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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十五話「夢にまで見るその背中」

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犯人の手法

昼間のうちに今回の範囲のすべてを歩き回った三人だが結局昼間のうちに異常と思えるようなものを発見することはできなかった。


これだけ魔術師が大量にいる状況そのものが異常といえば異常なのだが、少なくとも土地的な異常を発見することはできなかったのだ。


あとは状況的な異常、具体的に言えば夜にのみ特定条件を満たすなどの魔術師にとって魅力がある環境がそろった場合はそれも一種の土地が原因となっているといえなくもない。


そうなってくれたのであれば康太と文としては非常にありがたいのだがなかなかそう都合よくはいかないだろうなと二人は半ばあきらめていた。


「でもさ、仮に今回のことが人が原因だったとしてどんな方法で集めてるんだろうな?」


「え?そんなの暗示とかそういうのじゃないの?」


「暗示とかそういうのっていうのはいいんだけどさ、そこまで長続きするか?一時的な判断の変化ならともかくここを拠点にまでしてるんだぞ?そこまで長く思い込ませたりできるもんかな?」


康太たちは近くにあった中華料理屋で少し早めの夕食をとりながらそんなことを話していた。


すでにこの状況を作り出しているのが土地ではなく人が原因であると考えている康太と文は、この状況をどのようにして生み出しているのかというところを考え始めていた。


土地に原因があるというのであれば、何かしらの噂などがあってもいいはずだ。少なくともそういった話を聞かないうえにアリスが何も感じないという時点で土地に原因があって魔術師たちが集まっているということはまずありえないと考えたのだ。


むろんまだ夜の特定条件に何かが起きるという可能性がないというわけではない。とはいえ日も暮れはじめ、徐々にあたりが暗くなっているこの状況でアリスが何も反応していないというのはつまりそういうことなのだなと二人はすでに思考を次の段階に進めていた。


「そうね・・・実際長期間暗示を維持するためには定期的に暗示をかけなおす必要があるけど・・・」


「てことは、仮にこの状況を暗示で作り出した場合、犯人が定期的に接触してるってことだよな?」


「それはあくまでただの魔術師がかけた暗示が原因に限られるわね。長い時間その場所を拠点にすることが目的なら別の方法だってあるんじゃない?」


「例えば?」


「そうね・・・相談に乗るふりしてその場所が最適だとか嘘つくとか?ある程度信用がある人間にそういわれれば軽い暗示でも効くだろうし、信用ある人間ならうまくやれば数秒接触して話すだけで十分暗示の重ねかけはできる」


「ここにやってきた人間全員に信用されてるってことか?それって現実的じゃなくないか?」


「そこなのよね・・・アリス、信頼されている人間からの暗示なら、別にあんた以上の実力がなくても問題ないでしょ?」


「もちろんだ。暗示というのは何気ない会話や誘導で効果を発揮する。何気ない会話を容易に行えるだけの関係なら容易に暗示をかけられるだろう」


「つまり、実力がなくても人心掌握術さえあれば問題なく可能・・・それなら有名じゃない魔術師でもなんとかなる」


「・・・そんな魔術師あり得るか?これだけのことを起こすんだぞ?」


暗示のかかりやすさというのは相手がどれだけ警戒していないかというところに重点が置かれる。


相手が自分のことをどれだけ疑っているか、言葉一つ一つをどこまで疑えるかというところが暗示のかかりやすさにかかわってくるのだ。


一般人は暗示に対する知識そのものがないために暗示に対抗できないが、魔術師は暗示の効果も内容も知っているために少し妙な話の流れを作ろうとすればそれが暗示の魔術を発動しているのではないかと疑うことができる。だからこそ耐性を得ることができるのだ。


だがもし相手のことを信用していれば、そもそも言葉を疑うということがないために容易に誘導することができるだろう。


「逆に警戒するまでもないような魔術師も暗示をかけやすいかもしれんな。相手が徹底的に弱者であったのなら大半のものが警戒心が薄れるだろう?」


「なるほどそういうのもあるのか・・・でもさ、それでこれだけの人間が集められるか?」


ラーメンをすすりながら康太は眉を顰める。確かに相手が弱ければその分警戒が薄くなってしまうのもうなずける話だ。


格下相手に逆に警戒するというものもいるかもしれないが大半の人間は格下だとわかると同時に気が緩むものである。


相手が能ある鷹で、爪を隠していたものだとして相手が油断した瞬間に暗示の魔術によって相手をからめとっていても不思議はない。


とはいえ現実的ではないのも事実だ。一人の魔術師がこれだけ多くの人間を集められるかという点において疑問が残るのだ。


何せここに集められている魔術師はその性質も、もともと拠点にしていた場所も全く違うのだ。


似たような場所を拠点にしていた魔術師ももちろんいるのだが、それにしたってこれだけの数の魔術師を集められるというのはそれなりに労力が必要になるだろう。


「犯人が単身じゃなくて、複数、しかも組織的にこれをやってた場合は?」


「組織的にやっていたんだとしたら目的があるはずよ。現状目的らしい目的は見当たらないわ。そもそもこれだけの数の魔術師を集めて何かを始めようっていうならまだしも、ただ放置しているだけなのよ?」


「そこなんだよなぁ・・・組織的に動いて活動してるならまだしもただ集めてるだけだもんなぁ・・・」


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