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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十二話「アリスインジャパン」

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招かれざる客人

文がそのように先輩魔術師たちに連絡を取っていると、彼女が張っていた索敵に反応がある。


周囲に点在している先輩魔術師ではない。文化祭で出入りしている一般人でもない。魔力を持ったれっきとした魔術師の反応だ。


文がわずかに警戒の色を見せたことで康太もそれを察したのかため息をつきながらゆっくりと立ち上がる。


「ゲスト様のご登場か?」


「そうね・・・数は四・・・昼間に来た数より増えてるわね」


「方角は?」


「正門から堂々と。悪いことはしてないっていうつもりなんでしょうね。まぁそれはそれでありがたいけど」


向こうからすればただたんに康太を、ブライトビーを自分たちの勢力に加えようとしているだけの話だ。

戦闘をするつもりがない、話し合いがメインである以上裏をかいても仕方がない。


正門から堂々とやってくることでこちらには戦闘の意志がないということを知らしめているのだ。


康太は文に言われた方角に自らも索敵の魔術を発動する。といっても最大まで張ってもぎりぎり届くか届かないかというところだ。相手が正門を通過してしばらくした時に康太はその四人の魔術師を索敵内に収めることができる。


仮面をつけた男と女が合計四人。その姿形を覚えていた康太は彼らの中に昼間に来た魔術師が二名含まれていることに気付けた。


「・・・二人は昼間に会った魔術師で間違いないな・・・残りの二人は・・・男と女か・・・男女二人ずつ・・・」


「昼間に来たのは下っ端と少し上の立場の奴、今度は結構上層部が来たってところじゃない?魔力もそれなりにあるし、何より落ち着いてる感じね」


素質だけで個人の実力を判断するのは早計だが、文の言う落ち着いた感じというのを康太も感じ取っていた。


特にもう一人の男のほう。ほかの魔術師が周囲を警戒して視線を動かし続けているのに対してこの男だけは視線を動かさなかった。


何があっても対応できるというつもりなのか、それともこの男にとって自分たちのような魔術師は警戒するに値しないということだろうか。


もっともその考えも決して間違ったものとは言えない。魔術師としての活動をしてきた康太にとって、この三鳥高校の魔術師同盟に所属する先輩魔術師たちは実戦をほとんど知らないひよこ同然。一人前の魔術師ならばその程度の魔術師は警戒するにも値しないような者たちであるのだ。


「どうする?ファーストコンタクトは私がやろうか?」


「いや、俺が行くよ。俺の客だからな」


康太はそう言って屋上の扉を開けて階段でゆっくりと一階まで降りていく。途中で先輩魔術師たちの視線もこちらに向けられたのがわかる。


どうやら向こうもそれなりに注意してこちらを観察しているようだった。


観察よりも今は徹底して周囲に点在する一般人への対応をしてほしいのだがと康太は内心ため息をつく。


康太が一階にたどり着き、ゆっくりと正門までの道を歩くとそこに四人の魔術師は並んで待っていた。


おそらく向こうも康太がやってくることを知っていたのだろう。あえて向かうことはせず、こちらの領土を侵すことなくただ待つ。交渉をするものとしては正しい判断なのかもわからない。


「ようこそ三鳥高校へ。ですが皆様のような方々は招かれてはいないはず、早々におかえりください」


最初の挨拶からさっさと帰れという言葉を放つが、康太からすればここで帰ってもらうのは内心面倒なことになる。


ここで逃がして三鳥高校を出てから仕掛けてもいいが、それはそれで一般人への対応が面倒なことになる。

せっかくこちらは一応ホームなのだ。その利点を生かさない手はない。


「我々も争いに来たのではないよ。交渉しに来たんだ。とある魔術師を我々の仲間にしたくてね・・・」


「・・・昼間もどうやら似たような輩が来ていたようですが・・・まぁ公衆の面前でなかなかの無様をさらしていたのを見ていましたが、そのようなものがいるチームに一体だれを誘おうと?」


無様をさらしていたという発言に昼間来ていた男が若干いらだつのを康太は感じ取っていた。


こちらにわずかではあるが殺気が向けられたのだ。だが弱い、まだほんのわずかにいらだっているだけの話だ。


「君も知っていると思うが。ここにはブライトビーという名の魔術師がいるはずだ。彼と話をしたい・・・いや・・・ひょっとすると・・・君がそうなのかな?」


一番落ち着いた男性の魔術師は康太のほうを見ながらほんのわずかに気分を高ぶらせているようだった。

声のトーンが若干上がっている。わかりやすいがこれが演技である可能性がある以上まだ油断はできない。


だが相手がこちらの情報を求めている。話を次の段階に進めるには早々に名を名乗ったほうがいいだろう。


「お察しの通り、俺がデブリス・クラリスの二番弟子ブライトビーです。以後お見知りおきを」


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