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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十二話「アリスインジャパン」

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相手にするのは

文化祭の一日目を終え、時刻はすでに二十一時を過ぎた。暦の上では季節はもう秋に差し掛かって入るのだがまだまだ残暑が厳しい。日が暮れれば気温は徐々に下がってくるとはいえまだ蒸し暑さが残っている。


そんな中康太と文は学校の屋上の一角に陣取って周囲を警戒していた。


普段着や制服ではなく、彼らが身に着けているのは完全な魔術師としての装備だった。特に康太は外套に包まれているためにわかりにくいがあらかじめ戦闘を視野に入れた完全武装でこの場にいる。


そしてアリスはこの場にはいない。ある程度準備の段階で手伝いやアドバイスをもらった程度でそこから先は彼女はノータッチだ。


何より彼女がこの場にいてはいろいろと問題がある。ここはあくまで三鳥高校の敷地内なのだ。


三鳥高校の魔術師同盟の人間がいるのならまだわかるがそれ以外の魔術師がいてはいろいろと角が立つ。


いくらゲストといっても夜の、魔術師の時間にいるというのはそれなりにリスクを孕んでいるのである。


「さて・・・何人で来るかね」


「あの二人が見たのはあくまで戦闘の光景だけ・・・あまり人数に関しては言及してなかったものね」


戦闘が行われるということをもとより想定していたこともあり、戦いの準備と気構え自体は問題なくできている。


それよりも問題なのは相手の勢力だ。


今回やってくる相手が一体どれほどの規模なのかをある程度把握しておきたかった。


康太を仲間に引き入れる勢力が一体どれくらいの規模なのか全くわかっていないのだ。せめてそのあたりも挑発しながらさりげなく聞いておくべきだったなと康太は今更ながら後悔していた。


康太はもとより多人数との戦闘はあまり経験がない。多対多の戦闘やこちらが多数での戦い、あるいは一対一ならよくあるのだがこちらが一人で相手が複数というのはあまり経験がなかった。


今回文は康太のフォローに回ってもらうために戦闘要員としては最初からカウントしていない。


何より元から康太の問題だから文を必要以上に関わらせるつもりはなかった。


「あの時あった二人は来るだろうけど・・・問題はそれ以外の勢力だな。もし二人以外にも魔術師が来るならちょっときつくなるかもしれない」


「二人だけでもきついんじゃないの?いくらあんたが戦闘慣れしてるからってなめてかからないほうがいいわよ?」


「いや、ぶっちゃけ男のほうはそこまで近接戦の実力ないな。今日殴られて分かった、あれは近い間合いで戦い慣れてない」


「殴られて分かるもんなの?普通にあんた殴られてたけど」


「わかる。普段師匠や奏さんや幸彦さんに殴られてる俺にはわかる」


「・・・なんか悲しい理由ね・・・」


これは康太の持論だが、戦い慣れた相手の体捌きというのは逆上した状態にこそ出てくるものだ。


理性的に体を動かしているとき人間は自分が思ったように体を動かそうと努める。だからこそ冷静に物事をこなすことができる。


練習通りに体を動かすこともできるだろうし、訓練と限りなく近い形で戦うこともできるだろう。


だが逆上した状態での体の動きは自分の素直な動きが出る。要するに体に染みついていない感情的な動きになるのだ。


とにかく訓練を積んだ人間なら逆上した状態、あるいはパニックに陥った状態でもしっかりとその地力が出る。だがあの男のほうにはそれがなかった。


本当にただ殴っただけ。痛くもなければ魅入られることもない。康太がその気になれば反撃することだって簡単にできたレベルだ。


「だから男のほうが来たらそれこそ近接戦ですぐにつぶせると思う。問題は女のほうだ」


「あぁ・・・言ってたわね。あの人だけ冷静に状況を見てたんだっけ?」


「最初からあの男のほうに期待してなかった可能性もあるけど、うまく場に溶け込みながらこっちの状況を常に確認してた。たぶんあっちはベルと似たタイプだと思うんだよ」


自分と似たタイプ。そういわれて当の本人はふぅんと小さくつぶやいて目を細めた。


それがどういう意味なのか測りかねていたが康太があの女を強く警戒しているのは間違いないだろう。


「それで、私はあんたのフォローってわけね?ほかの先輩方もいるみたいだけど・・・そのあたりはどうするの?」


「あっちの人たちは全員一般人にばれないようにしててもらう。ベルは基本的には同じようにしててもらって、俺がやられそうになったらフォロー頼む」


「また難しいことを・・・常にあんたを観察してろってことね?」


「あぁ。でもぎりぎりまで我慢してくれ。今回相手をするのはあくまで俺だけのつもりだから」


向こうが康太しか相手にするつもりがないと考えている状態だからこそほかの先輩魔術師たちにも危害が加わらない状態を作れる。


それは康太と同盟を組んでいる文も同様だ。逆に言えば早い段階で手を出してしまえば文にも先輩魔術師たちにも危害が及ぶ可能性が高くなる。


そうならないために康太へのフォローは必要最低限に、そして最終段階でするべきなのだ。


こちらとしては相手から情報さえ得られてしまえばそれでいいのだから。


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