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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十四話「世代交代と新参者」

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選挙

自分の師匠たちがそんな生活をしているとも知らず、康太は昼食時にいつも通り文と一緒に屋上にやってきていた。


今回は呼び出されたというわけではなく、魔術師として相談しなければいけないことがあったからである。


「さて・・・どうしたもんかしらね」


「といっても俺らにできることなんてないんじゃないのか?実際何ができるわけでもないんだしさ」


「そりゃそうなんだけど・・・これからどうするかってことが重要なのよ・・・立場的には変わらないけどパワーバランスとしては結構崩れるし」


「それこそ知ったこっちゃないだろ。今のままでも何も変わらないし、何よりここに来る連中がこれ以上いるとも思えないしな」


まぁそれはそうなんだけどと文は自分と康太の前においてあるプリントに目を向ける。


そこには生徒会長の選挙に関する内容が記されていた。


そう、康太たちの通う三鳥高校では、次の生徒会長を決めるための選挙があるのである。


三年生が請け負っている仕事のほとんどはすでに引継ぎが完了し、ほとんどの部活は大会が終わり三年生たちは事実上の引退となる。その契機として次の世代に学校の仕事をすべて託すという意味で十月にはこうして生徒会長を決める選挙を行うのだ。


といっても、康太と文が気にしているのは選挙の内容ではない。正直に言って選挙など勝手にやってもなるべきものがなるのだ。なにせもともと生徒会に入っていた副生徒会長や書記、会計といった役員がまだ二年生一年生として残っている。その中からそれぞれ役員を決めていくだけのある意味ただの作業でしかない。


その作業をあえてやらせるというのはこれから大人になっていくうえで選挙というものを形だけでも示し、なおかつ体験させるのが目的だろう。


実際これから大人になって選挙権を得ることができれば、実際に政治を行う人間を選ぶ選挙に参加することができる。


一人の票などいったいどれほどの効果があるのかと聞かれれば、確かに首をかしげてしまうところだがそれでは何も変わらない。


自分たちで考えて参加しなければ何も変わらないのだ。参加もしないで文句を言うのはお門違いというものである。


学生の段階でそういうことを教える意味でも、こういった選挙は必要なのだろう。だが今回康太たちが悩んでいたのはそのことではなかった。


以前から話を通されてはいたが、この選挙を機に三年生たちが事実上引退してしまうことになる。


それは部活や生徒会や委員会だけではなく、魔術師としてもなのだ。


実際に魔術師を引退するということではなく、この高校の同盟を脱退し、大学入試のための勉強に専念するために高校に在籍している間は魔術師としての活動を一時的に休止させるということなのである。


つまり三鳥高校の魔術師同盟から二人の三年生魔術師が抜け、二年生三人、一年生二人という構成に変わるわけである。


選挙が迫った今、康太たちは残った自分たちでこの三鳥高校の魔術師同盟を支えていかなければいけないわけなのだが、残ったのがパワーバランスという問題だった。


以前三年生の魔術師には現状維持の回答を出したが、実際このままでは魔術師同盟におけるパワーバランスは大きく崩れることになる。


現在派閥としては三年生が二人いたためにその二人につく形でそれぞれ二年生が二人と一人に分かれて所属、そして康太たち一年生がそれとはまったくかかわらないみつどもえに近い形で派閥を形成していた。


だが三年生が抜けることで二年生は二人と一人、そして康太と文の一年生派閥という三つの状態に分かれるのだ。


まだ二年生二人のところはいいのだが、一人残された派閥の魔術師は明らかに周りと比べると戦力で劣っている。


互いに牽制しあうことで問題が起きないようにするというのがこの魔術師同盟における派閥作成の目的でもある。


そう考えるとパワーバランスが崩れている今その意味が失われかけているのもれっきとした事実なのだ。


実際魔術師としての実力、実績面では康太と文が頭一つ二つほど抜きんでているといったところである。


これは康太が持ち前のトラブルを引き寄せる体質のせいで面倒なことに首を突っ込み続けた結果でもある。戦闘力に関しては普段の訓練によるものが多いだろう。普通の魔術師は学生の段階でそこまで戦闘訓練を行わないのかもしれない。


実際に戦ったことがないためになんとも言えないが、少なくとも康太と文が一緒になって戦えば大抵の魔術師には負けないだろうということは予想できていた。


そんな状態でパワーバランスを維持しようと思ったら、康太と文を別々の派閥にするしかない。だが康太がデブリス・クラリスの弟子ということもあって康太が他の派閥に行くのは難しいだろう。何せその存在からして敬遠されているのだから。


「いっそのことさ、一度派閥全部つぶして一つにまとめたほうが早いんじゃないかって気がするよ。誰かに頭やってもらってそいつが全部収めるって感じで」


「まぁ確かに力関係としてはそのほうがいいのかもしれないけど・・・そんなの誰がやるのよ。先輩の中でだれがましだとか把握してないわよ?」


「そんなのお前がやればいいじゃんか。少なくとも実力はあるんだしさ」


思わぬ康太の意見に文は目を丸くしてしまっていた。


確かにこの魔術師同盟の中で文はおそらく一二を争うほどの実力と才能を持っているだろう。そう考えると同盟のトップを張っていてもおかしくはないのだが、年功序列ということを考えるとそれは難しいのではないかと思えてしまう。


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