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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十二話「アリスインジャパン」

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相手の目的

康太が自己紹介をしたところで目の前にいた魔術師三人はほんのわずかにではあるが警戒態勢に入っていた。


デブリス・クラリスの弟子。その情報はすでに知っていたが改めてこうして目の前で見るとその威圧感はなかなかのものだったからだ。


何度も実戦を経験し、高い戦闘能力を持つ彼女の弟子として普段から訓練を強いられているだろう康太を目の前にしてほんのわずかにではあるが気おくれした感もあるのだろう。


だが目の前にいる男の魔術師は全く動じていないようだった。


文の言うように落ち着いている。確かにこの男が彼らの中でもかなり上層部に位置するのは間違いないだろう。


「ブライトビー、話は聞いているようだから単刀直入に言おう。我々の仲間にならないか?待遇に関しては保証しよう」


全く前提条件も話さずに事情も説明せずにいきなり仲間になれといってくるのはこの人物が単に大物だからか、それとも話さずともすでに知っているレベルの組織だと思っているのか、どちらにせよ交渉の前段階すら満たせていない。小百合がこの場にいたら即刻論外の通知を出すだろう。


「あなたたちのことを全く知らないのに仲間になれと?そんなもの断るに決まっているだろう。もう少し考えてものを言え」


目の前の男に対しても挑発的、攻撃的な物言いにその周りにいた三人は若干ではあるが康太に向ける敵意を強くした。だが眼前の男は全く動じていないようだった。


むしろ康太の言うことのほうが理に適っていると感じたのか、確かにその通りだなとつぶやきながら小さくうなずく。


「君の言うことももっともだ。気が急いて順序を飛ばしてしまっていたな。ではまず我々のことについて話そう。私は『ブギー・ホッパー』後ろにいるのは私の部下たちだ」


ブギー・ホッパーと名乗った魔術師は後ろに待機している三人の魔術師のほうに一瞬視線を向ける。


やはりこの男がこの四人の中では一番上の人間らしい。もしかしたら件のグループの中でもトップに位置する存在かもしれない。


「我々は関東南部で主に活動している魔術師のグループだ。所属している魔術師は五十八名。魔術協会の中でもそれなりの規模だと自負している」


五十八名が所属する魔術師同盟。確かに康太たちが所属する三鳥高校の魔術師同盟のそれに比べれば単純に見比べてもその総数は八倍以上。だがそれが協会全体の魔術師グループの中でどれほどの規模なのかは判断できなかった。


何せ康太は派閥というものにまったく興味がない。別にどの勢力が強いからという理由で誰かにつくということはありえなかった。


「我々は関東南部での治安を守ると同時に周囲の魔術師への牽制をしながら自身の魔術の研究や同盟内での鍛錬にいそしんでいる。君はまだ駆け出しの魔術師のようだし競い合う仲間は多いほうがいいだろうと思ってこうして誘いに来たわけだ」


「・・・なるほど、それが建前か・・・で?本音は?」


「・・・なに?」


「俺を誘おうとしたのがただの親切心なんてことはないだろ。そもそもなぜ俺を誘おうと思った?誘うというなら同じ駆け出しでエアリス・ロゥの弟子のライリーベルでも構わなかったはずだぞ?」


もし相手の言うように駆け出しの魔術師を誘いに来ているというのであれば康太と同時期に本格的に魔術師として活動しだした文もまた誘う対象となるだろう。


なのに目の前の魔術師は康太だけを誘っている。それがどういう意味なのか分からないほど康太はバカではない。


「・・・君は何が聞きたい?」


「簡単だ、あんたらが俺を誘ったその理由を知りたい。その内容によっちゃその話考えなくもない」


そちらが正直に話せばこちらもそれなりに譲歩して対応するともとれる発言に気を良くしたのか、ブギーは大きく手を広げながら仮面越しでもわかるほどに目を見開いた。


「君の持つ魔術に興味がある。君が持つ封印指定の力、それを我々で研究して広めようというのだ。本部でさえ手が出せなかった力があれば我々の勢力は一気に力を増すだろう。君にはその中核となってほしいんだ」


その言葉を聞いた瞬間、康太の次の行動は決まった。自分の中にいるデビットの残滓がざわめくのを感じながら、その内面から怒りが湧き出てくるのを感じながらなんとかそれを抑え感情が波立たないように平静を保った。


「封印指定っていうと・・・百七十二号の話か?あんな危ないもんに手を出してどうするんだか」


「危険だからこそ価値がある。魔力を吸い取るだけでどれだけのアドバンテージが握れるか君ならわかるだろう?何せその力を一部とはいえ使えているのだから」


「・・・その話は一応情報規制がされてるはずなんだけどな・・・その話誰から聞いたんだ?」


全くしょうがない奴がいるもんだなという風に、さしたる問題ではないかのような体で話を進めているが内心気が気でなかった。


やはり情報を流したやつがいる。意図的に康太のその体に宿った封印指定百七十二号のことを広めた輩がいる。


これは突き止めなければならない。どんな手を使ってでも。


「残念だがそれは答えられない。向こうとしてもリスクを払って教えてくれた。私の個人的な知り合いでね」


「そうか・・・なら話は早い」


努めて冷静であろうとし、なおかつ明るい声を出したことで後ろにいた三人も交渉は成功したのだと勘違いし警戒を緩めた。そしてさらに交渉を続けようとブギーは何度もうなずいて手を差し伸べる。


「君としても悪い話ではないだろう、何せその魔術の本来の力を扱えるようになるかもしれない。それに我々としても君への見返りも用意して」


「お前はもうしゃべるな」


次の瞬間、康太の体の中から大量の黒い瘴気が噴き出し周囲を包んでいく。完全に不意を突かれた魔術師四人はその黒い瘴気の中に飲まれていく。


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