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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十一話「血の契約と口約束」

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思惑と真相

「わかった、その条件を認めよう。やってみるといい。だが期限は我々が目標を見つけるまでだ。猶予はないと思いたまえ」


「了解した。言質はとったからな?忘れるなよ」


大方本部長やその周りの人間は一晩もかければ目標を発見できると思っているのだろう。


何より本部の人間が総出になって探しているものを康太が先に見つけることができるとは思っていない。


さらに言えば康太には外出時にはほとんど監視がついている。康太が見つけるという事はつまり当然ではあるが本部も見つけるという事だ。仮に目標である封印指定二十八号を見つけても交渉できるだけの時間はないと思っているのだ。


もっとも、前提からして覆っているということに向こうは気づいていない。


康太と真理は退室しベックたちと合流してから文たちの居るホテルに向かうことにした。


本部の中を歩いている中で真理は康太に口を近づけて小声で話し始める。


「やりましたね。必要な情報も聞き出し、なおかつ条件もそろえました」


「相手にとって優位すぎる条件ですからね・・・向こうの方が数の利がある、何より依頼をコントロールしてる立場、俺みたいな一介の魔術師のいう事を正直に聞くこともないでしょう。舐め切ったまましっかり条件を飲んでくれました」


相手がこちらを圧倒的に格下だと思ってくれているからこそできた芸当だ。これでもし状況が少し違えば相手は保守的な考えを貫いただろう。


だが今はどちらにしろ康太は戦力として遊んでしまう。何もせずに過ごさせるよりは少しでも自分たちが優位になるように仕向けたほうがいい。


たとえそれが無理だとわかっていても、いや無理だとわかっているからこそ彼らはそれを認めたのだ。できるはずがないとわかっているからこそ、嘲笑を含めて康太に許可を出した。


康太が目標に接触できず、Dの慟哭を仕込むこともできなかったことから上層部の康太に対する評価は多少下がっている。


Dの慟哭を扱えるだけのただの高校生なのではないかという考えも浮かんできているだろう。


今まで何年も魔術師として過ごし、協会の本部の中で確かな立場を手に入れた者たちからすればただの若輩者。社会の恐ろしさも厳しさも知らないただの軟弱者のように思えたのかもしれない。


それらがすべて康太の思うつぼだとも知らずに。


「あとはどのようにするか・・・ですね・・・ベルさんたちが何か考えていればいいのですが・・・」


「それは難しいでしょう、この情報があってはじめて前に進むものですから。相手の思惑は知ることができた。あとはその条件を満たす形で話を進めればいいだけ・・・上手くいけば今日中にも解決しますよ」


「確かにそうですね・・・ですがビー、日本に戻る時間には注意が必要ですよ?向こうとは八時間の時差があるんですから」


「あぁそうだった・・・ってことは・・・えっと・・・学校が始まる前日だから・・・月曜日の午前中には戻っておいた方がいいですかね」


今こうして活動しているのはイギリスだ。イギリスの時間に合わせて活動しているうえに一瞬で日本との行き来が可能という事もあってあまり強くイギリスにいるのだという印象がないが、日本との時差は八時間もあるのだ。イギリスが正午でも、日本ではすでに二十時になってしまう。


体調を整えなおかつゆっくり休み小百合に報告してから日常に戻るなら康太のいうようにイギリス時間の午前中には日本に戻っておきたいところである。


「あとは本部の人間がどこまで気付くかってところですかね・・・もう見つかってるかな?」


「それはないでしょう・・・私だって索敵を妨害するための魔術を扱えるんですよ?その気になったら魔術師に彼女を見つけることはできません」


「確かに・・・でも姉さん、一ついいですか?目標は本当に何百年も生きてると思いますか?」


康太の疑問はもっともなものだった。彼女を目の前にしたいまでも、あの少女が何百年も生きてきたとは思えない。


皺だらけのおばあさんの姿をしていたのであればまだ想像できたのかもわからないが、彼女のあの姿はまだ十代前半、もしかしたらそれより下かも知れないような年齢だった。


偽装している可能性も否定できないが、彼女が本当にアリシア・メリノスだった場合、どのようにして生き続けていたのかという疑問が残る。


「・・・私では判断できませんが・・・不可能・・・というわけではないように思います。実際にそれをやろうとする人がいるかはわかりませんが」


「長生きできる魔術とかあるんですか?」


「私は見たことも聞いたこともありませんけどね・・・実際肉体強化など人体に作用する魔術は多く存在します。その中で肉体の老化を止めるような魔術があっても不思議はありません・・・ですが全身の細胞一つ一つにそれをかけるとなると・・・それこそ並大抵の集中力や技術力では発動すらできないでしょう」


理論的に言えば老衰などの原因になる老化というのは細胞分裂というものが大きくかかわってきている。

人間は細胞分裂ができる数があらかじめ決められている。個人差もあるが遺伝的早老症疾患の患者などはこの細胞分裂の可能数が平均よりかなり低いからこそ起こるとされている。


では、これを魔術によって強化して伸ばすことはできるのだろうか。


通常の肉体強化はあくまで個人の肉体の限界を超えることはない。何百年も生きているとなるとそれは人間という種の限界を大きく上回っている。


強化ではなく別の手段により寿命を強引に伸ばしているのだとしてどのような魔術なのか、康太たちには想像することすらできなかった。


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