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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十一話「血の契約と口約束」

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本部の本音

「我々が封印指定二十八号を無力化したいと考えているのは知っているだろうがその理由は大きく分けて三つ。一つ目は先にもあげた将来的な危険性。こちらが管理することのできない存在は協会としては好ましくない」


管理できない力。それはアリスの実力もそうだが彼女の性格的な面もあるのだろう。


彼女はもとより協会にあまり入り浸る人間ではなかったようだし、誰かのいう事を素直に聞くような人間でもない。


目の前にいる本部の上方たちの言葉を素直に聞いたりするタイプではないだろう。康太はまだ詳細は聞いていないが資料によれば何百年も生きている魔術師なのだ。ずっと年下の若造のいう事を聞くようなことはしないだろう。


組織という立場からすれば確かに彼女の存在は鬱陶しいものだろう。力だけではなく協会への貢献度という実績まである。


「二つ目が彼女の存在そのものだ。彼女は大昔から住んでいる。中には何かしらの歴史的瞬間の記録に偶然写っていても不思議はない。そんな彼女が現代に居続けているんだ。もしそのことが露呈したらそれこそ大変なことになる」


魔術の存在の露呈、彼女がどのようにして生きているのかは定かではないが何百年も生きているというのは普通の人間ならばあり得ないことだ。それがあり得ているという事は通常の科学では説明できないことが起きていると見て間違いない。


科学者の目が魔術に向かう事があるかは微妙なところだが、可能性は摘み取っておく必要があるのだ。ただ死をまき散らす封印指定百七十二号よりもずっと露呈の可能性は高いように思える。


「三つ目が・・・彼女が魔術協会の本部に所属している魔術師であるという事だ。本部には幾つもの役職がある。我々のような管理職だけではなく現場職や事務職もある。だが彼女はそのどれにも属していない。だが本部の中で最も立場のある我々よりも強い立場を持っている。それが問題なのだ」


「・・・要するにただのバイトが社長や会長以上の発言力や影響力を持ってるのが気に食わない・・・とそう言う事か」


要約してしまえば何のことはないただのひがみのように聞こえるかもしれないが、実際組織運営に関係する者にとってこれはかなり面倒なことだ。


バイトが社長よりも強い発言力を有しているところなどありはしない。だが現状この協会本部ではそれがあり得てしまっている。


アリスが特殊だからというのもあるだろうが、それにしたってその状況を容認できるほど組織というのは甘くない。


例外を放置しておけば当然歪みが発生する。もしアリスが積極的に本部運営に参加すれば新しい派閥が発生してしまうだろう。


それも今まで存在した勢力を一気にひっくり返してしまいかねないほど大規模な派閥が。


一応アリスの、封印指定二十八号の資料は閲覧厳禁ということになっているが、積極的に参加するのならまず間違いなくその点から公表することになるだろう。


現状本部長よりも強い力と発言権を持っているなどという事が知られようものなら今の本部の組織図は一気に変化する。しかもほとんどアリスの一強となってしまうだろう。


ここまで聞いて康太はなるほどと呟き今回の状況を正確に把握し、相手の思惑をほぼ理解していた。


要するに保身だ。自分たちが運営している本部の組織図を覆されたくない、自分たちの立場を維持していたいから邪魔なアリスを片付けようとしている。


他二つの理由はほぼ後付のようなものだろう。彼女が本気になれば魔術協会という組織そのものを私物化されかねないからこそそうならないように彼女を排除しようとしているのだ。


だが一応彼女は協会に所属している魔術師だ。あとから面倒なことが起きないように言葉を変えて無力化などという言い方をしたのだ。


こうなってくると康太にもできることはある。あとはうまいこと話を進めて相手にそれを認めさせるだけの材料を用意すればいいだけの話だ。


「三つの条件を聞いた限り、一つ目と二つ目に関してはほぼ不可能に近いんじゃないか?むしろ協会で見張ってたほうがまだましだよ」


「だから無力化しようと」


「相手がその気になったら確実に逃げられる。実際今も逃げられてどうしようもないだろ?」


康太のいうようにアリスがその気になったら簡単に包囲網を抜けられてしまったのだ。今の協会の人間がどれだけ本気になったところで既に大人と子どもレベルの実力差がついているのである。


今さら協会側もアリスのことを何の被害もなしにとらえられるとは思っていないのだ。


「それにあんたたちにとって前二つの条件はそこまで重要でもないんだろ?一番重要なのは三つ目・・・組織のパワーバランスやら自分たちの立場が危うくなるのを恐れてるってだけだ。目標に本部運営に積極的になられると分が悪いからな」


康太の言葉にその場にいた協会の上層部たちは知ったような口をと歯噛みしている。中には鼻で笑うものもいる。


なにせ康太の立場は社長や部長たちに比べれば本当に下の下、本店どころか支社か下請け企業のバイトレベルなのだ。


そんな人間が意見をしたところで話を流されるのがおちだ。


だがむしろその状況こそ康太の望むものだった。


「依頼の達成条件を無力化から本部運営への介入を失くすっていうっていう風にするならやりようはあるぞ?多少リスキーだけど」


康太の提案にその場にいた魔術師はほとんどが鼻で笑うか康太のいう事を信じないものばかりだ。約二名ほど康太の方をまっすぐに見つめ続けているものがいる。この二人は康太のいう可能性に気付いているのかもしれない。


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