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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十二話「アリスインジャパン」

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康太の得意魔術

「というわけで、土日にまずはうちの師匠の兄弟子の所に行くことになったから、そのあたりよろしく」


「・・・どういうわけなんだ?まぁ私はそれでもかまわないが・・・」


康太はその日の夜、自室でアリスと話していた。実際に奏に会うとしてもあらかじめ話しておくのが筋だと思ったのだ。


どちらにせよアリスの事だから了承したことは想定済み。なにせ小百合の兄弟子である人物にあるのだ。彼女としてもいろいろ興味は尽きないのである。


「それはいいがコータよ・・・人と話をしているのに魔術の訓練をするのはどうかと思うぞ?」


「しょうがないだろ、普段この時間は部屋で魔術の訓練してるんだから。やらないとなんか調子が狂うんだ」


「ふむ・・・まぁ私は居候の身だ。お前の生活サイクルに口出しはせんが・・・」


康太は毎日部屋に入ったら勉強するのと同時に魔術の訓練を行う。行う魔術の訓練は修得中の魔術と修得済みの魔術両方だ。


少しでも練度を上げるために全ての魔術を必ず一回ずつは発動する。もうすでに練度の限界に達しつつある魔術もいくつかあるが、それはそれで術の改良や特性のさらなる把握もできる。そう言う意味ではこの日課は必要不可欠なものだった。


「ちなみに今は何の魔術を発動しているのだ?」


「今は新しい魔術、最近索敵系の魔術とかを覚えたほうがいいように思ってな・・・いろいろ試して一番よさそうなのを使ってる」


康太が今使っているのは索敵の魔術だ。特に戦闘範囲である数十メートル程度の距離内にあるほとんどのものを索敵できるものである。


索敵範囲と発動時間によって消費魔力が変動する魔術で、範囲内にある物体や魔力を有したものなどを感知することができる。康太とこの魔術は相性がいいのか比較的容易に発動までこぎつけることができていた。


「ふむ・・・索敵系の魔術を今まで使ったことがなかったのか?」


「そもそも覚えてなかったしな・・・あぁそうだアリス、暇ならちょっと修業に付き合ってくれないか?」


「それは構わんが、どうしろと?」


「お前が知ってる術式、何でもいいから紙に書いてくれ。その術式を解析したいんだ」


「それも訓練か?」


「あぁ、術式解析の魔術を覚えたんだけどまだ練度が足りなくてな。適当なやつ頼む。なるべく簡単なのでいいから」


注文の多いやつだのと言いながらもアリスは近くにあったルーズリーフに方陣術で術式を記していく。一つや二つではなく十や二十という数を次々と書き記していく。これだけの術式を気軽に書き記せるのだから彼女の魔術のストックがかなり多いことがわかる。


そんなに書かれても見切れないぞと思いながらも、康太は一旦索敵の魔術の発動を止め右目を閉じて手で筒を作る。


紙に書かれた術式だけを見る形で術式解析の魔術を発動すると紙に記された術式の概要が頭の中に入ってくる。


だがまだ練度が低いらしく、大まかな術の内容しか知ることはできなかった。とはいえこの魔術を知ったのはつい最近だ。それを考えるとこうして普通に発動までこぎつけているあたり康太の修練の結果が出ていると言っていいだろう。


「コータはこういった魔術を多く知っておるのか?索敵はまだしも解析などそれほど必要とは思えんのだが」


「術式解析を覚えておけば魔導書を読んで自分で必要な魔術を選べるだろ?そう言う意味で必要だからこの前教えてもらったんだよ」


「ふむ・・・この前とは何時の事だ?」


「えっと・・・いつだったかな・・・そこまで時間はたってないように思うけど」


康太のいうように術式解析の魔術を教わったのは割と最近の話だ。索敵の魔術と同じくらいの時期に教わったのだがいつ教わったのかは康太自身あまり覚えていない。


だがアリスは目を細めて康太の顔を眺めていた。


「コータ、答えたくなければそれでもかまわないが、お前の起源は何だ?」


「なんだよ藪から棒に、確か『透明なレンズ』だったかな・・・?でも見るだけじゃないとか言われたような・・・」


康太の起源は少々特殊なものだった。魔術の発動と同時にその魔術の始まり、根源ともいうべきものを見ることができる。


体の中でくみ上げた術式が本来のものに近ければ近い程それは鮮明に見える。以前Dの慟哭によって封印指定百七十二号の変遷を覗くことができたのも、デビットの感情を知ることができたのも康太の起源が原因となっている。


康太の起源を聞いてアリスは眉をひそめて一つの術式を書き記す。


「コータ、これを使ってみろ。お前なら恐らく二、三回ほどである程度ものにできるはずだ」


「は?なんだこれ?」


康太がそう言って術式解析で渡された紙に記された術式を読み取るとそこに記されていたのは遠視の魔術だった。


視点を設定しそこに自らの視点を送ることで遠くのものを見ることができる。オーソドックスな遠視魔術。


康太はとりあえずアリスの背後に視点を設定するような形で魔術を発動しようとする。当然最初は失敗。だが二回三回と発動していくうちにコツを掴んだのか、集中こそ必要だが発動することはできた。


何度も発動しているが成功率はまだそこまで高くないもののある程度発動することはできるようになってきた。


分解や再現、そして今修得しようとしているほとんどの魔術よりもだいぶ修得速度は早いように感じたのは気のせいではないだろう。


「どうだ?恐らく他の魔術よりも使いやすいのではないか?」


「ん・・・まぁまだ使いにくいけど・・・でもなんでそんなことわかったんだ?」


康太の疑問はもっともなのだろうが、アリスからすれば呆れてしまうようなものだったのだろう。こんなことも知らないのかと呆れる反面、康太がこういう事を知らないのは師匠である小百合がそれを意図的に教えていないような気がしたのだ。


無論ただ単に小百合が教え忘れていた可能性もある。あるいは教えてはいたが康太が忘れているという可能性もある。


どちらにしろきちんと説明しなければいけないなとアリスはため息をついてから人差し指を立てて見せる。


「よいか?人間には必ず起源というものが存在する。そのものの本質を表すものだ。それは人それぞれ十人十色。どのような起源でも不思議はない。そしてその起源それぞれ多種多様な特性を持っている。ここまではいいな?」


「あぁ、そのくらいは知ってる」


「よろしい。起源というのはその人物の本質を表すものでもあり、同時に本人の資質にも関わってきている。それは魔術の才能にも影響する。特定の魔術を覚えやすかったり覚えにくかったりすることもあるのだ。心当たりはないか?」


そう言われて康太は思い当たる節がある。自分の師匠である小百合は破壊の魔術しか覚えられないという特殊なタイプだった。あれは恐らく彼女の起源が原因なのだろう。


「そして同じように、お前にも起源はあり、覚えやすい魔術と覚えにくい魔術がある。コータの場合視覚や聴覚・・・あるいは五感すべてに関係している『知覚系』の魔術を覚えやすいのだろう」


「知覚系・・・っていうと索敵とかさっきの遠視とかそう言うのか」


「その通り。今まで修業していて気づかなかったか?」


気付かなかったかと言われても今までの修業の中で知覚系の魔術を覚えたのはつい最近だ。それまでは念動力系の魔術がほとんどでそれ以外の魔術は覚えてこなかった。


最近ようやく知覚系の魔術を覚えてきて妙に物覚えが早くなったと感じたのは自分の魔術師としての実力が上がったからだと思っていたのだ。


だがどうやら知覚系の魔術との相性が良かったからなのだろう。


喜んでいいのか悲しんでいいのかは微妙なところだが、とりあえず自分の得意な魔術を知ることができたのは僥倖だと思うべきだろう。


「得意属性無属性、得意魔術が知覚系・・・なんだかすごい地味な魔術師になってきたな・・・もうちょっとなんかこう・・・かっこいい感じが良かったなぁ・・・」


ただでさえ無属性魔術は地味なのに索敵などの知覚系魔術が得意であると言われても正直そうなんだ以上の感想を抱けない。


どう表現したらいいのかはわからないがとても残念であるのは間違いない。もう少しアグレッシブな系統が得意だったらよかったのにと康太は少しだけしょんぼりしていた。


「何を言うか。戦いにおいて最も重要なのは情報。どのような状況においても索敵や知覚系の魔術は役に立つぞ。そう言う意味ではお前の得意な系統はかなり有用だ」


「有用かもしれないけどさぁ・・・」


確かに今までの実戦の中でも索敵系魔術の有用性は十分に身に染みている。相手の位置を把握するのもそうだし周囲の地形把握もそうだし、状況を判断しやすくする材料となるのも間違いない。


今までは文や真理に頼りきりだったためにその恩恵は大きく、その意味もよく理解できている。


だが男の子としてはもう少し力強い効果が欲しかったのだ。得意系統索敵というのは確かに重要なことではあるが決定打に欠ける気がしてならないのである。


「それに聞く限りだとコータの起源的に言えば見るだけではない。ありとあらゆる知覚系魔術が得意魔術になる可能性がある。そうなるとお前は情報戦において相手よりも数段上に立つことができるだけのスペックを有していることになるぞ?これはなかなかのメリットだ」


「・・・うん・・・まぁそれはわかるんだけどさ・・・」


如何にアリスが康太の起源のメリットを述べたところで康太にはその魅力が半分も伝わっていないだろう。


魔術師として十分以上に経験を積み、魔術師として円熟した実力を持っているものならばこのメリットを正しく理解できたかもしれない。


だが育ち盛り思春期真っただ中の男子高校生である康太はその魅力にいまいちピンときていなかった。

そしてそのことを理解したのだろう、アリスは小さくため息を吐く。


「そうだな・・・若い未熟な魔術師にそのことを解いても仕方のない話か・・・まだ理解できんこともある・・・そのあたりはコータの師匠と話をしておくとしよう」


「師匠に話したところで変わりないと思うぞ?あの人の指導方法ってたぶんこれからずっと変わらないだろうし」


「変わる変わらないではない、お前の師匠として知っておくべきことだと言っているのだ。気づいているのかはさておき伝えておくのは義務だ」


「・・・俺が伝えるの?」


「当たり前だ。説明しにくいのであれば私も一緒に説明してやる」


まるで保護者のようだなと康太は思いながらもよろしくお願いしますとアリスに小さく頭を下げた。


ただの同盟相手でとりあえず様子を見るだけだったはずがいつの間にか面倒を見てしまっていることに気付いてアリスは自分の額に手を当てる。


何故かはわからないが康太を放っておけない。かつての弟子であるデビットが康太の中にいるとはいえどうしてこうも放っておけないのか。文が康太との同盟関係を切っていない理由がわかった気がするとアリスは小さくため息をついていた。














「へぇ・・・知覚系の魔術がねぇ・・・」


「そうなんだよ、俺も言われるまで気付かなかったんだけどな」


その日は康太と文が小百合の店で訓練をする日だった。この土日に東京観光を含めるという事で修業の日時を前倒ししたのである。


その為康太と文は一緒に修業場である小百合の店に向かっていたのだが、その途中で先日のアリスに言われた内容を話していたのだ。


「いいんじゃない?知覚系の魔術って大体索敵とかが多いし、そう言うのを覚えておいて損はないと思うわよ?」


「いや損がないのはわかってるんだよ・・・でもなんかさ・・・もうちょっとこう・・・かっこいいのが良かったなと・・・」


「・・・なんとなく言いたいことはわかるけどさ・・・それなら何?炎系の魔術が得意になれるのとかそう言うのだったらよかったの?」


「あぁいいねそれ。最高だね、個性の塊じゃん。いかにもって感じ。いやでもそれだと狙いすぎかな・・・?火属性じゃなくて風とかの方があざとくないかな?」


「知らないわよそんなの。結局どんな特徴でも文句言いそうねあんた」


高望みしすぎというのもあるかもしれないが、そもそも康太自身がそこまで高い魔術師特性を有していないのだ。せめて起源からくる得意魔術くらいはもう少しよいものになってほしかったと思うのが自然な流れだろう。


もちろん康太の知覚系魔術が得意というのも十分以上に優れた特性だ。康太の師匠である小百合がもっている『破壊系の魔術しか覚えられない』というものに比べればどれ程便利なものか。


そして康太自身この効果がどれほど有用か理解していないのだ。実際に索敵系の魔術を実戦で使ったことがないから仕方のないことかもしれないが、文から見たら素直に羨ましいと思える程度には良い効果だ。


半面いろいろと弱点というか欠点が目立つかもしれないが、康太が魔術師として成長していくうえで大きなメリットとなることもまた間違いない。


「そう言えば文はどういう魔術が得意なんだ?起源的な意味で」


「・・・康太、一応言っておくけどそう言うのは本来他人に教えるべきことじゃないのよ?そのあたり分かってる?」


「わかってるけどさ、別に良くないか?俺だって教えただろ?」


「・・・あんたの場合は勝手に話したって言ったほうがいい気がするけど・・・まぁいいわ・・・私は天候とかそう言う系統の魔術が得意なのよ。自然に関係あるって言ったほうがいいかな?風とか霧とか雷とか、あとは昼夜の日光とかそう言う感じね」


「おぉ・・・そう言えば前に戦ったとき使ってきた魔術もそんな感じだったな」


以前文と戦ったとき彼女が使っていたのは確かに雷、風、霧など、自然的な天候に関わるものだった記憶がある。


天候に関わる、あるいは関係のある魔術を扱うのが得意となると康太はいくつか思い当たる点がある。


「じゃあさ、竜巻とか起こすことはできるのか?」


「やろうと思えばできるわよ?あとついでに言えば光を操って熱傷を与えたりもできるわ。ただ日中じゃないとやりにくいけどね」


「おぉ、虫眼鏡アタックか、割と強そうだな」


「・・・その言い方凄くかっこ悪いからやめて。まぁ原理的には正しいんだけど・・・」


文のいう光属性による熱傷というのは康太が例えた虫メガネを用いた光の屈折で間違いない。


太陽から降り注ぐ光の方向を変換することで特定位置にその光を集中し多大な熱量を浴びせることができるのだ。


もちろんかなり威力が高い分使いどころを間違えると攻撃対象を殺してしまう可能性があるためなかなか難しい魔術ではある。


「てことはさ、文の魔術ってその場合の天候とかに結構左右されるのか?」


「よくわかってるじゃない。雨の日風の日嵐に晴、使う魔術は結構変わるわよ?あと室内か屋外か、昼か夜かでも結構変わってくるわね」


以前戦った夜中だったら相手の目をくらませるため、なおかつ周りの闇に紛れるために光を操作して暗闇を作り、逆に昼間なら光を調整してフラッシュのようにしたりと光属性の魔術はかなり有用性が高い。


アリスのように高度な変装はできなくてもその風景に紛れることくらいは文にもある程度できる。


状況に応じて正しく魔術を使いこなす、それだけのことができるスペックが彼女にはあるのだ。


「やっぱ天候によって魔術の力が増大されたりとかそう言うのってあるのか?無属性ばっかり使ってるからそう言うのよくわからないけど」


「増大っていうのとはちょっと違うかな・・・使いやすいシチュエーションってものがあるのよ。例えば風が強い日ならその風を利用して任意の方向に突風を吹かせたり、全部魔術で発動するんじゃなくて自然の力を利用するって感じ」


「おぉ・・・なんかそれだけ聞くとすごくかっこよく聞こえるな・・・なんか達人の技みたいな感じだ」


「・・・割と結構多くの魔術師がこういう風にしてると思うんだけど・・・いちいち全部自分の力で発動してたら大変なのよ?」


あんただってそうしてるでしょと言いかけて文は康太が覚えている魔術を思い出す。


康太が使っている魔術は主に無属性だが、何も康太は発動している魔術のすべてを制御しているわけではない。


再現や遠隔動作は自分の体で行った行動を基にすることで情報処理を軽くしているし、蓄積の魔術は与えている力自体は自分の力が元になっている。一から十まですべて魔術で引き起こしているものというのは実は割と少ないのだ。


「例えばさ、あんたが得意って言われた知覚系統の魔術、索敵系にも言い換えられることだけど大抵は人間の処理能力だとか五感に近づけることで魔術を行使する上で必要な処理をかなり軽減してるものがあるのよ?」


「そうなのか?例えば?」


「例えば・・・この前教えた術式解析、あれなんかは視覚とリンクさせることで必要な処理を軽減してるわね。大抵の魔術は人間のもともと持ってる処理能力や自然の力とかを借りたりすることで必要な負荷とか消費とかを押さえられるように作られてるのよ」


「ほぉぉ・・・そうだったのか・・・いろいろ知らないことがあるもんだな」


これは結構魔術の基本的なことなんだけどと考えながら文はあえてそれを口に出すことはしなかった。


基本的に実戦から魔術を学んでいった康太と違い、文はそれらを理屈や理論から学んでいった。両者の間で知っていることと知らないことがあっても仕方がない。


体で覚える康太と理屈で覚える文。要するにこの二人の魔術に対する覚え方や考え方の違いなのだ。


むしろいろいろと教えて今までの感覚を阻害する方が康太にとって多少なりともマイナスになるだろう。


康太が知りたいというのであれば教えるが、これから康太が魔術師として成長していくうえで必要のないことならばわざわざ教える必要はない。


いくら康太の師匠が破天荒かつ無茶苦茶な小百合であるとはいえ知りたいのであれば自分で調べたり聞いたりするだろう。余計な世話で康太の調子を崩しても面白くない。そう言う線引きが康太との同盟間においては重要なのである。


「じゃあさ、前に言ってたソナーみたいに力を反響させる索敵とかは何とリンクさせてるんだ?」


「そうね・・・聴覚か触覚じゃない?もともと蝙蝠とかの超音波をオリジナルにしてるものでしょうし・・・」


「ならこの前教えてくれた一定空間内の全体的な索敵は?」


「あれは主に視覚ね。あとは人間の持つ空間把握能力、それに聴覚と触覚も少し入ってるかな?割とかなり人間の感覚に処理を任せてるから比較的必要な処理は少ないはずよ。ただその分得られる情報が多いから扱いが難しいけど」


魔術の索敵において得られる情報の量というのはその索敵の種類と索敵範囲にもよる。


康太が覚えた魔術のように範囲内の魔力や物質などをある程度全て把握できるような魔術だと当然得られる情報量はかなり多くなるために脳の処理が追いつかなくなる可能性がある。


だが先ほど康太が挙げたエコーを用いた索敵であれば得られる情報は物質的なものだけ、しかも近距離であればあるほど詳細であるために比較的情報量は少なくて済む。


以前から文や真理がそうしていたように自らの処理能力の限界と消費魔力、そして状況に応じて索敵魔術を切り替えることが重要なのだ。


「大体知覚系の魔術って人間の五感で処理を軽減してるんだな・・・だから俺との相性が良かったのかな?」


「・・・かもしれないわね・・・あんたの場合起源が結構特殊な部類だからそれなりに恩恵はあると思うわよ?私も起源の恩恵って結構あるし」


「恩恵って言われてもな・・・索敵で恩恵ってどんなのだよ」


「そんなの知らないわよ。そのうち分かるんじゃない?実戦とかで使ってればいつの間にかわかるようになるわよ」


文だって康太の起源をすべて把握できているわけではない。何より康太自身自分の起源がどのような効果を持っているのかを正確に把握していないのだ。


後は実際に使ってみる以外にそれを知る術はない。毎日のように訓練して初めてそう言ったことがわかるようになるだろう。


まだまだ康太には知らなければならないことが山ほどあるのだ。特に魔術の事もそうだが自分自身の素質や才能について、できることとできないことを正確に把握しておかなければならない。


そうでなければこの先苦労することになるだろう。


いや現段階でも苦労はしているのだがそのあたりはおいておくことにする。


「ちなみにお前が起源関係で恩恵受けたのってたとえばどんな感じ?やっぱ自然とか天候関係なのか?」


「まぁ大体そうね。私の場合はその環境をある程度感じやすくなってるみたいなのよね・・・だからどの場所にどんな風に魔術を使えばよりよく使えるかっていうのがなんとなくわかるの」


「・・・要するに?」


「要するにその状況によっては消費魔力に比べて魔術の効果を大きくしやすいってこと。これって結構役に立つのよ?」


「もともと素質が結構いい癖に何でそう言うところで効率よくいこうとするのか・・・たまにはドカッと無駄遣いしてみろよ」


「あんたね・・・逆に言えば自分の実力以上の効果の魔術を扱えるってことなのよ?それこそ私じゃ本来扱えないような大魔術も上手くやれば使えるってことだし」


文のいうような使い方は基本的に魔術に比べて魔力消費を抑えるというだけではなく、本来の魔術の威力よりも高いそれを扱えるという利点がある。


康太のいうような消耗を押さえるようなやり方ではなく本来自分では扱えないような大出力の魔術を扱えるというのは確かに大きな利点だ。


当然扱いを間違えば危険になるため文は意図的にそれを使っていないがその気になれば大規模な魔術だって起こすことができるだろう。


当然それができるだけの環境がなければ不可能な話だがそれでも将来的には大規模な魔術を連発することもあり得るかもしれない。


誤字報告五件分、評価者人数205人突破、ブックマーク件数2200突破で合計四回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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