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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十二話「アリスインジャパン」

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得意分野

「私はそろそろ失礼する。今日はいろいろ楽しめたからな」


「え?もう帰っちゃうんですか?」


せっかくなのだからもう少しいたらいいのにと言いかけたが、康太はその言葉を口には出さず飲み込んだ。


奏はもともと仕事を休んできている。本人は羽休めだといっていたが、何の変哲もないただの高校の文化祭で見て回るものなど程度が知れている。


数時間いただけだがそれだけで十分すぎるほど中を見て回ったのだろう。


何よりもしかしたらまだ仕事があるのかもしれない。それかほかにも予定があるのかもしれない。


ただここにいればいいのにという無責任な言葉で奏を縛り付けるのはどうかと思ったのだ。


文もそのあたりを理解しているのか、奏を無理に引き留めようとはせず小さくうなずいていた。


「私は帰るがアリス、お前は康太たちと一緒にいるといい。今夜のことに関して最低限アドバイスはしてやれ」


「うむ、言われるまでもない。それではなカナデ、今日は楽しかったぞ」


「私もだ。康太、文、また今度」


奏はそう言って颯爽とこの場から去っていく。


康太と文は奏に礼と別れの言葉を告げてその背中を見送っていた。


「お前奏さんと一体何話してたんだ?」


「ん・・・大したことではない。私が経験したことや昔のことをちょいと話してやっただけのこと・・・まぁそれでもお前たちからすればだいぶ珍しいことのようだったがの」


アリスが経験したことや昔のことなどと軽く言ってはいるが、アリスは幼い見た目をしていても数百年、あるいは千年以上生きている魔術師だ。そんな彼女が生まれてから今までずっと経験してきた事柄というと本当に歴史的なものがいくつも含まれるだろう。


教科書に載っている事柄や、逆に載っていない事柄まで様々な知識と事象の集合体なのだから。


話を聞くだけでいろいろと現代とは異なる点があるだろう。そう考えるとアリスの昔話は聞いてみたくもあるが、日本史や世界史などの歴史があまり得意ではない康太からすると聞いてみたいような聞いてみたくないような微妙な心持だった。


「魔術の話はしなかったのか?お前の得意分野だろうに」


「失礼な、魔術の話は嫌いではないがカナデの話のほうがずっと面白かったぞ。人の上に立つだけのことはある、人心の掌握というか相手をその気にさせるのがうまいな」


「へぇ・・・アリスにそこまで言わせるなんて・・・やっぱさすが奏さんっていうべきなのかしら?」


アリスは長い年月を生きてきた中でそれこそ何百何千何万という人間に会ってきただろう。それこそ康太たちの先祖にもあったことがあるかもしれないそんなレベルの人間だ。


アリス曰く何人も弟子を持ったことがあるらしい。その関係もあってか人を見る目は十分にある。


そんな彼女が奏を高く評価したということは奏はそれだけの実力と才能を持っているということだ。


あの歳であれだけの会社を経営しているのは伊達ではないということだろう。


「うむ・・・魔術師としてのカナデの実力はまだ正確に測れてはいないが、人間的なカナデの魅力に関してはほぼ理解した。あれはなかなかの大器だの。おかげでいろいろとやってみたいことが増えた」


「趣味か?今度は何をやるんだ?」


「はっはっは。それを今言っては詰まらんだろう。今度いろいろと準備が必要だからそれまで待つといい。まぁいろいろとやりがいはありそうだ」


一体奏はアリスに何を吹き込んだのか。彼女の趣味が増えることは良いことだとは思うが、あまりぶっ飛んだことをやらなければいいのだがと康太と文は少しだけ心配になってしまっていた。


派手なことをやりすぎるとアリスに視線が集中してしまう。もしこれで彼女の本当の顔や体が誰かしらに写真でとられネットにでも上がろうものならそれこそこれから先一生彼女は本当の姿をさらしにくくなるのだ。


長く生きるというのはそれだけのデメリットも抱えているのである。それがこれから何年先のことになるかはわからないが、零ではないのは確かである。


「何でもいいけど、問題になるようなことはするなよ?ていうかお前まだ趣味増やすのかよ」


「もちろんだ。長く生きていくうえで趣味は多いほうがいい。気が向いたときにできるようなものであれば最適だの」


「そのあたりはあんたならではの考えよね・・・それだけ長く生きたいとは思えない理由の一つだわ」


長く生きるということはそれだけ長く時間を過ごすということでもある。必要になるものは多く、時間をそれだけ無為に過ごすということも出てきてしまうだろう。


そんな中で楽しみとなるのが趣味だ。それこそ時間があれば無限に行えるレベルでの大量の趣味があれば無限に時間があろうと過ごすことはできる。


長生きするというのはそれだけつらいことも多くあるだろうが、趣味の楽しさを支えにするというのも間違ってはいない。


「とりあえず私もこの文化祭はちゃんと見て回ったから満足だぞ。あとは今夜のことに関して話を詰めていくかの」


「そうだな・・・文としては何か考えあるのか?」


「まぁね。って言ってもできることなんてたかが知れてるわよ。その準備くらいね」


夜に向けての準備、あらかじめ土御門の双子によって戦闘の可能性が示唆されていただけに万全の態勢を敷いておきたいところだった。


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