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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十三話「救いを与えるのは生か死か」

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脱出方法

「これで考えを変えてくれればよかったのですが・・・残念です。しばらくの間あなたはここにいてもらいます。助けは来ないものと思ってください、それではまた」


この場から神父がいなくなっても、康太の拘束と激痛は変わらなかった。どうやら神父が言っていたように、神父自身が操作しているわけではないらしい。


康太は痛みによってかき乱される思考を何とか束ねて索敵の魔術を発動する。


この地下空間の頭上には康太たちが昼間に立ち寄っていた教会がある。康太の使うような近距離の索敵でも把握できているのだ。もし文などまともに索敵ができる魔術師がいれば問題なく見つけることができるはずだ。


だが気になっているのはこの空間が今まで見つかっていないという点である。


事件が起こった段階である程度この周りの建物は調べただろう。その段階でこの教会そのものを調べることがなかったとしても、教会周辺の建物を調べる過程で地下空間に気付かなかったものがいないとは思えなかった。


どのような仕掛けがしてあるのか康太には理解できないが、おそらく索敵に反応しないような仕掛けがあるのかもしれない。


アリスも周りの人間の索敵に引っかからないような仕掛けを何か施していた節がある。そのため上にいる誰かが気づいてくれる可能性は低いと康太は見積もっていた。


たとえ文が康太を探しに来たとしても、上にいる神父の変調に気付けない限りは康太を見つけ出すことはありえないだろう。


ともなれば康太が自分で何とかしなければならない。


「・・・つぅ・・・!」


とはいえ、康太の体の中に侵入したこの魔術を何とかしなければまともな行動はとれないだろう。


壁に打ち付けられているうえに、体の内部から拘束されているために無理に体を動かそうとすれば体全体が使い物にならない可能性がある。


とにかく何とかしなければ、康太は視界の中に入っている赤い液体を視界に収めると術式解析の魔術を発動した。


この液体の魔術がどのようなものであるかを把握するつもりはない。康太が把握しようとしているのはこの液体の魔術を解析できるかどうかということである。


魔術を発動するには術式が必要だ。その術式にいくつもの情報や設定を組み込むことでありとあらゆる魔術に変えることができる。


そんな中で術を発動するための術式に魔力を流し込むことで術は発動するのだが、この術式がこの液体そのものにあるかを確認しようとしたのである。


あの神父は意志を持った魔術だといった。康太も同じようなものを有しているためにその理屈は何となくわかっている。


デビットの有するDの慟哭。これは黒い瘴気を発生させ、特定の人物に浸透させることで相手から魔力を奪う。その時に魔術の末端ともいえる術式が一緒に飛んでいて、攻撃を受けた対象の体内にある魔力を動力源にすることでさらに活動することができる。


伝染病の性質を持っているだけに、増えれば増えるほどその危険度は上がっていく魔術なのである。


だがこの液体の魔術がどのような構造で成り立っているのか康太は知らないのだ。


魔術の術式の核とでもいうべきものがあれば話は早かったかもしれない。完全に独立した魔術であったならまだやりようはあった。


だがまず間違いなくそれはない。あの神父は自分の意志である程度は操れるといっていた。あくまでこの魔術が行っているのはその指示に対する補助などだ。


要するに自分の頭だけで動かすのではなく、外部に操作における処理をこなせるだけの外付けCPUを取り付けたような状態なのだ。


あくまで操作権限を握っているのはあの神父だろう。だがそれを承知で康太は術式解析を行った。


結果的に言えば、この液体の中にも一応術式が存在していた。どうやら操作自体の術式は別にあるようで、この液体の中にある術式は統合された意識によってこの液体を変化させるというものであるらしい。


単純に動くだけならばこの液体の中にある術式だけで事足りるのだ。自動で勝手に動かないように、神父の方からある程度の遠隔操作ができるような術式を外付けした形になっているのだろう。


どちらが先だったのかはさておき、勝手に動き出すことがないというのは康太にとっては僥倖だった。


少なくとも神父がこちらに来ない限り、あるいは彼の気が変わらない限り康太が殺されるということはなさそうだった。


小百合のように術式破壊の技術を有していたのならこの状況をすぐにでも脱することができたのかもしれないが、生憎康太はまだその技術を教わっていなかった。


もっと早い段階で教わっていればよかったと思うが、術式破壊の技術は真理もまだ覚えていないような節があった。


兄弟子でさえ覚えていないものを自分が覚えられるはずがないと半ばあきらめながらもこの状況をどうしたものかと康太は悩んでいた。


壁に打ち付けられているとはいえ相変わらず体はこの液体に包まれたままだ。壁に対して蓄積の魔術を使って思い切り破壊してもいいが、この地下空間が崩れた時自分がどうなるかも考えなければならない。


小石や岩程度であれば防ぐことはできるが、地盤そのものが落ちてきた場合間違いなく康太も死ぬだろう。そんな間抜けな状態にはなりたくない。さてどうしたものかと悩む中、康太は先ほどから自分の中にいるデビットが何やらざわめいていることに気が付いた。


何かをしているのは間違いない。だがそれが何なのか、康太はわからなかった。


今までのざわめきとは違う。何か普段とは違うことをデビットがやろうとしている。そのことに気付いた時には、康太の体の中の違和感はさらに強くなっていた。


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