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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十二話「アリスインジャパン」

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侵入と情報戦

康太たちが見張りを始めて数時間、周囲はすっかり昼食ムードになってしまっていた。


待てど暮らせど奏もアリスもやってこない。康太と文は集中力が切れそうになるのを耐えながら適当に食べ物を買って凌ぎながら校門が見えるあたりをうろうろと移動し続けていた。


索敵になれている文は別にそこまでの負担ではないのだが、まだ索敵作業になれていない康太は文に比べると精神がすり減っているようでだいぶ消耗してしまっていた。


索敵をし続けるという事がここまで疲れることだとは思っていなかったからか、頻繁に甘いものを食べて少しでも脳を活性化させようと努めていた。


「いやはや・・・索敵がここまで疲れるものとは思ってなかった・・・知恵熱が出そうだよ」


「まぁ情報を常に頭の中に入れてるからね、そうなるのも無理ないか・・・これで普通の町とか戦いの中とかだと比較的ましになるから」


「そうなのか?なんかもういろいろと入ってきてマジで頭から煙が出そうなんだけど」


「常に人が動いてるからね。動作をしているものがあるとその情報を自動的に頭の中にいれちゃうのよ。そのせいで無駄に情報量が多くなってるんでしょうね」


康太の使っている索敵の魔術は周囲にある多くの情報を常に頭の中に入れてくれるが、周りには今動いている人間が多々存在する。今は康太自身が索敵魔術になれていないということもあり索敵範囲が常に変動しながらの発動になっているが、この半径二、三十メートル以内の中には数百人程度の人間がいるのだ。現在学校の中にいる人間の数は在校生含め教職員や来客を考えると五百人は軽く超えているだろう。


その人間の位置関係、そして動作などが曖昧であるとはいえ康太の頭の中に常に入ってきているのだ。普段のそれとは比べ物にならないほどの量の情報が頭の中に入っているのだから煙が出そうといった康太の表現はあながち間違いではないだろう。


康太はまだこの近接索敵の魔術を万全の状態で扱えないために得られる情報が若干少ないが、もしこれでこの魔術を完全にものにしたら得られる情報自体はさらに増えることになる。


これは本当に戦闘用の索敵魔術なのだなと実感しながら康太は綿あめにかぶりついて糖分を体の中に取り込んでいた。


「それでどうなんだ?今のところあの二人の影はいる感じ?」


「今のところ確認はできてないわ。あの二人の事だから正面からくると思ったんだけど・・・当てが外れたかしら・・・」


あの二人というより奏の性格からして侵入するとは言っても正面からやってくるだろうなと文は考えていた。


侵入というのは目立たないように、見つからないようにやってくるという事だ。


普段の学校ならば正面からやってくるのは侵入ではなく訪問という形になるだろうが、多くの人間が正門からやってくるこの文化祭に限っては正門から堂々と入ってきた方が目立たないのである。


木を隠すなら森、人を隠すなら人の中という事だ。


「いや、あの二人の性格なら絶対正面からくると思うぞ。たぶんまだ来てないだけだろ。索敵は他の場所にも張ってるのか?」


「一応ね。裏側から入ることも考えて正門と裏門に索敵張ってるわ。さすがに塀を越えてはいってくるバカはいないでしょ」


文が理屈面で正面からやってくると考えたのに対して康太は二人の性格という面から正面からやってくると考えていた。


康太は一度奏と一緒に行動して戦闘を行ったことがある。彼女の戦いは基本真正面からの殲滅戦だ。


自分の実力によほどの自信があるのだろう。もちろん十分すぎるほどの実力を有しているのは康太も重々承知している。


そして侵入するとは言ったが、恐らく彼女は堂々とここにやってくるだろうと考えていた。


魔術による隠蔽、恐らくその実力も康太や文とは比べ物にならないほどだということは容易に想像がつく。

それこそ索敵を張り巡らせていても目の前を通り過ぎても気づかない可能性だって十分にあり得るのだ。


格上相手の情報戦。そう言えばそんな訓練は一度もしたことがなかったなと康太と文は考えながら常に索敵に集中していた。


今まで格上相手の戦闘訓練は嫌というほどに行ってきたが、格上相手に情報戦を挑むということはやってこなかったのだ。


戦いというのは状況に応じて自分の有利不利を見極め、相手の弱点を把握したうえで立ち回ることが要求される。総合力がものをいう場合もあれば一瞬で勝負が決まることもある。単純な実力差では勝負がつかないのが戦闘の難しく、また有難い話だ。


だからこそ康太のような未熟者でも格上相手に何とか勝つことができるのである。


だが情報戦となると話は大きく変わる。


情報戦とはつまり索敵能力と隠蔽能力の有無によって変化する。


康太の覚えた索敵魔術、そして文が使うような光属性の隠蔽魔術。これらの魔術を駆使して自分の情報を隠しながら相手の情報を探るのが情報戦だ。


相手の位置や状況などを知る、そして自分の情報を相手に与えないためには最も重要な種類の魔術と言ってもいい。


今回の場合は康太たちの情報は向こうにばれても構わない。相手がやってくるのがわかっているのだから早々に発見してすぐにこちらがその場に急行すれば話はそれで終わる。


つまり康太たちの索敵能力が試されているのだ。


文に関しては言うまでもないが、康太は索敵にだいぶ不安が残る。そう言う意味では康太が主に試されていると思うべきだろうか。


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