扱っているために一つ間違えば一般家屋などに被害が出る可能性はある。


そろそろ止めないと危険だと判断し、康太はあの二人の戦いに介入するべく集中し始め戦闘の準備を整えた。


誤字報告を50件分受けたので11回分投稿


誤字がえぐくて泣けてくる・・・


これからもお楽しみいただければ幸いです

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