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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十二話「アリスインジャパン」

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その変化

康太と文がそんなことを考えながら校内を回っていると、康太は不意に妙な違和感を覚えていた。


なんというか、人の流れが妙なのだ。普通人間がこれだけいれば当然ではあるがいろんな方向に行こうとする人間がいてしかるべきだ。こういった祭りであればあらゆる場所に足を運ぼうとするのが自然な考えだ。なにせあらゆる場所に見る場所があるのだから。


だが康太が察知していた索敵の魔術では人の行き交う場所がある程度限られてしまっているように思えた。


具体的に言えば一部だけ人の往来が少なかったりしているのだ。そこに店や出し物がないというのなら納得できる話なのだがその場所にも普通に出店はある。だというのにその場所に人があまり来ていないのだ。


「なぁ文、なんか変じゃないか?」


「人の動きにむらがあるって話?それとも人の意識が逸らされてるって話?」


どうやら文も同様の違和感は覚えていたようだ。本当に少しずつではあるが人が少なくなるように調整をかけられているかのような動きをしている。


これらに気付くまでずいぶん時間がかかってしまった。なにせ人の動きはまばらだ。みな自分の好きなように動くために少しずつにしか変化がない。


そして何よりその変化は露骨ではなく、本当に微細な変化によって織りなされていた。


康太は索敵を自分を中心にして全体的に広げていたからこそ気づけた。文は入り口となる正門と裏門に索敵を集中していたから少し気付くのが遅れたがそれでも康太より早く気付いていた。


これが魔術の効果であるという事を。


「どうする?これ先輩たちがやってると思うか?」


「先輩たちにどんな思惑があるのか知らないけど・・・とりあえず現場に行ってみましょうか・・・何かあるなら対処しなきゃいけないし・・・何よりこれだけ結果を出されると流石に看過しかねるわ」


誰か数人の意識を別の所に逸らせるのであればそこまで難しいことではない。数が少なければ隠蔽もそこまで難しくはないし達成も容易だ。


だがこれだけの数を一度に操るとなると達成も隠蔽も容易ではない。そろそろ誰かが気付き始めるだろう、この辺りだけ妙に人通りが少ないという事実に。


そしてその理由を模索し始める。単に立地が悪いというわけではない。誰かが意図したかのような人通りの少なさ、通行止めか別に催しでもやっているのだろうかと疑問を持っても不思議はない。


その疑問によって生み出される思考が魔術の存在の露呈に繋がるなどというほど魔術の存在は簡単には露見しない。


だがその場所を意図的に人通りを少なくしたという事は何かしらの目的があると思っていいだろう。


その目的が何なのか康太たちは把握しなければならない。人通りを少なくしたという事は何かしらの活動をするためだと思うが、その活動の如何によっては康太たちがそれを止めなければならないだろう。


「これって文もよく使う意識を逸らすやつだよな?わざわざそれを使ってるってことは何かやるつもりか?」


「それとも私達、あるいは他の先輩方を呼び寄せるつもりか・・・どちらにせよいかなきゃいけないのは間違いないわね」


そう言いながら文はため息をついて視線を門の方から康太の方に移す。


「それで、魔力は今どれくらい溜まってるの?ずっと索敵しててかなり削られてるでしょ」


「あぁ、今五割切ってる。補充しまくっててもダメだ、やっぱ消費の方が多くなるな」


半日以上ずっと索敵の魔術を使っていた康太はすでに半分以上の魔力を消費していた。


常に魔力を回復させようとしていたのだが、それでも消費量が供給量を上回ってしまうのだ。


索敵の魔術は範囲と得られる情報によって消費量が増える。康太の扱う索敵魔術は索敵範囲は狭いものの、その得られる情報は多い方だ。索敵魔術としての燃費は決していい方とは言えない。


「上手く操れるようになれば情報量も削れるからその分消費も抑えられるわ。少しでも回復させておきなさい。黒いの私に使っていいから」


「毎回苦労を掛けてすまないなお前さん」


「それは言わない約束でしょあんた・・・って何言わせんのよ」


「いやお約束かと思って」


そんなのいいからと文が催促すると、康太は体の中から黒い瘴気を微量に散布してそれを文の中に吸い込ませる。


すると魔力が康太の方に流れつつある。文の優れた魔術師としての素質をもってすれば索敵魔術を常時使っていたとしても消費量が供給量を上回ることはない。仮に康太が魔力を吸いあげたとしても常に満タンの状態を貫くことができるだろう。


「お前みたいに魔力をたくさん補充できれば言う事なしなんだけどな・・・索敵でも露呈する俺のポンコツ具合」


「まぁいいじゃないの、こういうのは持ちつ持たれつよ。素質はほぼ仕方ないとして技術でどうとでもカバーできるわ。頑張って効率的な発動ができるように心がけなさいな」


「頑張ります。一応先輩に連絡しておいてくれるか?何があるのかわからないから」


「オッケー・・・動くのは私?それともあんた?」


「俺が動く。文は万が一の時のフォロー頼む」


「了解よ。人通りがあるから特に気を付けてね」


分かってるよと言いながら康太は意図的に人通りが少なくなった場所に向かうことにした。


意識を逸らす魔術を含めた無意識に干渉する魔術は魔術師には効きにくい。だからこそこうして異常を察知することもできているのだが、その場所に向かわなければいけないとなるとこれもまた一種の誘導だなと康太は内心舌打ちをしていた。


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