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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十一話「血の契約と口約束」

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「二人とも準備はいいわね?」


「いつでも」


「問題ありません」


康太と真理はいつでも走り出せる状態になっていた。周りの魔術師たちはとにかく飛んでくる魔術を防御し、康太たちが走り出すのを阻害しないように努めている。


「それじゃ俺らがいなくなった後のかじ取りは任せたぞ。負傷者抱えて後退でも何でも好きにしてくれ」


「了解よ・・・可能ならまたあんたに合流するように動くから」


「そうだな・・・そうしてくれると助かる」


康太と真理は走った後向こう側にいる魔術師の小隊に合流、そのまま距離を維持しながら他の部隊と入れ替わりながら戦う。対して文たちは一度離脱し交代のためにやってくる他の部隊の中に入って康太と再び合流するつもりだった。


「あとこれ、通訳さんが状況説明のためのメモ書いておいてくれたから、向こうの部隊に合流したら渡しなさい」


「お、気が利くな。助かるよ」


通訳を自分たちの無茶苦茶な行動に付き合わせるためにはいかないため、通訳は文たちと行動を共にする。その場合康太と真理では意思伝達にすら不自由するかもしれないのだ。


予めこういうものを用意しておいてくれるあたり文らしいと言えるだろう。


「それじゃビー、ジョアさん、気を付けて」


文としては正直行かせたくないという気持ちもあるのだろう。これだけの攻撃を受けているのにそれを回避しながら接近するだなんて正気の沙汰ではない。


だがやらなければいけない。その必要性が今あるのだ。


「えぇ、そちらも気を付けてください」


「やられたりするなよ?」


「こっちの台詞よ・・・んじゃ行くわよ・・・3、2、1、ゴー!」


文の合図で康太と真理は同時に走り出していた。それと同時にこちらからも魔術による射撃が始まった。


距離的に本体に届かないのはわかっている。目的は康太と真理に接近しようとする魔術の相殺だった。


もっとも魔術師たちが放つ攻撃ではほんの十メートルか二十メートル程度しかこの森林地帯では狙って当てることは難しい。康太も真理もそのことは承知している。最初から支援射撃などないつもりで全力疾走していた。


互いに身体能力強化をかけ、通常の走る速度よりも数段速く森林地帯を駆け抜ける。足場が悪く、また障害物も多いため万全の状態で走れるわけではないがそれでも普通の人間が走るよりはだいぶ速い。


あらかじめ文に目標の位置を正確に聞いておいた。あとはその方向に駆け抜けるだけだ。障害物が多いために多少ずれたり相手が移動している可能性を加味すれば誤差が出てくるかもしれないが、十メートル程度の誤差までなら問題ない。視認して相手にDの慟哭をかける事さえできればいいのだ。


康太たちが飛び出して数秒も経たないうちに二人めがけて射撃系の攻撃が飛翔してくる。


炎に氷の刃、雷の球体や光の弾丸とより取り見取りだ。これだけの攻撃を一度に使えるのだから恐ろしいものだと思いながら康太たちはその攻撃をギリギリまで引き寄せてから回避していく。


射撃系の攻撃は基本的に一度撃ったら直進していく。さらに複雑な軌道を描かせる場合はその分誘導しなければいけない。


誘導できる類の魔術を使うか、あるいは単純な射撃系魔術に誘導することができるような魔術を重ねがけするか、方法はいくつかあるがどちらにせよこの射撃系攻撃が相手の制御下にあるのは間違いない。


このような遮蔽物が多い場所で長距離にもかかわらずしっかりと康太達めがけて飛んできているという事は間違いなく高精度での誘導を行っていると思っていい。わかりやすく言えば康太達めがけてホーミングしてくるミサイルのようなものだ。


そう言ったものを避けるには、ギリギリまで引き寄せて急激な方向転換をしホーミングが追いつかないようにするしかない。


小百合との実戦訓練で康太と真理が最初に学んだのは『接近する』ことだった。康太も真理もまず与えられたのは武器で、魔術師に対して肉弾戦をこなせるだけの身体能力と技術を叩き込まれた。


ほとんどの魔術師が中距離から遠距離の射撃戦を得意としているという事から、康太たちが学ばされたのは魔術を避けるか防いで強引に距離を詰めるという訓練だ。


しかも防御の魔術など覚えていない頃はとにかく魔術を避ける必要があった。その為か、康太も真理も単純な射撃系魔術を避けるという動作に関していえば、この戦場の誰よりも上手かった。


襲い掛かる炎を真横に跳躍することで回避し、続いてやってくる氷の刃を槍を使って受け流し、雷の球体は炸裂障壁を地面に触れさせた形で顕現して防ぎ、光の弾丸は身をひるがえして回避する。


真理も同様に時に遮蔽物を利用して、時に空中に踊り出し、時に自らの武器や防御魔術で軌道を逸らせながら二人は疾走していく。


時折降ってくる岩石を回避しながら、襲い掛かる魔術を回避し続け康太たちは走り続けた。


既に二十秒は走っている。やはり回避しながらだと時間がかかる。障害物があるせいで速く走れないというのもあるかもしれない。


何より攻撃を警戒しながらだと若干速力が落ちる。だがこのままの攻撃の密度なら問題なく回避できる。あとどれくらいだろうか、康太がそんなことを考えていると康太の視界に見覚えのある金色の髪が見えた。


その方向に目を向けると、康太はその人物を見つけることができる。その体は小さかった。自分が迷子になった時に手助けしてくれた、声をかけてくれた少女、アリスだった。


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