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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十二話「アリスインジャパン」

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今更ながらの

「フェン・トゥーカ・・・フェン・トゥーカ・・・どこかで聞いたことがある名前なんだけどなぁ・・・本部の魔術師だっていうのは間違いないのかい?」


「はい、しっかりとそういってました」


せっかく支部長の話題が出たということで康太たちはとりあえず日本支部支部長のもとへと向かっていた。

こんな夜遅くだというのに普通に支部にいる彼はいったいいつ休んでいるのだろうかと気になってしまうが、そのあたりは支部長として仕事があるから仕方がないというものなのだろう。


「んー・・・向こうが情報を先に流したのであればこっちもいろいろ文句は言えそうだけど・・・あくまで個人間となるとなぁ・・・一応その魔術師についてはこっちでも調べておくよ」


「お願いします、俺らもできる限り情報を集めようと思ってます」


フェン・トゥーカが個人的に情報を流したというのであれば話は単純だ。本人のところに行って実力行使でやめさせればいいだけのこと。


だがその人物が所属している派閥によっては面倒なことになるだろう。そもそも康太は本部にどのような派閥があるのか理解していない。


「今のところ本部ってどういう力関係なんですか?派閥とかそういう意味で」


「えっとね・・・今のところ本部長派、副本部長派は明確に分かれてるね。二大勢力といってもいいくらいだよ。現場指揮をしてるベティテアはぶっちゃけそういうのに興味がないらしくて、魔術師たちからの信頼は厚いけど基本フリーかな」


以前あったことのある三人の魔術師、本部長、副本部長、そして専属魔術師の統括を行っているベティテア。この三人はかなりわかりやすい立ち位置になっているらしい。


本部長と副本部長が互いに対立しているというわけではないだろうが、いろいろと方針などの違いもあるのだろう。


長い物には巻かれろという感じなのだろうか、どちらにせよこの二人が違う派閥だということと、ベティテアがフリーだというのはかなり大きな情報だ。


「あとは道具とか人事管理のベレー・ラクルー、ローラローは比較的どの派閥にも中立的かな・・・まぁ管理っていう立場上当然だと思うけどね」


「大きな派閥は本部長派と副本部長派だけってことですか?」


「そうだね。二大派閥って言われるくらいには。でもほかにも一応派閥はあるよ。本部には支部からスカウトされた人たちもいるからね。国同士で派閥っていうかグループ作ってたり、あとは得意な魔術を使うもの同士でチーム作ってたり・・・」


「本部でも結構いろいろあるんですね」


「まぁ人数が多いから一枚岩ってことはないだろうね。でも人が多い分、割と自分の所属をはっきりさせてるから調べるのは比較的楽だと思うよ」


人数が多いから敵と味方をはっきりとしているというと聞こえは悪いが、ある程度線引きをしておいたほうが大人数の本部としては運営自体はしやすいのだろう。


だがその人数の多さが今はありがたかった。どの派閥に属しているかがわかれば少なくともどういった思惑を持っているのかは把握しやすくなる。


といっても康太が封印指定百七十二号をその身に宿していることを知っているのは本部の中でも割と限られている。


康太としては本部長、副本部長の二大派閥のどちらかなのではないかと考えていた。


専属魔術師統括のベティテアならこういった回りくどいことはしないだろう。むしろ何かあったら直接呼び出すくらいのことはやりそうである。


管理部門の二人に関してはこういったことはむしろできないのではないかと思えた。間接的にでもよその支部にいる魔術師にちょっかいを出すというのは中立の立場を維持する側としては良い行動ではない。


他の派閥ではそもそも康太の情報を仕入れられたかどうかも怪しい。そもそも康太が封印指定百七十二号をその身に宿したことを知っているのは直接かかわり、なおかつ本部から康太とともに同行した専属魔術師数名、そして本部上層部、日本支部支部長、そして康太の周りの数人くらいだったのだ。


この中で容疑者を上げるとすれば本部長か副本部長の派閥のどちらかになってしまうのである。


もしこの予想が当たっていたとしても面倒なことになることは変わりないのだが。


「そういえば支部長、話は変わるんですけど支部長の術師名ってなんですか?」


「・・・あれ?ひょっとして知らなかった?」


「はい、今までずっと支部長としか聞いてなくて」


すでに支部長と出会ってから半年以上。康太が魔術師として登録した時からの割と長い付き合いだというのに知らなかったという事実に、そして知られていなかったという事実に支部長は少しだけショックを受けているようだった。


おそらくすでに知っているものとばかり思っていたのだろう。


「そっかぁ・・・そういえばあったときはいきなり試験やっちゃったから自己紹介ちゃんとやってなかったっけ」


「そうですね、師匠に連れてこられていきなりだったので」


康太と支部長が初めて会ったのは康太が魔術師として登録するための試験を受けるときだった。


そのとき分解の魔術を披露したのを今でも覚えている。あの時のお粗末な発動と比べると今の康太は随分魔術師らしくなったと思うべきだろう。


「それじゃあ改めて。日本支部支部長を務めている『セルザース』だ。知り合いからはセルって呼ばれてるよ。まぁみんなはいつも通り支部長で構わないよ」


改めて知った支部長の術師名を康太はしっかりと覚えながら今まで覚えていなかった、というか知らなかった非礼を詫びた。自己紹介してなかったこっちが悪いよと逆に謝られたが、改めて名前というのは大事だなと実感した康太であった。


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