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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十四話「世代交代と新参者」

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彼女の記憶の中

「で、どうだった?」


みかが再び修業に戻るのを見届けた後、康太は文とアリスと合流し経過を聞いていた。


だがその結果を聞くまでもなかったかもしれない。アリスの表情は少なくともあまり良いものとは言えない。一言でいうなら渋い顔だ。


可もなく不可もなくといったところだろう。記憶を読むこと自体はできたが少なくとも康太が求めるものは見つからなかったと考えるのが妥当だろうか。


「まぁ予想はしていた通りの結果になったな。一応お前たちにも見せてやる。見るのであれば覚悟してみることだ」


「ん、今更死体くらいでビビるような軟な神経してないって。こちとら何回死んだと思ってんだよ」


「・・・死体を見るのは嫌だけど見なきゃあの子のことも知れないからね。仕方ないから見るわ」


康太は疑似的ではあるとはいえすでに何度も死を経験し、一人二人どころか数十人の死体が出てきても別に驚きはしないような精神構造を手に入れていた。


それはどちらかというとどこか大事な部分が壊れてしまっているのではないかといいたくなるほどだが、それについては今は置いておくことにする。


文のような精神構造がおそらくこの場ではもっともまともな部類になるのだろう。世も末だと思いながら康太と文はアリスと視線を合わせる。


「ちなみにお前の認識としては何が見えた?風景か?それとも人が死ぬ光景か?」


「・・・なんとも言い難いな・・・やはりというか当然というか、記憶がだいぶとびとびになっていてな・・・一部見ることのできない記憶も含まれた。無意識のうちに記憶を消去、ないし封印したのかもしれんな」


「・・・状況から察するにそういうことがあったんでしょうね・・・本当に気の毒だわ・・・あんな小さな子が・・・」


文が本当に気の毒そうな表情をしてゲヘルの窯に向かっているみかの方に視線を向ける。あの年齢で自分の記憶を無意識とはいえ自発的に封じなければいけないような経験を彼女はしたのだ。


これを気の毒といわずして何と言おうか、文は彼女に対してそれ以外の感情を抱くことが難しくなっていた。


「同情するのはあとだ。今はちょっとでも情報がほしい。アリス、頼むぞ」


「了解した。二人とも額を失礼するぞ」


アリスは康太と文の額に手を当てると魔術を発動する。その魔術は自分が認識したものを相手に伝える、康太が使う精神破壊用の同調魔術と同種のものだった。


もっとも康太の魔術のように自身の苦痛などを相手にわからせるのではなく、自身が見たもの聞いたものを相手に伝えることができる魔術だった。


要するに康太の魔術の平和版といったところだろう。


康太と文の二人がアリスから見せられた光景は、はっきり言えば支離滅裂という言葉が最も適切なものだった。


場面が次々に目まぐるしく変化し、日常の光景が広がったかと思えば周囲が血だらけになっていたり、明るい日の光の下、公園らしき場所で遊んでいたかと思ったら薄暗い鉄格子の牢の中に閉じ込められていたり、誰かと手をつなぎ楽しそうに笑っているかと思えば近くにある死体の着ていた衣服を握っていたりと、はっきり言ってまともな精神状態ではないのは間違いなかった。


康太でさえも顔をしかめるその光景に、文が耐えられるはずがなかった。


ただ時間経過とともに日常から非日常への変化だったら、日常と非日常の区別がはっきりとついているのであれば文も耐えることができただろう。


だが見せられた光景はまさしく無茶苦茶。壊れた映像データを見たところでここまでひどくはないだろう。

次々に場面が変わり、その度に変化する光景と感情に振り回され、文は口元を抑えてその場に座り込んでしまっていた。


「・・・これは・・・確かになかなか来るものがあるな」


「だろう?さすがの私もこれ以上あ奴の頭の中をのぞこうとは思わん・・・今あのように動いているのが不思議に思えるほどの精神状態だ・・・幼いからこそ状況を理解できていないのが幸いといったところか」


みかがもしもう少し大人で、自分の身の回りに起きたことをもう少し理解できてしまっていたら、おそらく彼女の精神は完全に壊れていたことだろう。


彼女が今あのように一見して普通に見える程度に行動できているのは、彼女が幼く自分の置かれた状況を理解できなかったからに他ならない。


それを幸運と思うべきなのか、それとも不運と思うべきなのか、康太たちには判断できなかった。


「な・・・なんで・・・あんたたちそんな・・・普通に・・・してられるのよ・・・」


頭痛に加え吐き気も催しているのか、文は激しく息をつき肩を上下に揺らしながら涙目になってしまっている。


こういったものを見慣れていないからこそこんな風になってしまうのだ。この反応は至極正しいものだろう。普通の人間なら十人中九人はこういった反応をするだろう。なお一人は気絶する。


「こういうのとは少し違うけど、似たようなものを無理やり見せられたからな・・・こういうのには慣れちゃったよ」


「今のうちに慣れておくがいい。魔術師として生きていく以上、魔術がこういうものを生み出すのだということを知っておく必要がある。特にフミにはそういう考え方が必要だ」


「なんで・・・私だけ・・・」


「それはお前だからだ。その理由は自分で考えろ」


アリスの突き放したような言葉に文は嗚咽を漏らしながらうずくまってしまう。文がこのような反応をしてしまうのも無理はないなと、康太は何か飲み物を持ってくることにした。


康太たちは平気だというのに自分が平気ではないというのは納得いかないが、気持ち悪さよりも自分の感情が抑えられないことが今の文にとっては一番の問題だった。


自分の体の奥底から湧いてくるのは怒りだった。あんな小さな子供の精神をあそこまでボロボロにした魔術師への怒り。そして自分が彼女にほとんど何もしてやれないというふがいなさに対する怒り。


何より康太やアリスと比べて自分がこのようにうずくまって涙さえ浮かべてしまっている自分の情けなさに対する怒り。


いろいろな怒りが混ざり合って文の中でのたうち回っている。魔術師である以上自分の感情位制御できなくてどうするのかと自分自身で叱咤するがおそらく自分の中にいる精霊たちも怒っているのだろう。この怒りを抑えることができそうになかった。


「ほら文、水持ってきたぞ。とりあえず飲んどけ」


「・・・ありがと・・・ごめん」


一体何に対する謝罪か、文は康太が持ってきたペットボトルの水を受け取ると一気に口の中へ流し込む。


喉を鳴らし、胃の中へと一気に水を流し込むことで少しでも体を冷やそうとしたが、まるで今入っていった水を沸騰させているのではないかと思えるほどに腹の中はまだ煮えたぎっていた。


大きく息を吸って吐いて、何度も深呼吸して自分を落ち着かせようとする文だが、落ち着かせようとすると先ほどの光景が脳裏に浮かんできて再び自分の中の怒りが燃え滾る。


これほどまでに腹立たしいのは久しぶりだった。だが今こうして自分が腹を立ててもしょうがないのだ。


話に聞く限りみかが捕まっていたのは抗争を行っていた魔術師グループの一つ。もしこのグループがまだ残っていたのであれば康太やアリスに協力を求めて壊滅させに行ったかもしれないが、すでにそうすることはできないだろう。


何せその抗争に介入したのはほかならぬ小百合なのだ。もはや抗争を引き起こしていたグループは跡形もなく粉砕されているだろう。


自分が出る幕ではない。そう言い聞かせると同時に自分にはまだできることがあると、少しずつ怒りの炎を穏やかにさせていく。


完全に消す必要はない。怒りを別の方向へと向ければいいだけのことだ。そのくらいの感情のコントロール位なら文にだってできる。


「とりあえず、さっき見えた光景の中で日常に近いものから洗っていきましょう。公園とか歩いていた時の風景とか、何でもいいから紙に起こすわ。アリス、さっきの映像もう一回見せて」


「おいおい正気か?一回見ただけでグロッキーになってたってのに・・・」


「わかるまで何度でも見るわよ。もしかしたら吐くかもしれないからあらかじめバケツの用意を頼むわ」


「さすがに目の前で吐かれるのは困るのだが・・・」


映像を見せるという魔術を発動するためには相手の頭部に触れていなければならない。そういう理由からしてアリスは文から離れるわけにはいかない。


たとえ文が吐かないようにしたとしても吐くときには吐いてしまうものだ。吐瀉物を仮に眼前にあるバケツにぶちまけたとしてもその匂いや飛散物は間違いなくアリスに襲い掛かるだろう。


「ていうか・・・文が無理しなくてもアリスに書いてもらえばいいんじゃないか?こいつのほうがそういう魔術得意だろ?」


文がやろうとしているのは自分の頭の中に映された映像を魔術によって紙に書き写すというものである。


以前用務員の一人を対象として偽の写真を作ったときに行った技法である。


普通に書かなければいけない技術を要する絵画と違って、文ほどのものが行う魔術のそれは自分の頭の中に描いているものをそのまま投影できる。


だがそれはアリスだってできるはずなのだ。現に以前はアリスに頼んでいたといっていた。わざわざ文が吐くほどの思いをしてまでやることではないように思える。


「アリスには私に見せる映像に集中してほしいのよ・・・自分で映像を思い出しながら書くんじゃどうしても精度が落ちるでしょ?それに・・・」


「・・・それに?」


「・・・何でもかんでもアリスに頼るのは私の主義じゃないの。自分でできることは自分でやる・・・それはあんただってそうでしょうが」


康太は基本的にアリスに頼るときは、本当に自分ではどうしようもなくなった時と本格的にどうでもいい時だけだ。


今回の場合は前者に当たり、テレビのリモコンを取ってくれだとか、風呂の掃除を代わってくれだとかいうのが後者に当たる。


魔術師として自分で行動している以上、アリスに必要以上に魔術師として頼りたくなかったのだ。


そしてそれは文も同様であるらしい。


「・・・なんというか・・・お前たちは似た者同士だの」


「こいつと似てるなんで冗談ごめんよ。私はこいつと違って常識人なんだからその所間違えないでよね」


「おいこら、俺だって比較的常識人だぞ」


「それ誰と比較しての話?」


「・・・師匠」


「あの人を比較に出してる時点で程度が知れるって話よ」


ぐうの音も出ない正論に康太は全く言葉を返すことができなかった。徐々に自分が常識人ではなくなっていくのを実感しながら、康太は文の言う通りバケツを用意していた。


文が三つの絵を用意する間に、彼女は二回ほど胃の中身をぶちまけていた。アリスに情報を頭に直接流し込んでもらっては写し、映像を見ながら写し、そんなことを何度も繰り返してようやく三つのイメージを作り出していた。


一枚目は公園の絵だ。そこにある遊具や空に見える太陽の位置から大まかではあるが入り口から見える光景と方角を知ることができる。


さすがに時間帯までは不明であるためになんとも言えないが、これはみかの行動半径を知るうえでかなり重要な手掛かりとなるだろう。


そして二枚目は家の絵だ。だがこれはだいぶあいまいな部分が多い。文も何度も何度も見てもわからない部分があったのだろう、門柱や一部の風景に欠損があるものの、扉と建物の大まかな輪郭は把握できる。そしてその両隣の家も一応写っていた。


とはいってもみかの家と思われる家と同じく欠損が激しい。記憶の摩耗と損傷はかなり色濃く出ているのだろう。


三枚目は自分の手を握って歩いている女性の絵だ。これもかなり損傷が激しく、絵における視点、この場合はみかがそれに該当するが、その視点主と手をつないでいるのが体の大きさや輪郭からして女性であるということは理解できる。


髪はやや長く、この絵では上半身しか描かれていない。


だがその肝心の顔や特徴と思われるようなものは把握できそうになかった。見上げているということもあり逆光で細部が確認できないというのもそうなのだが、それ以上に記憶の摩耗が激しくひと昔前のフィルム写真のように焼けてしまっていて見ることができないのである。


しかしみかの現在の身長と、写っている女性の身長差から計算して、おそらくこの女性の身長は百六十後半といったところだろう。この女性がみかの母親であったのであればまた一つ探す手掛かりになるのは間違いない。


かなり記憶の損傷が激しく、決定打につながるような情報がなかったのは事実だが、この三枚の写真でかなりみかを探す上で楽になったのも事実だ。特に一枚目の絵はかなり有力なものといえるだろう。


近くに保護者らしき人物も見えないことから、みかは一人でこの公園に来ていた可能性が高い。


子供の行動半径というのは案外小さいものだ。その中にある公園を中心に探せばみかの家も探し出すことができるだろう。


一瞬しか映らないような日常の光景を良く映し出したなと康太は何度も頭の中に強烈な情報を叩き込まれながらも絵を描き続けた文に尊敬の念を抱いていた。


康太もあのような映像を見るだけなら可能だが、あの映像を見てその中から必要な情報だけを切り抜いてなおかつ書き記すということをするとなるとまず間違いなく難しい、いやできないだろう。


仮に康太が文と同じレベルの方陣術の実力を有していたとしても、見たもの、頭の中にあるものをそのまま方陣術で再現できたとしても、あのような乱雑な映像の中から必要な情報を引き出せる気がしなかった。


おそらくアリスも同じ映像を見せるように努力したのだろうが、それにしたって自由に再生、停止などができる映像データなどではなく、人間の記憶の中にある情報をそのまま読み取るとなるとその難易度はかなり高いだろう。


しかもその映像がほぼ日常に近いならまだしも、はっきり言ってみる人間が見たら気絶するのではないかというようなかなり衝撃的なものが多い映像を何度も何度も繰り返し見続けたのだ。


今文の精神状態は最悪だろう。今こうして起きていられるのが不思議なくらいである。


「ごめん・・・これだけしかまともなのなかった・・・」


「何言ってんだ文、ナイスガッツ。よくこれだけかけたよ、十分すぎるって」


康太は文の背中をさすりながら彼女の健闘を称える。汚物を吐き散らしながらも記憶を読み取り続けた彼女の努力を誰がとがめることができるだろうか。少なくとも康太はこれだけ憔悴した姿の文に『後二、三枚書いてくれ』というような鬼畜な所業はすることはできなかった。


「よくもまぁ・・・あの中からこんなものを探し出すとはの・・・精神が壊れてもおかしくなかったぞ?あれはそういう類の映像だったのだから」


「・・・逆に言えば、みかちゃんの今の精神状況はそれだけひどいってことなんでしょ?あの歳でこんなものを抱えてるなんて考えたくもないわ・・・少しでも早くご両親に会わせてちょっとでもましにしてあげたいわね」


「はやる気持ちはわかるけどいったん休め・・・さすがにこの状態じゃまともに動けないだろ。ほれ水」


「ありがと・・・あんたに吐いてるところ見られるとはね・・・」


「そんなの気にしないって、生きてる限り汚いところなんていくらでも見るんだから仕方ないだろ」


「・・・そうね、そうかもね」


昔自分は康太の吐瀉物だけではなく排泄物も片付けたことがあるのだぞと言おうかと思ったが、それは康太の尊厳のためにも言わないほうがいいだろう。


知らなくてもいいということだってある。康太が自分に弱いところを見せた分自分もそういうところを見せたというだけの話だ。


今回の場合は理由が理由だっただけに少々特殊かもしれないが、それでも対等というのはそういうことでもあると文は思っていた。


「さて・・・あとはここを探すだけか・・・」


文に少し休めとは言ったものの、康太も早くみかの両親を見つけてやりたいという気持ちはある。文の描いた三つの絵を見ながら康太はこの場所がどこにあるのかを思案し始めていた。













康太と文は一度休憩をはさんだ後、支部長に渡された抗争のあった場所の地図をもとに茨城県の某所にやってきていた。


抗争が起きたなどとは言ってもそれは魔術師同士の話で基本的にそこの町は平和そのものである。


ただ康太と文が少し注意深く観察すると、そこには魔術の痕跡らしきものがいくつか確認することができた。


抗争があったのはまだ昨日今日の話だ。完全にその痕跡を隠しきれていなくても無理はないかもしれない。


しかもその抗争は協会の人間が小百合を投入しなければならないほどに肥大化したようなものなのだ。その範囲も規模もけた違いなのである。


「さすがにあの人が介入しただけあって結構痕跡残ってるわね・・・協会の隠匿が間に合わないって結構な規模よ?」


「師匠が介入するととにかく破壊一辺倒になるからな・・・その補修だって時間かかるのに隠匿にも気を配らなきゃいけないんだから・・・本当に協会としては最後の手段だったんだろうよ」


おそらく日本支部の中でもかなり高い戦闘能力を有している小百合だが、支部の中では可能な限り使いたくない戦力でもあるのだ。


何せ彼女には性格的な面と魔術的な面で難がありすぎる。一度彼女が投入されれば基本的に気が済むまで暴れるか、依頼達成まで破壊工作を続けるかの二択になってしまうのである。


そうなってくると規模が大きい戦いになればなるほどに後始末が面倒になってきてしまうのだ。


それは康太たち弟子たちに降りかかるようなものだけではなく、協会や小百合を投入する原因にもなった魔術師たちが魔術の存在を隠匿するための作業も含まれる。


我を忘れて二つの組織間が戦った中、小百合が投入された瞬間に彼らは今の状況がまずいということを思い出していたことだろう。そして強くこう思ったに違いない。


自分たちは何と面倒なものを呼び込んでしまったのだろうかと。


「それで?小百合さんがみかちゃんを見つけたのは地図でいうとどこ?」


「あっちだ。雑居ビルがいくつかある場所だな・・・商業地区的なあれかもな。住宅街からはちょっと離れてる感じ」


「んー・・・拠点がそこだったってだけでみかちゃんが住んでたところがそことは限らないわね・・・さてどうしたものかしら」


みかが見つかった場所、つまり小百合が突入して壊滅させた魔術師のチームの拠点があった場所なのだが、何もそこを中心に調べるというわけではない。


あくまでその場所は目安でしかないのだ。何せ子供の行動範囲と違って大人の行動範囲は広い。どの場所で攫ってきたかなんてわかりようがないのだ。


「ちなみにだけどさ、その拠点を中心に行動してた魔術師たちに話を聞くことはできなかったの?個人を覚えてなくたってある程度どのあたりで攫ってたとかわかったかもしれないじゃない?」


「俺が聞かなかったと思うか?師匠にやられてみんな意識不明だとさ。相変わらずあの人は加減ってものを知らないよ・・・」


「あー・・・まぁ生きてるだけましなんじゃない?最低限の分別はある師匠でよかったじゃない」


「いま最悪と最低とどっちがましかって言われてる気分だわ。どの程度の分別だってひどいもんはひどいぜ」


文の言うようにもしその場所を拠点にしていた魔術師たちに話を聞くことができていれば少なくともどのあたりで攫ったかなどある程度の情報を得ることができていたかもしれない。


もし相手が生きていて動くこともできていたなら実際に攫っていた人間を案内役につけてもよかった。


それができない状況になったというのは小百合なりに思うところがあったというところだろうか。


それともただ単に虫の居所が悪かっただけか。康太的にはおそらく後者であると思っていた。


「とりあえず一番の手がかりはこの公園ね・・この近くの公園ってどれくらいあるのかしら?」


「こういう時携帯は便利だよな。ある程度だけどぱっと調べられるし」


「ありがたいけどね、携帯としての機能としては微妙よ?」


「まぁまぁ、使えるもんは使っとけって話だ・・・ってうわ・・・結構数あるな・・・これ回るだけでも今日終わりそうだよ・・・」


「バイク乗ってくればよかったわね・・・ってさすがにここまで来るのは面倒か」


「協会を経由しちゃったからな・・・今度支部長に頼んでバイクも門を通る時に一緒に移動できるようにしてもらおうかな・・・」


「それやったら他の魔術師たちも同じようなことしだすじゃないの。ダメなものはだめなのよ。あきらめなさい」


小回りの利く移動手段としてはバイクは最適なのだが、いかんせん康太たちの住んでいる場所からバイクで移動するとなると多少時間がかかりすぎる。


これが夜など、魔術師として活動しやすい時間帯であるならば肉体強化を施していくらでも加速して移動できるのだがまだ日が高いうちからそんな派手な行動をするわけにはいかなかった。


とりあえず近場の公園から回ってみるかと、康太たちは地道に近くの公園を探してみることにした。


誤字報告を十五件分受けたので四回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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