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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十一話「血の契約と口約束」

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ばれないための嘘

「・・・なんかさ・・・がっかりだ・・・普通に美味い・・・」


「いや気持ちはわかるけどさ、何でそんながっかりしてんだよ。美味かったんだからよかったじゃないか」


「そうだけどさ・・・なんかこう・・・ここは『なんだよこれまっず!』みたいなリアクションとりたかったじゃん・・・普通に美味くてがっかりだわ」


倉敷は予想と不安に反して普通に美味だったルームサービスの食事の数々を胃の中に放り込んだ後かなりがっかりしていた。


あらかじめ用意されていた情報が過剰すぎたというのもあるのかもしれないがこの反応はさすがに失礼ではないかと思えてしまう。


だが美味しかったのなら良いではないかと思う反面、イギリス料理がまずいと言わしめたその原因たる料理を味わってみたかったのもまた事実なのだ。倉敷ががっかりしてしまうのもなんとなくわかるだけに複雑な心境だった。


「あー・・・確かにがっかり名所とか見てがっかりしなかった時とかちょっと裏切られた感はあるわよね。こっちはがっかりするつもりで見に来てるのに普通にいいところだったみたいな」


「なんだよその例え・・・いやまぁわかるけども」


日本に存在するがっかり名所。名所と呼ばれているのにもかかわらずその実情はかなりがっかりすると言われている一種の観光名所なのだが、本気でがっかりするようなものもあれば建築物として、あるいは観光という観点からすれば十分に見て満足できるようなものだったりする。


文のいう事も分かるだけになんというか絶妙に複雑な気分になってしまうのも仕方のないことだろう。


所謂イギリスの不味い料理というものを一度食べてみたいと思ってしまうのも、また美味しいものを食べたいと思うのも、矛盾するようではあるが旅における一種の風情でもあるのだ。


その楽しみ方が正しいものかどうかはさておいて。


「まぁまぁ、せっかくなんですから康太君が買ってきたケーキも食べましょう。甘いものを食べて明日のために英気を養うのもまた私たちの仕事ですよ」


「まぁ今ほとんど何もできないからなんですけど・・・あとで俺も道具の最終確認しておかなきゃな」


明日は六時にベックが起こしに来ることが確定している。そこから作戦開始だとしてのんびりできる時間はそうない。


こういう時間にしっかりとイギリスらしさを堪能し、英気を養うのもまた今康太たちにできる事でもあるのだ。


康太のいうようにそれ以外にできることがないというのもあるが。


「そういやさ八篠、お前さっき散歩に行ってたって言ったじゃん?どのあたり歩いてたんだ?」


唐突に話題が先程の散歩に戻ってきたことで康太は内心冷や汗をかく。倉敷め余計なことをと恨み言さえ心の中で叫んでいたがここで変に過剰に反応すると怪しまれるなと思い可能な限り普通に対応しようと心の平静を保とうとしていた。


「ん・・・ベックに案内されたところより少し離れたところだな。迷うとまずいと思ってそこまで遠くには行ってないと思うけど」


「具体的にはどのあたりまでだ?地図で言うとどの辺?」


何故こいつはこんなにもそんなことを聞きたがるのか。いっそのこと殴って黙らせたいくらいだがそれはまずい。明らかに怪しまれる。


だがだからと言って正直に答えることができるはずもない。康太だって自分がどのあたりを歩いていたのか皆目見当もつかないのだ。というか自分がどこからどうやって帰ってきたのかさえ覚えていない。すべてアリスに任せていたために風景を楽しむことくらいしかしていなかったのだ。


少女に案内される情けない高校生の図を思い出して死にたくなったが、今はそんなことはいい。重要なのは迷子になったことを悟らせないことだ。


「んなこと言ったってな・・・実際どこがどことかわからなかったぞ?一度ベックに案内されたからなんとなく戻ってこれたけど、少し道を外れたらマジで迷いそうだった」


「ふぅん・・・そんなもんか・・・じゃあひとりで散歩はやめた方がいいかもな・・・迷いそうだし」


「まぁ知らない土地を一人で歩くってかなり危ないわよ?特にここは日本じゃないし地名やらで判断するのも難しいからね・・・ホント迷わなくてよかったわね康太」


「あぁ・・・本当にな」


康太は一瞬遠い目をして苦笑する。


実際はかなり迷って通りがかりの少女に助けてもらったなどとは口が裂けても言えない。


しかもその少女に説教まがいのことまでまでされてしまったなどと知られるわけにはいかない。


もしばれようものなら康太のほんのわずかにしかないようなプライドまで粉みじんにされてしまうだろう。そんなことは避けなければならない。


情けないことはわかっている。バカだという事も重々承知している。すでに何回も反省し何回も後悔したのだ。アリスに言われた通りこれからはきちんと安全面に考慮した行動をとらなければいけないだろう。


「ていうかあんたよくこんだけのケーキ買ってこられたわよね?英語結構ひどいのに」


「それはまぁ身振り手振りで・・・買う時と金勘定の時にちょっと苦労したけど何とかなったぞ」


実際は出会った少女にやってもらったのだが、今さら恥の上塗りも何のその。ばれないのであればどんな嘘でもつき通そうと康太は頭をフル回転させていた。嘘を吐くのにここまで慎重になったのは初めてだと康太は心底焦っていた。


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