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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十四話「世代交代と新参者」

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半人前以下

「二年生差し置いて一年生の私が仕切れるとは思えないけどね・・・私たち一年なのよ?一応この高校の同盟の話なんだし、そのあたりはさすがに年長者を立てないと」


「学校行事とか部活ならまだわかるけどさ、別に魔術師としての同盟なんだからよくないか?相手のほうがなんかすごいっていうならわかるけど、あの人たち俺らよりすごい点ってあるのか?あの人たちのこと知らんからよくわからないんだけど」


文の言うことももっともではあるのだが康太の言うことも理がないわけでないのだ。


学校に所属していてなおかつ相手が年上であるということを考えれば、組織としては年長者を立てるというのは間違っていない。特に誰が仕切っても同じようなものであれば大抵年上が仕切るほうが余計な摩擦が少なくていい。


だが康太の言うように今回のことは学校内でのこととはいえ魔術師としての活動に含まれる。魔術師において年齢というのはあまり意味をなさない。魔術師は基本的に自分の思うがままに活動するタイプの人間だ。そんなものが『年上だから』という理由で誰かのもとにつくということはまずありえない。


誰かの下につくとすれば、それは相手が自分よりも優れている点があったときだけだ。それは戦闘能力だけではなく魔術師としての実力だったり問題解決能力だったり指揮能力の高さに起因するものだ。


逆に言えばそういった自分よりも優れている点がなければわざわざ下について指示を仰ぐ必要もないのである。


少なくとも康太は今まで魔術師として活動してきた中で先輩魔術師たちの話題というのは一回も聞いていない。というか先輩魔術師たちの術師名すら知らなかった。


先輩たちとのやり取りは基本的に文にすべて放り投げていたために、康太は先輩魔術師たちがどれほどの実力を持ち、どのような活動をしているのかどういった人に指導されているのかなど、基本的な情報を全く知らないのである。


「実際どうなんだ?あの人たちの実力。今まで全く気にしてこなかったけど」


「そういうと思ったわよ・・・少なくともある一定の実力は持ってると思うわよ?戦闘に関しては何とも言えないけど、二年生三人とも大体五年から七年くらいの経験は積んでるから保有魔術は圧倒的にあんたより先輩たちのほうが多いでしょうね」


「むしろ俺より少なかったら即刻文をトップに仕立てるところだ。今まで何か問題解決したとかそういう話は?」


「そういうのもとくには聞かないわね・・・あの三人・・・っていうか三年生の先輩も含めてだけどまだ修業中の身なんでしょうね。面倒ごとに首を突っ込むとかそういうことはしない主義みたい」


「・・・まぁよく考えてみれば俺みたいな奴の方が珍しいか・・・」


魔術師というのは魔術を扱うことができた時点で魔術師として認められる。


協会への登録自体は魔術が使えさえすれば誰でもできる。逆に言えばどんなに実力がなくても魔術師として登録された時点である意味『一人の魔術師』として見られることになってしまう。


学生のようにある程度社会に守られた存在ならまだ外に出ていろいろと活動もできたのだろうが、魔術師となった場合そういうわけにもいかない。


どのような場所を行こうと、どのようなことをやろうと、魔術師としての活動ならばそれは一人前の行動ととられてしまう。それがどれほど未熟なものが行った未熟な行動だったとしてもだ。


そのため普通の、常識的な考えを持った指導者なら最低限魔術師として活動できるだけの魔術を覚えさせ、なおかつある程度自分の身を守れるようになるまで完全に監視下に置き実力をつけさせる。


一般的に修業中と称される期間であり、文に言わせるとその期間は大体短くて三年。長ければ何十年もかかるものもいるという。


これは指導を受けるものの技量、そして環境もそうだが指導者の考えや方針によるものも大きい。


すぐに独り立ちするようなものもいれば、いつまでたっても師匠の後について回るような魔術師もいるらしい。


康太たちのように師匠である小百合の後ろについて回りながらも自分たちでいろいろと活動しているような魔術師もいるが、これは割と例外的な部類になるそうだ。


「まぁあんたたちのところはお師匠様自体が割と放任主義なうえにスパルタだからね・・・普通に考えたらあり得ないわよ?その分いろんな経験もできてるわけだけど危険も多いからね」


「普通は危ないことがないようにしっかりレベルを上げてから外に出すんだもんな・・・そう考えると先輩たちはどのくらいの立ち位置なんだろうな?」


「個人差もあるでしょうけど・・・たぶん修業期間が終わりに近づいている感じじゃないかしら?そろそろ一人前になって独り立ちをするために高校での魔術師としての活動は師匠から一任されてる・・・とかそんな感じ?」


「おぉ・・・すごい大事にされてる感があるな。過保護っていうかなんて言うか・・・うちとはえらい違いだ」


魔術師として高校に入学することになったその時に、同世代の魔術師を倒して来いと言われた康太とは大きな違いである。


「じゃあ先輩たちはまだぎりぎり半人前ってところなのか・・・もうすぐ一人前レベル」


「そうね、そう考えると技量的に勝ってるとは口が裂けても言えないわね」


「ちなみに文から見て俺たちの実力って何分の一人前くらいだ?割とまじめに」


「・・・そうね・・・私が総合三分の一人前、康太は戦闘面はほぼ一人前に近いけど総合面では四分の一人前ってところかしら」


まだ半人前にも満たないのかと思ったが、割と高い評価は得ているのだなと康太は眉を顰める。てっきり十分の一人前くらいは言われると思っていただけにこの評価の高さは結構うれしいところだった。


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