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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十二話「アリスインジャパン」

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メリットデメリット

「康太、お前の心配もわからんではない。警戒しすぎるのも悪いことではないが考えすぎると逆に自分の首を絞めるぞ」


「はい・・・わかってはいるんですけど・・・」


今回康太が危惧している原因となっているのは今日やってきた魔術師たちがなぜ康太を仲間にしようとしたか、この一点に限られるのだ。


もし康太の実情を知ったうえで誘ってきたのであれば情報の出所が知りたい。だがもし仮に情報の出所などなく、ただ単に彼らが個人的に過去視の魔術でそれらを知ったのであればそれはそれで面倒なことになるだろう。


だからこそ悩んでいる。悩んでもしょうがないことなのは康太も重々承知しているが悩まざるを得ないのだ。


「確かにお前の情報を得るということは二つの封印指定に関しての情報を握るといっても過言ではない。アリスのほうはまだお前との直接的な関係が薄いとしても、件の魔術に関してはお前の中にある。神経質になるのはよくわかる」


「はい・・・俺の中に入っている以上切っても切り離せませんから」


「よく理解している。だがまだ知られた可能性というだけの話だ。ある程度条件を詰めるに越したことはない。お前の言う過去視への警戒も価値のあるものだ。だがそれにばかり目が行ってしまうのもよくない」


可能性というものは考えれば考えるほどに無限に出てくる。そのすべてを考えていては時間がいくらあっても足りないのだ。


せめてある程度相手の条件を把握、状況を設定できなければどのように考えても可能性というものは無限に出てきてしまう。


今回の場合であれば、まずは相手がどのような理由で康太を仲間にしようとしていうのかを把握するのが最優先なのだ。


「とはいえ過去視に目をつけるというのはなかなか目の付け所が違うと思うがの・・・この場に未来視を使えるものがいたのが僥倖か」


そういってアリスは近くにいた土御門の双子に目を向ける。この場で未来視を扱えるのはこの二人のみ。


もしかしたらアリスも未来視を使えるかもしれないが、康太も文もそのあたりは正確には把握していない。

むしろアリスが使えない魔術があるのかすら怪しいものである。この世界のありとあらゆる魔術を使えても不思議はないのだ。


「だがこうして思うと・・・康太のことを仲間に引き入れようとしてきたのはその二人が初めてじゃないか?今までそういう話はなかったんだろう?」


「はい。幸か不幸か俺の師匠があれなのでみんな敬遠してたんだと思います。ていうか自分から近づいてくる奴なんて敵か身内くらいでしたから」


「それもひどい話よね・・・まぁ小百合さんの評価を考えたら当然か・・・」


小百合は魔術協会の中でも腫れもの扱いされている。本人の性格とその使用する魔術や自由奔放すぎる行動基準のせいであらゆる面倒ごとをひきつけ、またあらゆる面倒を起こしてしまう。


当然それを協会としては大きく布告するようなことはしないが小百合が起こしてきたこと、また小百合によって引き寄せられたものなどは魔術師たちの間では広まっているのだ。


協会の中で小百合の扱いはもはや周知の事実となってしまっているのである。それこそ名前を聞いただけで嫌な顔をするレベルで。


だからこそ三鳥高校の同盟の中でも康太は最初厄介者扱いされていた。それを逆手にとって先輩たちから手を出されにくい状況にしたりといろいろと考えた。


そういう経緯もあって向こうのほうから歩み寄ってくるというのは正直初めての経験だった。


仲間にしたいなどと言われること自体が初めてだったので康太からすれば珍しい提案ではあったが決して驚くようなものではなかった。


康太は良くも悪くも協会での評価を上げている。どちらかというと悪い意味のほうが大きいのだがそれは康太の主観的なものであって客観的に見れば評価を上げている康太の存在はかなり目立つものになっているのだ。


人格や人脈などは一切関係なく康太の評価が上がっているのであればその個人の能力を見ても不思議はない。


もっともその解決能力は康太本人の能力だけではなく妙なところで働いた運でしかないのだが。


「小百合のマイナスのイメージを康太のプラスのイメージが上回ったということか・・・メリットとデメリットの換算ができていないようにしか思えんのだがな・・・」


「ちなみに奏さん的には俺がどのくらいの実力に達すれば仲間にしていいと思えますかね?師匠のマイナス分差し引いて」


「・・・そうだな・・・実際お前も真理も小百合の弟子ではあるが、小百合に比べるとおとなしい。そう考えれば仲間にする条件を満たしていなくもないが・・・お前を仲間にするということはつまり小百合とのつながりができるということでもある。そこがネックだ」


康太や真理個人の実力や人格を見れば仲間にしても問題ないだけの実力には達している。だが文やアリスがそうであるように康太を仲間にするということは自動的にその師匠である小百合が一緒についてくるようなものなのだ。


トラブルメーカーの小百合がセットでついてくるような圧倒的マイナスを抱えた康太を仲間にしようとするからにはそれなりの理由がある。


「つまり、今回の奴らはそれだけの理由があると」


「そう考えていいだろうな。背後関係を洗っておく必要がありそうだ・・・そのあたりは私がなんとかしておこう。次に接触したら術師名を必ず聞いておけ」


「いいんですか?ご迷惑では・・・?」


「子供がいらん気を回すな。こういうのは慣れたものがやればいいだけのことだ」


奏は大人の余裕を見せながら文化祭が行われている学校内に目を向けた。久しぶりにやってきた高校という場所に懐かしさを覚えているのだろう。


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