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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十一話「血の契約と口約束」

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救出、離脱

なぜ彼女がここにいるのか、どうしてこんな場所にいるのか。いくつも可能性が浮かんでは消えていくが、アリスめがけて先程まで自分に向かっていた氷の刃が彼女の頭上から襲いかかるのを見て考えるより先に体を動かしていた。


彼女の素性だとかこの場にいる理由だとかそんなことは頭の中から消しとんだ。今康太の頭の中にあるのは彼女を助けなければという考えだった。


急激に方向転換しアリスの下に駆け、襲い掛かる氷の刃を視認して集中してから魔術を発動する。


すると彼女に一直線に向かっていた魔術は急にその方向を変えた。


康太が使ったのはかつて奏に教わった魔術だった。その効果を表現するなら『ある一点に収束させる』魔術だ。


動いている物体や現象に対して有効な魔術で、指定したものの進行方向を特定の場所や部位になるように力をかけることができる。


防御や攻撃などにも有効な魔術を、康太はアリスを守るために使用した。そしてある程度氷の刃の軌道を変えることに成功すると彼女の間に炸裂障壁の魔術を発動する。


目の前に唐突に現れた障壁にアリスは一瞬驚いているようだった。そして氷の刃を障壁が受け流す形で食い止め僅かにその威力を減衰させる中、康太は再現の魔術で槍の投擲を氷の刃めがけて放つ。


氷の刃が槍の再現によって弾かれ完全に軌道を逸らす、アリスの体に氷の刃が当たることはなく、ほんの数センチ離れたところを通り過ぎて地面に深々とめり込んだ。


アリスは一瞬呆けた表情をしていたが、全力で走ってきている康太の存在に気が付いたのだろう、目を見開いて康太の方を見ているが康太はそんなこと知ったことではないというかのように彼女の小さな体を抱えてそのまま走り抜ける。


次の瞬間アリスが先程までいた場所に炎や光の弾丸などが襲い掛かった。


「無事かアリス!?怪我ないか!?」


「・・・コータ・・・何故・・・」


声で判断したのだろうか、それとも日本語を話していたから気づけたのか、仮面をつけていたにもかかわらずアリスは仮面をつけ黒い外套を身にまとっているものをすぐに康太であると認識した。


先程から康太めがけて、いや康太とアリスめがけて炎や氷の刃が直上から襲い掛かってきている。こちらはまだ完全に捕捉されているのだ。このままでは危険だ。話をする前に離脱しなければ。


「とりあえず話は後だ!こっから離脱する!」


「お前は・・・あぁもう・・・わかった・・・十秒稼いでくれ。そしたら何とかする」


十秒でいったい何ができるというのか。康太は疑問に思っていたがとりあえず彼女のいう通りにするしかない。


こうして人一人担いでいるだけでもだいぶつらいのだ。肉体強化をかけているとはいえ人一人運びながら走るというのはかなりの重労働。普通に走るより速力は落ちるし回避動作もかなり大きくなってしまう。


しかも先程までと違い攻撃がほぼ真上から襲い掛かってきているのだ。草木に隠れているせいで攻撃が見えにくい。ホーミングがほとんどかかっていないという事もあって動いていれば避けることができるが、動き続けなければいけないというのはなかなかにつらかった。


「コータ、一つ聞かせろ・・・何で私を助けた?」


「あ!?何でって攻撃されてたからだよ!大体何でお前こんな所に!?」


「・・・私が知るか・・・私だって半ば強制的に連れてこられたんだ」


アリスの言葉に康太は事情を察する。何故この場に彼女がいるのかということに関しては康太なりに答えを得ていた。


だがだからと言って彼女を助けるのを止めるというわけではない。


「で!?そろそろ十秒ですよお嬢さん!どうすんの!?」


「こうする」


アリスが指を鳴らすと康太が足を踏み出そうとしたその地面が巨大な穴をあける。まるでというかまさに落とし穴だ。全く予想できなかった康太は転がるようにその穴に落ちていく。


一体どこまで続くのかもわからない奈落の底。光も届かないほどの地下に康太たちは延々と落下していく。


一体どこまで続くのかはわからないがさすがにアリスを抱えたまま落下するわけにはいかない。康太は再現の魔術によって擬似的に足場を作り出すと半ば強引に体勢を整えてゆっくりと降下していく。


「ほう?こんなこともできるのか」


「あぁもう・・・落ちるなら落ちるって言ってくれよ・・・っていうかそうか、お前も協会の魔術師だったんだな」


「・・・まぁ・・・一応そうだが」


「道理であの時俺に話しかけたわけだ・・・日本の魔術師が街をうろうろしてたから見るに見かねて話しかけたんだろ?」


「・・・間違ってはいないが・・・少々疑っていたというのが正直なところでな・・・なにせこの国で日本の魔術師は珍しいからの。何か企んでいるのではと思ったのだ」


あれだけ挙動不審では疑われても仕方がないなと思いながら康太はアリスを抱えたままゆっくりと降下していく。


一体どこまで続いているのかもわからない縦穴の終わりは五分近く降下してようやく訪れた。


その間に康太たちが落ちた穴の入り口は塞がれ、途中何度か轟音が鳴り響いたが土が崩れることもなく、康太たちは無事に降りることができていた。


「ちょっと待ってろ、今火をつける・・・っていうかどこまで下りたんだ?」


「向こうの索敵範囲から逃れるためにだいぶ降りた・・・これでまともに話ができるな」


康太が火の魔術で明かりをともすよりも早くアリスは手のひらの内側に煌々と輝く光の球体を作り出していた。


全く光の入らない空間に光ができたため一瞬目がくらむが、すぐにこの空間を認識することができていた。


本部の魔術師という事もあって康太よりずっと優秀なのだろう。もう少し恰好をつけたかったのだけどなと康太は少し残念そうにしながら仮面を外し一息ついていた。


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