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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十二話「アリスインジャパン」

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自己紹介それぞれ

とりあえず康太は文に土御門の双子を紹介するべく一度元いた場所に戻ってきていた。


康太はすでにこの双子の事を知っているが、文はこの双子のことを知らないのだ。


一応以前京都に行ったときの話を大まかにではあるが伝えてあるため紹介すればすぐに警戒を解いてくれるだろう。


「というわけで遊びにやってきたらしい前話した土御門の双子だ。二人とも御挨拶」


「初めまして。土御門晴です。よろしくお願いします」


「初めまして。土御門明です。よろしくお願いします」


二人ともほとんど同じ挨拶をしたところで文は二人に笑みを浮かべてからすぐに康太の方に視線を向けると眉間にしわを寄せた。


「で?その土御門の二人が何でいるのよ。前に厄介ごとの種になってた子たちよね?」


「いやそうなんだけどさ、なんか俺らの学校で学園祭やるってのを聞きつけたらしくて遊びに来たんだと」


「・・・京都からここまで・・・中学生が来られるってことは門を使ったのね・・・ったく面倒なことを・・・ていうかあんた気付きなさいよ知り合いが来たんなら」


「気付けるかよ、俺の索敵まだいろいろダメなところ多いのに」


いくら知り合いとはいえ康太は索敵の魔術を覚えてからまだ日が浅い。得られる情報もそうだがその精度もまだあまり高いとは言えないのだ。


その為今のところ得られる情報は細部があいまいなところが多く、個人の判別をするのは困難を極める。


それにこれだけの人がいる中でこの二人のことを来たとたんに瞬時に理解できるとは思えなかった。

そのあたりは索敵魔術に慣れていない康太らしいミスだと言える。


「ところで二人は一度空っぽにしてから来たのよね?どのタイミングで来たの?」


「えと・・・一度索敵が乱れるタイミングがあるのがわかったんでそのタイミングで入りました」


「その後は空っぽの状態で動いてたんですけど、かき回せって言われてたんでちょっと悪戯しました」


「・・・あぁなるほど、予知か・・・京都の人間らしいわね」


京都の魔術師はよく予知魔術を多用する。そしてこの二人も予知の魔術を使用したらしい。


ほんの一瞬ではあるが文の索敵が乱れるタイミングを予知によって把握し、そのタイミングに人混みに紛れて校内に侵入したのだろう。


情報戦において未来の情報を知ることができる予知の魔術はかなり有用だ。可能なら覚えたいくらいだが残念ながら予知の魔術の術式は文も知らないのである。


教えてほしいくらいだがこの場はそんな話をしている場合ではないだろう。


「ていうか文、お前も自己紹介しろって」


「はいはい・・・初めまして二人とも。私は鐘子文、こいつと同盟を組んでるわ。まだ未熟だけど未熟なりに頑張ってるところよ」


どの口が言うのかと康太は言いたくなるが、文は自分の評価をやや低めにしている。


自分はまだ実戦ではまともな戦果を挙げていない。それに引き換え康太は未熟ではありながらもがむしゃらに多大な戦果を出すまでに至っている。


この二人の差は大きい。だが徐々にではあるがその差は縮まっているのだ。


文もまたがむしゃらに努力して少しずつ実践にも耐えられるように訓練を積んでいる。その努力が実を結ぶまであとどれほどの時間がかかるかはわからないが、それは決して遠い未来の話ではないだろう。


「あの・・・鐘子先輩は八篠先輩と一緒に行動することって多いんすか?」


「ん・・・まぁね。こいつが師弟関係の行動でない限りはほとんど一緒に行動してるわ」


「じゃあ鐘子先輩も実戦はもう経験したんですか?」


「・・・私の場合はこいつのフォローって形で経験しただけの話よ。聞いてるかわからないけどこいつ結構いろいろと抜けてるから。だからこいつ程実戦経験はないわ」


嘘を言うつもりはなく、事実だけを淡々と述べる彼女だが、康太ができないことを率先してやり続けた文の功績は大きい。


康太が派手に行動してもその分文が上手く隠蔽すれば問題なくそのまま日常が続いていくのだ。彼女が居なければ面倒なことになっていたことは多々ある。


「二人はまだ実戦経験してないの?」


「はい・・・親とか親戚とかが許してくれなくて・・・」


「早めにそう言うのは経験しておいた方がいいと思うんですけど・・・」


文と同じか、それ以上に大切に蝶よ花よと育てられた温室育ちのエリート。土御門という歴史ある魔術師の家系に生まれた天才。


文としてはどこかしら親近感を覚えていた。まるで康太に会うまでの自分のようだと。


生まれた環境の違いはあれど実戦を経験せず、自分の実力がどれほどのものなのか、そして実戦がどのようなものなのか理解できていない。


「二人は実戦を見たことはある?」


「はい、八篠先輩たちが戦っとるところを一度見ただけっす」


「・・・その印象は?」


「・・・めっちゃ泥臭かったです」


晴の言葉に明も首を縦に振って同意する。その意見は正しいと文は感じていた。


康太の戦いは基本泥臭い。もとより普通の魔術師戦ではないために今まで魔術の練習だけをしてきた人種からすればあれが魔術師の戦いであるとすら認めたくないほどの戦い方なのだ。


だがそれこそが戦いの本質であり、魔術師という存在であろうとなかろうと戦いにおいて勝利こそ全てであるという鉄則を証明しているものでもある。


「その考え方は間違ってないわ。でも実際に実戦を経験するとどんな方法でも止めなきゃいけない奴ってのは存在してるから、泥臭くても卑怯でも勝利を優先しなきゃいけない」


状況を読んで正しい選択をする。勝利に最も近づける選択をする。


魔術の存在が露見してしまうような大きな事件を誰かが引き起こそうとしているなら、他の魔術師は全力を持って止めなければならない。


たとえそれが卑怯でも泥臭くても勝利しなければならない。文は実戦の中で康太を見てそれを学んでいた。


「綺麗な魔術師として生きたいならこいつの生き方は真似しない方がいいわね。特にあなたたちは土御門の人間でしょ?仲良くする奴は選んだ方がいいわよ?」


「なんだよそれ。人をダメなやつみたいな言い方して。その理屈だとお前はどうなんだよ」


「間違ってないでしょうが。それに私は見た目より実を取る主義なの。あんたと一緒にいたほうが強くなれるって確信があるんだから」


自信ありげな笑みを浮かべる文に康太はそれ以上何も言えなくなってしまった。綺麗な魔術師として生きたい。康太と出会う前の文ならばそう考えていたかもしれない。


美しく可憐で、見る人を魅了するようなそんな魔術師。文が目指していたものは彼女の師匠である春奈のそれに近いものだっただろう。


だが康太と出会い、それを目指すにはまず自分自身の実力を高めなければいけないと知った。


綺麗な花を咲かせるには、まず土を耕さなければいけない。それは何もかもが汚れる段階の話だ。


文は将来綺麗な魔術師になるために今苦労しているのだ。下積み時代と言えばいいだろうか。今の文はその途上にいるのである。


「ていうか康太、あんた索敵切ってるでしょ。話してる間もできるように訓練しなさい」


「う・・・何でわかった」


「そりゃ妙にすっきりした顔してれば分かるわよ。話してる間に切ってたわね。訓練も兼ねてるんだからこういうところで練習しなさい」


「はい、わかりました」


康太のことを容易に従えている文を見て、土御門の二人はほんのわずかにではあるが目を丸くしていた。


元より康太はそこまで強烈に我が強いタイプではないが、それでもあれだけの実力を有している人間を易々と従えるというのは二人には想像できなかったのである。


「あの、お二人は同盟を組んでるんですよね?」


「えぇそうよ。ほぼ対等だけどね」


「ほぼってことは多少上下があるってことですか?」


「えぇ。この高校にも魔術師の同盟があるんだけど、そこの連絡体制の関係で一応私の方が序列は上ってことにしてるわ。実際の戦闘能力ではこいつの方が上だけどね」


「いやお前この前の戦い見てるともう無理だよ。もうお前に勝てる気しないもん俺」


やってみないとわからないでしょうがと文は言うが、つい先日の文と章晴の戦いを見ていると康太はもう二度と文には勝てないのではないかという考えを強くしていた。


もちろん康太もそれなりに強くはなってきている。文が実力をつける分康太もまた実力をつけているのだ。

だがそれを鑑みても両者の間にある差は大きく開いたように思えるのだ。


康太は文を高く評価し、文は康太を高く評価している。


相手の方が自分よりも上であると互いに思っているのだ。なにせ互いに自分がもっていないものを多く持っている。だからこそ相手に少しでも近づこうと互いに努力し続けてているのだ。


魔術師として欠陥のある康太は少しでもまともな魔術師になろうと遠距離攻撃や索敵などを学び、魔術師としての戦闘能力に欠ける文は少しでも戦闘能力を高めようと自らの危険を顧みない魔術を覚えつつある。


互いに意識し合い、互いに競争し合っているからこそこの二人の成長速度は周りの魔術師とは一線を画す。

康太の実力を知っている土御門の双子としては、康太が自分よりも上と判断する鐘子文という人物のことを注視していた。


「あの・・・鐘子先輩は八篠先輩とどういう風に出会ったんですか?」


「ん?私は最初こいつと戦ったのよ。この学校に入って学校内での序列を決めるために。んで負けたわけ」


「でも魔術師としてはかなり優秀なんだわ。俺の場合完全に不意打ちとかそう言うのオンパレードでギリギリの勝利」


「どんな方法を使っても負けは負けよ・・・それから私になくてこいつにあるものを見つけるためにこいつのお師匠様の所にいろいろ学びに行ってるわけ」


「・・・師匠って・・・小百合さんですか」


知ってるなら話は早いわねと文は校門の方に目を向ける。こうしている間にも文は索敵の魔術で周囲の確認を怠っていなかった。特に正門と裏門の索敵は常に張り巡らしている。仮に魔力を有した魔術師が通ったらすぐにわかる。


侵入するという形式上魔力を抜いてくる可能性があるが、アリスがいるのであればその可能性は限りなく低い。


なにせ彼女は常に変装の魔術を使っているのだ。体内にある魔術を偽装でもできない限りはこちらの探知に引っかかると思っていた。


「今回私たちが待ってる二人のうちの一人はその小百合さんの兄弟子なのよ。私達もよくお世話に・・・」


そこまで言いかけて文はある可能性に気付く。それが非常に危険な結果につながるということに気付くと顔面蒼白になった。


土曜日なので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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