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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十四話「世代交代と新参者」

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辿る道筋

「このあたり・・・か・・・だいぶ絞れたな」


「かなり前進したわよ。探す範囲もかなり限定されたからあとは時間の問題ね」


康太たちは時間をかけて条件に当てはまる場所を見つけ出していた。


近くに公園があり、頭上、あるいは近くに鉄塔と電線が通っている場所。そして件の魔術師グループの活動圏内というとかなり絞られていた。


まずは一枚目の絵の情報を確認するために近くにある公園にやってくると、文は自分の努力が実ったことを確信していた。


「・・・あったわ・・・これね。あの子の記憶は間違ってなかったってことね」


自分が描いた絵と実際の風景を見比べながら文は満面の笑みを浮かべる。


二回も吐いたのは無駄ではなかったのだと文は歓喜しながら周囲を見渡していた。何せ文の持つ絵とほとんど同じ光景が目の前に広がっているのだ。


文が多少かがんで高さを合わせることでその絵と現実の光景はほぼ一致する。やはり記憶の劣化や損傷があるのか細部に若干の違和感が残るものの、ほぼ正解を引き当てたと思っていいだろう。


日曜日ということもあって子供連れの母親などがいるが、その程度は些末な問題である。


「・・・あの歳の子供の行動半径から考えてこの周辺ね。鉄塔と電線が見えて、なおかつ近くにある家・・・ゴールが見えてきたわ」


「こうなったら意地でも探し出してやる・・・といいたいところだけどここから先はどうしたもんかね・・・このあたりの人間だっていうのはわかったけど・・・」


子供の行動半径というのは案外狭いものだ。特にあの歳の子供は移動手段がかなり限られているために動こうにもなかなか動けないことが多い。


自転車に乗れなかったりすればさらにその行動範囲は狭まる。電車を使おうにもこのあたりで一番近い駅まで行くにはどうしたってバスに乗らなければならないだろう。


ただ公園に遊びに来るだけなのにそんな手間をかけるとは思えない。つまり子供でも容易に行き来できる距離にみかは住んでいたのだ。


だがそれがわかったところであとは足で探すしかないというのが実際のところである。


幸いに名字だけはわかっているために虱潰しで天野という家を探せばそれで何とかなるだろう。


時間と手間はかかるかもしれないが一番確実な方法である。


「手分けして探すか・・・それが一番楽な気がするわ」


「そんなことする必要ないわよ。とりあえずあの人たちに話を聞きましょ」


「話を聞くって・・・何を?」


「このあたりにある天野って家がどこにあるのか聞くのよ。何のために私たちには魔術があるわけ?」


文の言葉にそうかと康太は手を叩く。確かに康太が考えた手分けしてしらみつぶしに探しだすというのも間違った方法ではない。おそらく最終的には答えに行きつくことはできるだろうが多少非効率だ。


文がやろうとしているのはご近所付き合いを利用した情報収集である。みかのような歳の子供がいるということはそれなりに奥様コミュニティに参加している可能性が高い。


仮に参加していなくとも同年代の子供がいるということで何らかの接点を持っている、あるいは興味を持っていることだろう。


そういった奥様方に話を聞くことで情報を引き出すのだ。いきなり『天野さんの家がどちらにあるか教えてください』と聞いてもほとんどの人間は答えてくれないだろう。


最悪通報されるのがおちだが康太たちは幸か不幸か魔術師だ。相手が魔術をたしなんでいない限り暗示の魔術が有効であり、一般人からの情報収集はそこまで苦にならないということである。


「それじゃあ情報収集は頼んだぞ文、俺はそういう場ではまだ役には立てないからな!」


「・・・あんたもそろそろまともな暗示をかけられるようになりなさいよ・・・こういう情報収集の時不便じゃないの?」


「いやいや、ある程度のものはかけられるんだよ・・・でも良くも悪くもある程度なんだって・・・親にかけるのに苦労しない程度でさ・・・練習相手が一般人だけってのもなかなかきついよ」


「練習しにくい魔術であるのは認めるけどね。日常的に練習しなさいよ。学校とかいくらでも使えるじゃない」


「あんまり使いすぎると先輩たちににらまれるかと思って自重してたんだよ・・・もめ事起こしたくなかったし」


基本的に人間相手に作用する魔術、暗示などがその最たる例だが、その場合魔術の鍛錬をする場合当然だが人間を対象としなければならない。


未熟な状態で扱えるのにも限りがあるのに、その対象が一般人ともなればさらにその訓練の場は狭まってしまう。


康太はいまだに暗示という魔術を苦手としていた。むろん問題なく発動できるようにはなってきているのだが、文や真理のような精度は望めない。


しっかりとした情報収集をするのであれば文に頑張ってもらうのが一番手っ取り早いのである。


「というわけで頼んだぞ文。俺はブランコで遊んでるから」


「あんたね・・・あんまり変なことして通報されないでよ?高校生でブランコ乗ってるって時点でだいぶあれなんだから」


日曜日の夕方にもなろうという時間帯にブランコで遊ぶ高校生。確かに異様な光景だ。見る人が見たら不審者として通報しないとも限らない。


不自然すぎる状況だと暗示の魔術の効きにも影響を与えてしまう。文はとりあえず康太のことは気にせずにその場にいた奥様方に話を聞くことにした。


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