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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十一話「血の契約と口約束」

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口調の理由

「これで君は日本支部所属になった・・・あとは好きにしたまえ・・・日本へはいつ発つのだ?」


「とりあえずこ奴らに合わせようと思う。せっかくだから向こうも案内してもらいたいしの」


「・・・そうか・・・ではこれをもってブライトビーへの依頼も完遂となる・・・よく・・・よくやってくれた」


本心ではそんなことは思っていないだろうに、本部長の言葉からは感謝の念は感じ取れなかった。


康太に提示した依頼はしっかりと完遂している。多少、いやかなり思惑とは異なるだろうが彼らが目的とすることは達成できたのだ。


もちろんそれ以上の問題が一つできたのは言うまでもないだろう。


「ブライトビー、君たちはどうするつもりだ?依頼を完遂したのだからもう日本に戻ってもいいと思うが」


「せっかくイギリスにいるんだし少し買い物とかしてから帰るつもりです。あとはまぁ・・・適当に食事をしたりして明日には帰ります」


康太のいうようにせっかくイギリスにまで来ているのだ、用が済んだからと言ってすぐに帰るというのも味気ない。


もっとも一応不法入国しているわけだから一応は気を使って行動しなければならないだろう。だがそのある程度の気遣いさえできれば問題なく行動していいことになる。


康太の言葉に本部長は小さくため息をつくとこの場の話し合いを終了するべく全員に退室を命じた。


これ以上アリスを近くにおいておきたくないのだろう。早く出ていけという感情が言葉からにじみ出ているように感じられた。


「・・・依頼完遂か、ようやく肩の荷が下りたな」


「ふむ・・・お前には少々荷が重い依頼だったのかの?」


「荷が重いなんてレベルじゃないよ。押しつぶされるかと思った」


「私はそんなに重い女かの?これでもだいぶスタイルには自信があるのだが」


「ハッ、スタイルがいいっていうのはこういうのを言うんだよ、なぁベル」


康太は文の方を指さしながら失笑する。実際にアリスの体形は確かに軽いだろうがスタイルが良いと言えるかは正直微妙なところだ。


なにせ傍から見ればただの幼女にしか見えないのだ。スタイルも何もないような体形であるためにスタイルがいいとは言い難い。


「・・・私に振らないでくれる?反応に困るから」


「なんだよ、同じ女からすればスタイル維持とかそう言うので反論があるんじゃないのか?」


「そんなので勝負してどうするのよ・・・まぁ褒めてくれる分には嬉しいけどさ・・・こいつにそう言うところで張り合ったところで・・・ていうかあんたそう言うこと気にするの?」


「何を言うか。生まれてから何年経とうと私は女だ。着飾り、見栄を張り、男には美しく見られたいものだ」


「・・・そう言うもんなのか・・・そうなんですか姉さん?」


「えぇ、女の子は常に綺麗に見られたいものですよ。細かいところで着飾ったり意中の男性の前では特別な行動をとったりするものです」


真理の言葉に康太と倉敷はそうなのかと男子高校生らしい反応をして見せる。


康太も倉敷も今まで誰かと付き合ったりすることはなかったためにこういったことには疎いのだ。


女兄弟がいる康太はある程度女性に対しての免疫があるが、倉敷の場合あまり女性に対して耐性がない。というか今まで部活やクラス以外でかかわったことがないためにこういった話をすること自体が初めてだった。


「というか一つ気になるのだが・・・ブライトビー、なぜ自分の兄弟子には敬語で話す癖に私には敬語を使わない?」


「え?だって姉さんのことは尊敬してるし・・・何より兄弟子だし」


「・・・私だって一応年上だぞ?しかも相当年上だ」


女性のくせに年齢のことを言うのはいいのだろうかと思うが、同時にこの魔術師が何百年も生きているのだということを思い出し今さらなのだろうかという考えに至る。


独身アラサーの婚期を気にする女性ならまだしも、何百年も生きていたらそう言う細かいことは気にしないのだろう。


というか年齢のことを気にしないのに敬語の事は気にするのかと康太は若干眉をひそめていた。


「いやなんて言うか・・・英語って敬語文化ないだろ?問題ないかなって・・・それになんていうか・・・お前には敬語使う必要ないような感じがしてな」


「・・・ほう・・・?それは何故?」


「んー・・・なんかこう親しみやすいというか・・・なんか妙にこういう言葉遣いが馴染むというか・・・何でだろうな?」


そう言って康太は笑う。そして康太とは対照的にアリスは目を見開いていた。


康太は気づいていない、いやこの場にいるアリス以外の全員が気付いていない。康太がそう感じるその理由に。康太がアリスに親しみを感じるその理由に。


「まぁ・・・お前がそう言うなら仕方がない。ライリーベルも同じ理由か?」


「んー・・・まぁ私の場合なんかもうこっちに慣れちゃったから・・・敬語で話してほしいなら話すけど?」


「・・・いやいい。二人とは対等な立場だ。敬語は使わんでいい」


アリスは半ばあきらめながら大きくため息を吐き、誰にも聞こえないほど小さな声で吐き捨てるようにつぶやいた。


「・・・まったく・・・本当なら説教してやりたいところだ・・・デビットめ・・・」


その言葉を聞いたものはその場には誰もいなかった。そしてその言葉の意味を理解する者はアリスだけだったのも言うまでもない。


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