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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十一話「血の契約と口約束」

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ホテルでの食事を

「おや、康太君おかえりなさい。随分と遅かったですね」


「ただいまです・・・いやはや、土産物を選んでたらちょいと時間をかけすぎました。これお詫びのケーキです」


何食わぬ顔で全員の待つホテルに戻ってきた康太は先程まで掻いていた冷や汗の跡も完全に拭い去り爽やかな顔でテーブルの上にケーキをおいた。


先程まで食べていたケーキなので美味しいのは確認済みだ。これで話題を別な方向に逸らせて自分の大失敗を覆い隠そうと企んでいた。


「ふぅん・・・随分気が利いてるのね・・・それで?肝心のお土産は買えたの?」


「それがさ、考えてみたら俺お土産とかのセンスゼロだからさ・・・カップとかお茶とかそう言う関係のお土産は姉さんや文に助言を貰おうかと思って結局買えなかったんだよ」


だからケーキだけ買ってきたというもっともらしい理由をつけて康太は軽やかに文の追及を回避していた。


土産は今回は買えなかったから今度一緒に行こうと遠回しに言っているのだが、これだけ長くかかった理由にはならない。だがそれよりもまず話を別方向に持っていく必要がある。


何とかして別の話題に、それも可能なら自然に話を持っていきたいところだった。


「姉さんたちは何を?ひょっとしてさっき起きたところですか?」


「いえ、もう起きてからだいぶ経っていたんですが康太君が帰ってこないので行動できませんでした・・・なのでこの街の地図を眺めたり道具の確認をしたりしていました」


ベッドの上に広げられた地図と床の上に置かれている魔術師としての道具を見比べて康太は地図の方につい視線が行ってしまった。


あれがあれば容易く帰ってこられただろうにと内心舌打ちをしながら康太は近くにあった椅子に深く腰掛ける。


散々歩き回っていたために妙に疲れた。一度仮眠を挟んでいるはずなのにもうすでに眠い。


今日は熟睡できるだろうなと自分の疲れ具合を確認しながらそんなことを考えていると同時に文たちは地図とは別の紙を見て何やらうなっていた。


「どうした?なんか指令でも飛んできたのか?」


「違うわよ。今日の晩御飯・・・ていうか日本時間的には夜食になりそうね・・・時間調整無茶苦茶だけどもう食べちゃおうと思って・・・ルームサービスのメニュー見てるのよ」


確かに日本時間で言えばすでに深夜を回っている。こちらに来て昼食、というか夕食はすでに食べた。この時間に食べるとそれはそれで時差による影響をもろに受けるかもしれないが何も食べないというのも体に悪い。


ホテルについているレストランで食べるというのも一つの手だがいちいち外に出て言葉など通訳を介して確認するよりはルームサービスを利用して一括で運んでもらったほうがずっと楽だ。


康太は先程ケーキを軽く食べたが、それでも動き回って空腹なのも事実だ。これはいい話題の矛先ができたなと内心ほくそ笑みながら文たちが見ている紙を一緒に眺める。


「イギリスって言ったらフィッシュアンドチップスか?あるかな」


「一応あるけど・・・あれ家庭料理なんでしょ?わざわざホテルに来てまで食べるかしら・・・それなら別のもの頼みましょうよ」


「って言ってもイギリス料理なんて知らないぞ?なんか味が微妙ってことくらいしか」


「そのあたりは運次第じゃね?丁度いい口直しもあるしさ、ちょっと冒険してみようぜ」


口直しというのは康太の買ってきたケーキの事だろう。


料理がたとえ不味くともこうして甘いデザートがやってきてくれたのだ。多少冒険しても後味はましになるだろうと考えたのだ。


実際保険をかけるというのとは少し違うかもしれないが、悪くはない案かもしれない。ここはせっかくイギリスに来たのだからちょっとくらい遊んでみても罰は当たらないだろう。


そんな軽い気持ちで出かけていたい目を見た康太からすれば安定策をとりたいところだったが、食べ物であればあそこまでひどい状況になることはないだろう。


海外に来るという事で正露丸などの腹痛に対する対策はある程度してきている。仮に腹が痛くなったとしてもこちらには真理がいるのだ。大抵の事ならすぐに治してくれるだろうと高をくくっていた。


端に不味い場合はそれはそれであきらめがつくしいい思い出になる。ここは一種の賭けに出るべきだと康太の中の男の子がそう叫んでいた。


「よし、俺は伝統料理で行こう。フィッシュアンドチップスのセット、あとは紅茶あたりかな」


「んー・・・じゃあ私は外れなさそうなローストビーフのセット・・・あとサンドイッチと紅茶ももらおうかしら」


「おいおい鐘子、全然攻めてねえじゃねえか。俺はケバブ盛り合わせに・・・このよくわかんないハギス?ってのを一つ」


「ん・・・皆さんいろいろ頼みますね・・・では私は・・・ミートパイとギネスシチューをいただきましょうか。あと紅茶も」


そして通訳さんにもメニューを渡してから内線を使って注文し、康太たちは期待半分不安半分に料理が届くのを待っていた。


イギリス料理はまずいというのは有名な話だ。実際に食べたことがないからその言葉が嘘か本当かはわからない。


少なくとも昼に食べた料理は普通においしかった。少々スパイシーな感じがしてよかったように思う。


だがあれはあくまで案内人であるベックの紹介だったからこそだ。このホテルが誰の裁定で決められたのかは知らないが、ホテルの料理というのはその国の程度を示すと言っても過言ではない。


なにせある意味平滑化された料理が出てくるのだから。定食屋やレストランとは違ったものが出てくるのは間違いないだろう。


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