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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十四話「世代交代と新参者」

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不意打ちの打ち合い

相手から手を出すまでこちらは手を出さない。真理から頼まれたことでもある、専守防衛というのは地味に厄介だなと思いながら康太はため息をついていた。


このままこの三人が引けばそれでよし。引かないのであれば是非もない。


康太の高圧的な言葉に目の前の三人は明らかに纏っていた空気を一変させていた。


特に先ほどまで康太と話をしていたヤヤは、こちらに対して明確な敵意を向け始めている。


すでに相手は戦闘態勢に移行しているのだろうがこちらから手を出すつもりはない。相手が手を出して来たらその時は遠慮なく攻撃をさせてもらうが、それ以外の状況であればこちらはあくまで店側として対処する。


不意打ちを受けることがないように、康太は集中を高めていた。いかなる攻撃、そして相手の動作も見逃さないように索敵の魔術を発動しながら静かに戦闘態勢に移行している。


目の前の三人は康太を前にしてほんのわずかに視線を交わしながらこれからどうするかをすでに話し合っていたようだ。


ある種覚悟が決まったような空気を醸し出している。康太はこれはもうどうしようもないかもしれないなと思いながら目を細める。


「・・・わかった、じゃあカタログだけくれないか?そっちが警戒している以上俺らが近づかないほうがいいだろう、ここで待っているからカタログを持ってきてくれ」


なるほどそう来たかと、康太は内心ため息を吐く。こう来られた時のためにあらかじめカタログを持ってくればよかったなと思いながら康太はほんの少しだがウィルを背中の方に集めておく。


四肢にも万が一にもダメージを受けないように鎧を作りながら攻撃に備えていた。


「わかった、少し待っていろ。すぐに持ってくる」


康太が踵を返して店に戻ろうとする振りをすると、やはりというか当然というか、三人からそれぞれ攻撃魔術が放たれた。


火に氷、そして土塊。それぞれの属性魔術が放たれたことを確認すると康太は自分の背後に気付いていないふりをしながらそのまま直進する。


そして攻撃が直撃する瞬間、体と攻撃魔術の間に炸裂障壁の魔術を展開した。


炎の爆炎によってその障壁は三人には見えなかっただろう。破れやすい耐久度の低い障壁とはいえ、炎と氷の魔術は半分以上防いでくれた。


土塊の魔術に関しては障壁で防ぐことはできなかったが、障壁が砕けた際に生じた刃によって切り刻まれ、康太の体に直撃するころにはだいぶその威力を削がれていた。


しかも康太の体に直撃したとは言ってもウィルの装甲によってほとんどが無力化された。相手の初手先制攻撃では康太にまったくダメージを与えられなかったことになる。


とはいえ移動中に背後から攻撃を受けた衝撃そのものは康太の体に加えられた。バランスを崩した康太は屋根から落下してしまう。


地面に着地する寸前でウィルがその体を康太と地面の間に滑り込ませてクッション代わりにしてくれたおかげで康太は全く着地の衝撃も受けなかったが、やはり魔術の直撃というのはあまり気持ちの良いものではない。


普段訓練でも魔術はよけるものだ。あの状態であっても容易によけられた。あの攻撃を受けたのはこちらが攻撃を受けたという事実を作るためだ。


自分の兄弟子の指示とはいえ、これはあまり気分がよくない。相手に手心を加えるという意味とはまた違うし、自分の間抜けさをさらしたという意味でもそこまで気にするようなことではない。


どちらかというと、相手の攻撃をこの体で受けてしまったということ自体が康太にとっては良くないことなのだ。


攻撃は回避するものだ。それをわざわざ受け止めたことに意味があるとはいえ、康太やその兄弟弟子などが軽くみられるのではないかと思えてならなかったのだ。


索敵の魔術で観察すると、三人の魔術師は屋根から落ちたこちらを観察している。どうなったかを見ているのだろう。


屋根から落下してから微動だにしない康太を見て、軽くハイタッチしている姿さえ確認できた。


こうすることはあらかじめ決めていたのだろう。康太としても好都合だった。


三人の魔術師が康太への観察をやめて小百合の店に移動を開始しようとする瞬間、康太はその体を起こした。


三人の内、一人しか康太のその行動に気付く者はいなかった。そしてその隙を康太が見逃すはずがない。


康太の変化に気付いていたのはヤカセだった。おそらくこの三人の中で索敵などの情報処理を担っていたのは彼だったのだろう。


そのヤカセめがけて、康太は腕についている盾から鉄球を放ち、再現の魔術でナイフの投擲を繰り出す。


物質的な攻撃と魔術的な攻撃の同時攻撃、ヤカセは急な康太からの攻撃にほとんど反応することができずその攻撃すべてをまともに受けてしまった。


とっさに腕を使って急所だけは守ったようだが、鉄球にナイフの投擲をすべて体で受け止めたこともあってその体からは何か所も血がにじみ出していた。


とっさに腕で防御したおかげか、まだヤカセを戦闘不能にはできていないようだった。


お手玉を使えればもっと多角的な攻撃ができたのだろうが、ここは住宅地だ。周りに建物が多すぎて収束の魔術でも弾道を変えきれない。収束を使った多角的な攻撃をするには屋根の上に躍り出なければいけないだろう。


そして一回の攻撃で確実に戦闘不能にするためには、多角的な攻撃をして確実に急所に当てなければならないだろう。一方からの攻撃ではある程度防御されてしまうのだ。


とはいえ先手は打った、ヤカセが急に攻撃されたのを見て、ヤヤとクダも康太がまだ行動できるということを確認したのだろう。ヤカセの盾になるような形で身を乗り出すが圧倒的に遅かった。


再現の魔術で疑似的な足場を作り出した康太は一気に屋根の上まで駆け上がりながら三人に接近すると同時に、すれ違いざまに槍の矛先のパーツでクダに斬りかかる。


とっさに腕で防御していたが、左腕と左肩を切り裂かれ、その場所からは鮮血がにじみ出ていた。


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