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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十五話「夢にまで見るその背中」

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水と相性

特化型の魔術。そういわれて康太はいくつか心当たりがあった。


康太が扱う再現などの魔術も一種の特化型の魔術だ。もとより再現の魔術は念動力の系統に属した魔術である。


何でも操ることができたり浮かせたりできる念動力と違って康太の再現の魔術はできることが限られている。


だがその分通常の念動力で同様の現象を起こすよりは必要な処理が少なく初心者にも扱いやすい魔術となっている。


これもまた一つの特化した魔術の形だ。特定の効果しか持たない代わりに、その特定効果に関しては高い効果、あるいは通常よりも必要な処理が少ないのが特徴である。


おそらく水属性の魔術での先ほどの例はこの条件に当てはまるものらしい。つまり倉敷は水を操ることに特化した魔術師なのだ。


水を操る、そして水分を操る魔術を両方使えることで気体だろうと液体だろうと、もしかしたら凍り付いたものであっても操れるのかもしれない。


「じゃあ倉敷は水なら何でも操れるのか?」


「あぁ、どんな状態でもある程度は操って見せるぞ」


「それなら文の雷系統の攻撃はほぼ無効化できるな。誘導もできるし、純水が作れるなら電気通さないし」


「そうだな。でもこいつ風属性の魔術とか普通に使うだろ?しかも結構強いやつ」


「まぁそれなりには使えるわよ?」


「それだと厄介なんだよなぁ・・・水が風で飛ばされるからほとんど役に立たなくなる」


「え?水の操作であらがえないのか?」


風と水の相性自体はそこまで悪くないように思える。火と水のように完全に弱点同士の関係で成り立つものと違い、風と水はそこまで相性が悪いとは言えないように思えた。


特に水の塊が風で持ち上がるとも思えなかった。


「考えてもみろよ、霧とか出したら風で吹っ飛ばされるだろ?ちょっと強めの風とか竜巻作られたらそれだけで水の攻撃は無意味になるんだぞ?ほとんど速度で威力出してるようなもんなんだから」


「あぁそうか、物質的な性質を持ってるからそういうのにも弱いのか・・・」


水の魔術は水や液体を操る魔術だ。そのため物理的な干渉能力を持っている魔術とは相性が良くもあるし悪くもある。


特に水は流動体だ。固体のように動きにくいものではなく全体を完全に制御しても外側から徐々に削り取られていく。


水の塊を操っても少しずつ吹き飛ばされてしまえばその質量も威力も激減してしまうのである。


水と風の相性的に言えば、短期決戦であれば水のほうが有利で長期戦ならば風の魔術のほうが有利ということになるだろう。


「強い風を作り出せる魔術師なら水はちょっと注意しておけば脅威にはならないでしょうね。でも風を無視するくらい大量の水を作り出せばいいんじゃないの?」


「そうなると天候の助けも必要だな。雨とか降ってたら最高の条件がそろうんだよ。前みたいな感じ」


「あぁ、確かにあれは一気に吹き飛ばすのは無理だな。それこそ竜巻でも作らないと無理か・・・姉さんならできるかな?」


「一応私も竜巻くらいなら作れるわよ?真理さんの風がどれくらい強いのかわからないけどね」


文は真理の作り出す風の最大出力を見たことがない。というか真理が本気で戦ったところすら見たことがないのだ。


そのため自分と真理の風魔術の実力差がわからないのだろう。実際康太も風の魔術に関してはどちらのほうが上手なのか把握しきれていない。


真理に言わせると出力は文のほうが上なのだとか。


風そのもので体を浮かせることができる程度に強い風を作り出せる文なら倉敷の作る水を吹き飛ばすくらいは容易だろう。


それこそ水竜巻などではないがそういった形で完全に水の魔術を無効化することも不可能ではないだろう。


そう考えると確かに水属性の魔術は風属性とは相性があまり良くないように思えた。


「だけど水属性って火と風以外に対処のしようがないよな?しかも火で消すっていったってかなりの火力が必要だし」


「火だって消してるわけじゃないわよ?あれは蒸発させてるだけであって水分を操ることができればその蒸気だって操れるんだから。むしろ厄介になるだけよ」


「そうか・・・じゃあ風くらいしかまともに水属性の攻撃は対処できないのか」


「その分水の魔術は威力を出すのが難しいし防ぐのも割と簡単だけどな。何せ水だからちょっと緩やかなカーブの形の障壁でも作れば簡単に受け流せるし」


もとより水属性での攻撃というと以前倉敷が使っていたような高圧で発射させる水圧カッターなどがあげられる。


だがあれも距離があれば威力は減衰するし、倉敷の言うように障壁の形を少し工夫すれば受け流して無力化できる。


水属性の魔術はそもそも攻撃にあまり向いていないのだ。もちろん水の鞭などを使って拘束を主な目的にするとそれなりに脅威になる。それこそ吹き飛ばすなどしない限り対処のしようがないのだから。


普段自分たちの生活に密接しているのもあり、水というのは高い脅威度を持っているような印象は持たないかもしれない。


だがひとたび牙をむけば恐ろしいほどの威力を持っているのは間違いない。使い方によっては高い効果を得ることができるのが水属性の魔術なのである。


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