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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十二話「アリスインジャパン」

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小百合の評価

「というかコータ、お前方陣術も使えんかったのか」


「そういや話してなかったっけ?属性魔術もようやく発動できるくらいだぞ?」


そう言って康太は少し集中してから指先から小さな火をつけて見せる。風の微風魔術と同じように火属性魔術の練習用に教わった小さな火の魔術だ。ライター程度の火力しか出ないがこれはこれで練習にいい魔術だ。何より指先から火を出すというのは手品師の様で康太は気に入っている。


魔術師が手品師にあこがれるというのも奇妙な話だがそれとこれとはまた別なのだ。


「でもこれから忙しくなりそうね?あんた部活との両立できるの?」


「そこなんだよな・・・土曜日はエアリスさんの所に、日曜日は奏さんの所に行って、平日は師匠とかと訓練・・・その中に方陣術の訓練も入れてとなると・・・部活に出る日を少なくするかなぁ・・・」


康太は困ったような声を出しているがその表情は全く困っているようには見えなかった。


むしろ楽しくて仕方がないという表情だ。新しいことを学べる。魔術師としてまた少し成長できるという事もあるが、恐らく康太自身こういうことを考えるのが好きなのだろう。


本当に魔術師向きの性格をしているなと思いながら小百合は小さくため息をついてから立ち上がる。


「さて、ではこれから訓練を始めるぞ。いつもと違ったゲストがいるが・・・まぁいいだろう、見ていくくらいは自由だ」


「ふむ・・・コータがどのように強くなったのかしっかりと見させてもらおう。私はいないものと思って構わんぞ?」


「そう言うわけにもいかん。真理、こいつはしっかり見張っていろ」


「それはいいですけど・・・アリスさんが本気になったらたぶん普通に見失うと思いますよ?」


真理の実力は確かに高い。小百合から信頼されているという事もあってその実力は自他ともに認められるだけのものはある。


だがそれを踏まえてもアリスは別格なのだ。何百年も生きてきたというのは伊達でも嘘でもない。魔術師として確かな実力を有している。


それは多彩な魔術であり、その魔術を扱う練度であり、乗り越えてきた死線の数である。


康太たちが一生かけても積めない経験を彼女は積んでいるのだ。それだけでもはやレベルが二ケタほど違うと思っていいだろう。


「アリス、俺らこれから訓練だからいい子で待っててくれよ?」


「お願いだから暴れたりしないでよね?あのひと機嫌悪くなると面倒なんだから」


「ふむ・・・二人からそう頼まれては仕方がない。では私は隅っこで大人しくしているとしよう」


同盟者の二人が頼み込むとアリスはあっさりと了承してみせる。その言葉が本当かどうかはさておき小百合はそれを聞いて鼻を鳴らして地下へと降りていった。


どうやら小百合はアリスの言葉に嘘はないと判断したのだろう。その反応に対してアリスは目を細める。


「のうコータよ、お前の師匠はどんな奴なのだ?」


「どんなって、見ての通りだよ。傍若無人で身勝手で、でもすごい優秀。俺なんかじゃ足元にも及ばないくらいに」


「・・・それだけ酷い言葉を向けていても信頼はしているのだの」


アリスの使った信頼という言葉に、康太は一瞬寒気を催す。アリスの言葉の意味を深読みしたからではなく、康太が小百合を信頼しているという事実に身震いしたのだ。


そしてどうやらそれは康太だけではなく真理も同じだったらしい。


「なんだか恐ろしいことを言いますねアリスさん・・・私たちが師匠を信頼してるだなんて・・・」


「まったくだよ、あの人に向けるのは信頼とかそんなんじゃないって」


「む・・・?そうなのか?」


「信頼ってのは文とかお前とかそう言うやつに向ける言葉だ。師匠に向けてるのは絶対そう言うのじゃない」


康太が吐き捨てるように言った言葉に文は少しだけ恥ずかしそうに、だが嬉しそうにしながら小百合の後に続いて地下へと向かっていく。


相変わらず康太は気恥ずかしい言葉をさらっというのだなとアリスは少しだけ眉を顰めながら首をかしげる。


「では尊敬か?それとも崇拝か?」


「いやいや絶対違う。あの人を尊敬できるなんて思ったことはないって。すごいのは認めるけど」


「その通りです。人格的に師匠は尊敬できる人ではありません。技術と戦闘能力の高さは認めますが」


「・・・なら他のものの弟子になればよかろう。話に聞く限りお前たち二人にはいくつかの選択肢があったように思うが?」


その言葉に康太と真理は顔を見合わせてから唸り始める。今となってはその選択肢はあるかもしれないが、今さらそれをしようとは思えないといった表情だった。


弟子二人からまったく尊敬されていないというのも考え物だが、アリスは小百合という人物を把握しかねていた。


これだけ文句を言っているのにこの二人は小百合から離れようとしていない。むしろ自分たちは小百合の弟子だと胸を張って言う可能性だってある。


それがわからなかったのだ。ただ技術を学ぶだけならば自分が師匠になってもいいと進言するつもりの発言だったのだが、その言葉を言い出す前に難色を示されてしまった。


まだ数回程度しかあっていないが、小百合にそこまでの魅力があるとも、カリスマがあるようにも見えなかった。


今まであってきた人間のどれにも当てはまらない独特な人間、それがアリスの小百合に対する評価だった。


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