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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十二話「アリスインジャパン」

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師匠と弟子の間柄

「なんていえばいいのかな・・・?あの人の弟子でよかったとは口が裂けても言えないけど、一応感謝はしてるんだよ」


「あの人からは多くを学びましたし恩も感じていますが、たとえそうであったとしてもあの人を尊敬するなどあり得ない話です。もう少し・・・いえかなり無茶苦茶を控えてくれるのであれば考えるところですが」


康太も真理も小百合に感謝や恩を感じているのは否定しないが、尊敬しているかどうかは全くの別問題だ。


尊敬とはそれだけ優れた人物に対してするものである。人格的に問題がありすぎる小百合の一体どこを尊敬しろというのか。


それなりに小百合の事を信頼しているのは間違いないだろう。だがそれを口に出して他人から言われると背筋が寒くなる。康太と真理にとってその言葉は小百合に向けていいものではないように思うのだ。


そしてそれは小百合から康太たちに対しても同じだろう。弟子としてある程度信頼はおいているが、小百合もきっと『私は弟子を信頼している』なんて言葉は絶対に使わない。


性格からしてひねくれている小百合がそんなことを誰かに言うとは思えないのだ。実際康太と真理はそんな言葉を聞いたことはない。


「尊敬はしなくとも感謝はしている・・・か・・・つまりお前達は何らかの義理あってあのものの弟子をしていると」


「・・・義理・・・義理かぁ・・・」


「なんかちょっと違うような・・・」


アリスの言葉は先程の康太と真理の返答を聞いたうえでは割と適切なものだっただろう。実際先程の言葉を聞くと感謝していて恩があるから小百合に付き従っているだけでそれ以外に彼女の弟子でいる理由はなく、大したメリットはないように聞こえたのだ。


事実小百合の弟子をしていて明確なメリットと言えば破壊に関する魔術を徹底的に覚えられるという点だけだ。それなら厳選してアリスに教わっても同じことだろう。


それをしないだけの理由がわからなかった。話だけを聞くならアリスや他に師匠となりえる魔術師がいる今、彼女に対する恩さえ返せばそれで彼女の弟子を止めるという選択肢もありなように思える。


康太はまだしも真理に関しては実力も魔術師としての対人関係も独り立ちできるだけのものは十分以上に有しているように思える。


いつまでも小百合に従う必要性を感じないのだ。


それは康太も真理も理解しているのだろうが、この二人もなぜ自分があの無茶苦茶な師匠に付き従っているのか理解できていないのだ。


なんというか従う事が当たり前になっていて、小百合から離れるという選択肢がそもそも思い浮かばなかったというのがある。


康太の場合小百合から離れるという選択肢を最初の時点で破棄されたようなものだが、そのあたりはもはや今さらというものだろう。


どう説明していいのか康太も真理もうまく言葉に表すことができない。どうして自分たちが小百合の元から離れないのか、どうして自分たちはあの傍若無人な師匠から離れようとしないのか。


「なんていうか、もう慣れたし今さら新しい環境にするっていうのも・・・ねぇ?」


「そうですね、せっかくここまでいろいろありながらもついてきたわけですし、今さら乗り換えるのも面倒ですし」


「・・・なんか携帯の会社を変えるのが面倒みたいな言い方してるわね」


アリスと話しながら階段を下りていると先に地下に行っていた文が三人の話を聞いていたのか半ばあきれながら康太たちの方に呟くようにそう言っていた。


そしてそれを聞いて「おぉ」と二人は手を叩いて感嘆の声を漏らす。


「あぁそれ近いかも。なんか他の会社に便利なパックとか安いコースとかあってもそこまでする必要はないみたいな」


「わざわざほかの会社に変えるだけのメリットを感じないというか・・・まぁそんな感じに近いですね」


「・・・自分の師匠を携帯会社呼ばわりか・・・相変わらずお前達は私に対する尊敬の念が足りないようだ」


そして先に降りていた小百合もこの会話だけは聞こえたのか、大きくため息を吐きながら睨むように康太と真理の方を見ている。


いつも通りとはいえ携帯会社のような扱いを受けるのは小百合としてもあまり愉快ではないのだろう。その顔からはありありと苛立ちのようなものが感じられる。


「ふむ・・・だがサユリよ、少なくともこの二名はお前のことをある程度は必要だと思っているのだ。邪険にすることもあるまい」


「邪険にしているつもりはない。ただ教育が行き届いていないというだけの話だ。もう少し師匠を尊敬できるようにしっかりと指導するべきだろうな」


「イエイエ、シショウソンケイシテマスヨー」


「ワタシタチハシショウガイナクナッタラスゴクコマリマスカラー」


「・・・よし気が変わった・・・文、今日はこいつら二人に徹底的に教育的指導を施すから手伝え」


「えー・・・私を巻き込まないでくださいよ・・・」


いつも通り実戦的な訓練をするとは思っていたがこんなところで二対二の訓練をすることになるとは思っていなかった。


というか完全に小百合の私怨で行動しようとしている。この二人がむかつくから一緒に叩きのめすぞと言っているようなものだ。


生きてきて長いアリスの中でもここまで弟子に尊敬されていない師匠も珍しい。なんというか師匠に向いているのかいないのかよくわからない人物だった。


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