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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十五話「夢にまで見るその背中」

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手探りの調査

倉敷の協力を得ることができた康太たちはその日の夜にさっそく行動を開始していた。


夜のうちにしか魔術師が活動しないわけではないが、夜が魔術師が活発に行動を始める時間であるのは間違いない。


康太と文、そして倉敷はそれぞれ仮面をかぶり、魔術師である二人は魔術師装束を、精霊術師である倉敷は最低限自分の素性を隠せるような目立たない服装をしていた。


「ここか・・・別段何もないような普通の町だな・・・暗いから雰囲気わかんないけど」


「あぁそっか・・・あんたは索敵使えないもんね・・・ひどいわよここ。方陣術が大量にあるから・・・気をつけなさい」


「え?トラップ的な感じか?」


「互いに牽制しあってるって感じだな。ベル、妨害のほうはできてるか?」


「一応やってるけど、あんまり期待しないで。正直まだ練習不足なのよ」


アリスに索敵妨害の魔術を教えてもらった文だが、昼の間も康太に手伝ってもらって練習をしていたのだが圧倒的に練習時間が足りなかった。


一応大雑把な索敵であればごまかすくらいはできるようになっているようだがほんのわずかな違和感がぬぐえない。


特定の場所に意識を向けさせられているような独特の感覚に加え、文がいる場所に霞がかかったような見えにくさを感じるのだ。


そのため普通に索敵しているとそれが自分のせいなのかそれとも文の魔術が影響しているのか判断できないことがある。


康太の索敵もそこまで性能が良いとは言えないためにこの状態で本当に索敵を妨害し身を隠すことができているのかは正直怪しいところなのだ。


「まぁ場合によっては俺が霧出して目くらましするって。あとはあの黒いのだしてくれれば隠れるくらいはできるだろ」


「あれは可能な限りだしたくないんだよな・・・やたらと警戒されるし。それなら霧のほうがまだましだって。頼むぜトゥトゥ」


康太の出すDの慟哭は良くも悪くも目立ってしまう。何せただの霧とは違い明らかに魔術的な何かがあるのだと理解できてしまうからだ。


それに比べて霧は自然現象の可能性があるために出てきても多少違和感はあってもいきなり警戒するということは少ない。


雨を降らせた後に霧が出たように演出すればさらに自然に視界を制限することができるだろう。


Dの慟哭よりも視界遮断の効果は薄いが、それでも十分に身を隠す効果は発揮してくれるはずだ。


索敵にかからないだけではなく肉眼にも確認されないのが好ましいのだ。そのあたりを考えるとどうしても視界を制限することが必要になってくる。


康太が周囲の索敵をしてみると徐々に魔術師の姿が見え始めている。良くも悪くもすでに魔術師が活動する時間になっているということでもある。


「で?あとは魔術師たちが動き出すのを待つってことか?暇でしょうがないぞそれだと」


「だからってこっちから仕掛けるわけにもいかないだろうが。本当なら前にいざこざおこした奴らに接触したいんだけど・・・これだけ数がいると特定できないんだよ」


「協会に行ったときに捕まえればいいじゃねえか」


「最近そいつら協会に足運んでないんだよ。まぁこんだけ人がいれば協会に行ってる暇がないっていうのもうなずけるけどな」


倉敷の言うように協会に足を運んでいるのであればその場で話を聞いたりできるのだが、おそらく拠点に大量の魔術師が接近しているせいもあって最近協会に全くと言っていいほどに足を運んでいないのだ。


そのせいで現地で確認するしかないのだがこれだけ魔術師がいるとその魔術師が問題を起こした魔術師なのか特定するのも一苦労なのである。


移動しながらそれらしい魔術師を探しているのだが、一向に見つかる気配はなかった。


それも無理もない話かもしれない。動かない土地などと違って人は動くのだ。常に魔術師同士が牽制のために動いているこの場所で特定の人物を見つけるというのは森の中で特定の木を探せと言われているようなものである。


「で?こいつは妨害に集中してほとんど役立たずになっちゃってるわけだろ?俺らが頑張るしかないじゃん」


「お前な、ベルがこうやってくれてるから今俺らのうのうと歩いていられるんだぞ?これでベルが妨害やめてみろ、一斉に魔術師の視線がこっちに向くんだぞ」


今周囲にいる魔術師たちは『見えている』近くの魔術師に警戒を向けることに集中しているため見えにくい康太たちには気づいていない。


周りに魔術師がたくさんいてくれたのが功を奏したといえるだろう。文の未熟な索敵妨害でもだませる程度に周囲の魔術師は見える距離にいる魔術師にご執心というわけである。


だがもしこの妨害をやめれば突如現れた魔術師と精霊術師である康太たちに視線と意識が集まるのは必定だ。


文が集中して妨害してくれているから何とかなっているが、これがもし妨害が解けたらどうなるか、康太は想像もしたくなかった。


「にしてもそんなにたくさん魔術師いるのか?ぱっと見何もないように見えるけどな・・・」


「あー・・・お前が索敵できないのが悔しいよ。索敵できたら見せてやりたいくらいだ。この周りすごいぞ?明らかに警戒してる感じの魔術師が周囲に常に気を配ってるんだ」


「なんか険悪な雰囲気なんだな。ていうかなんでこんな場所に集まってるんだよ。大分県だっけ?どうせならもっと別の場所に集まればよかったのにさ」


倉敷の言葉に康太は全面的に同意しているが、実際なぜ集まっているのかを調べるのが今回の康太たちの依頼内容なのだ。


手がかりが少なすぎるために手探り状態での調査になってしまうのは仕方のないこととはいえこのまま調査してこの原因を突き止められる気がしないのも事実である。


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