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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十五話「夢にまで見るその背中」

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調べる者とその可能性

いざこざを起こした魔術師は何人かいる。一対一の状態で衝突したものもいれば、多対多、あるいは多対一の状況でぶつかったものもいる。


これだけの数の魔術師がいるのであればどのような争いが起きても何ら不思議ではないだけに気にするようなことでもなかったのだが、現状を確認してその認識を改めることができた。


これだけ見え見えの罠を仕掛けている状態で、互いに牽制を仕掛け続けているようなこの環境でいさかいを起こすということがどれだけ面倒なことか。


少なくとも康太はこれだけの環境の中で争い事を起こそうとは思わない。逆に言えばこれだけの環境でもそれだけの面倒を抱えてでも主張しなければいけない、通さなければいけない意地があったということだ。


その理由が、今回のこの状態の原因に何らかの関係があるのではないかと文はにらんでいた。


そして康太もその考えに同意している。この状況を見る限り、少なくとも争い事を起こした魔術師たちは何かがあるのだ。それこそ自分の命を懸けてでも通さなければいけないほどの意味が。


「まずはその魔術師を調べるのが先決か。何人くらいいたっけ?」


「一応カウントしたけど三十八人いるわね。これだけの数だから調べるのも相当大変だけど・・・」


「一人一人話を聞く・・・ってわけにもいかないよな・・・ただでさえピリピリしてるっぽいし」


「そうね・・・隠れて調べようにもその人たちが活動を起こさなきゃ深くまでは探りようがないし・・・」


「協会に上がってる報告はどんな感じなんだっけ?結構当たり障りない感じか?」


「えぇ。少なくとも問題視するようなものじゃないのは確かね。むしろそんな理由でこの場所で争いを起こしたのかって問いただしたいわよ」


文の見た資料の中に記されていたいさかいが起きた際の協会への報告書。これは文の言うように問題視するようなものではなかった。


単純な縄張りの境界線の争いや、互いの魔術師としての考え方の違い、互いの魔術の干渉不干渉などなど挙げればきりがない。


どれもこれもそこいらで起きそうな一般的な魔術師同士の争いの理由なだけに康太と文は資料で見たときは気にも留めなかったが、この現状を見た時その一般的な争いが明らかに特殊な事情で起きているということくらい簡単に想像できる。


まず間違いなく報告そのものが偽装されていると考えていいだろう。もしこの報告が事実だとしたらそれはそれで問題だ。この状況でも平然と一般的な魔術師としての振る舞いができるような魔術師ばかりが集まっているということになる。


そんな連中の懐には入りたくないなと康太も文もポテトを口にほおばりながら眉をひそめていた。


「とりあえず一番手っ取り早いのは争い事を起こしてる魔術師の間に入ることか?仲裁するふりして事情を聴くとか」


「あるいは争いが起きているのをただ傍観・・・観察するってところかしら。場所じゃなくて人が原因ならそうやって手掛かりを探っていくしかないと思うわ」


二人の意見が一致したところで二人の視線は同じ方向へ、つまりマックシェイクを飲んでいるアリスのもとに注がれる。


「なんだ?夜になるまで待てんか?」


「いやいや、何か感じたりしてないかなと思って」


「土地が原因であるかを探れるのはあんただけだからね。期待してるのよ、何かしらの原因を見つけてくれないかって」


人が原因か土地が原因か。どちらが調べるのが楽かと言われれば圧倒的に後者だ。何せ土地の異常を見つけたらその場所を徹底的に調べて報告すればいいのだから。


もしアリスがその異常を発見してくれればこの依頼は今日中に片が付く。それこそ場所を調べさせる協会の魔術師を呼ぶだけで終わるかもしれない。調べ物としてはなかなか難易度の高いように思えた依頼を一日で終えられればこれ以上の成果はないだろう。


ただ人が原因だった場合は面倒極まる。何せ問題を起こしている魔術師一人ずつ接触するか、問題を起こしている魔術師の行動を監視してその目的を探らなければいけないのだ。


その魔術師一人一人を捕まえて吐かせていってもいいのだろうが、もしこの魔術師たちが背後で結託していた場合面倒なことになる。


あらゆる可能性を考慮するならば大勢を一度に捕まえ、一人ずつ個別に事情を聴いて裏を取らなければいけない。


それだけの戦力は今はないし、それだけのことをできるだけの人手もない。そう考えると人が原因よりも土地が原因のほうがはるかに楽なのだ。


「まぁ私もこの状況を人が作り出したとは思いたくはないな。もしそれができたとしたら相当な使い手だぞ」


「そうなの?それってどれくらい?」


「暗示、誘導、洗脳、どの魔術を使っているのかは知らないが魔術師の行動をここまで操るとなると、その系統の魔術に関しては私と同等かそれ以上の可能性があるな」


専門分野とはいえアリスと同等かそれ以上の使い手。その言葉に康太も文も目を見開いていた。


アリスは現在世界に存在する魔術師の中でも最高の技術を有する魔術師だ。何百年も生きているだけあってその技術に比肩できるものはまずいない。


単純な魔術一つをとってもアリスの技術は恐ろしいまでに高い。長年積み上げた実力はうそをつかないのだ。


それほどの実力を持つアリスにそこまで言わせるだけの技術の片鱗をこの現状はにおわせている。恐ろしい話だなと康太と文はほんのわずかに身震いしていた。


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