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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十一話「血の契約と口約束」

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過去の戦績

康太が目を覚ましたのは文たちが三つめの段ボールに入っている資料に手を伸ばした時だった。


いきなり飛び起きて息を荒く吐き、周囲をしきりに見渡している。


「・・・あぁ・・・よかった・・・夢か・・・」


「おはようございます。夢見はよくなかったようですね・・・」


「えぇ・・・金髪の女にボッコボコにされる夢見てました・・・嫌に鮮明だったな・・・」


「変に気負いすぎなのよ。もう少し楽に考えなさい・・・って言ってもこれ見てから寝たんじゃそれも仕方ないか」


徹夜で資料を読み漁り、同時に簡略版の資料を作り、疲労と悪い情報を頭の中に入れ続けていたのだ。康太が見たような悪夢を見てしまうのも頷ける話である。


極度の疲労を抱えると悪夢を見やすくなるというが、今回の場合精神的な不安も相まって悪夢を見やすい環境は整っていたのだろう。


しかも食い入るように、穴が開くほど資料にあったアリシア・メリノスの写真を見ていたのだ。金髪の女という存在が強く頭の中に残っていても不思議はない。


「それはそうとどうですか?少しはましになりましたか?」


「あぁ・・・すいません、気を使わせてしまったみたいで・・・でもやっぱちょっと寝るだけでだいぶ違うな」


「まともに寝てなきゃそう思うでしょうよ。とりあえず用意してもらった資料は全部読んだわよ。これから三つめの段ボールを見るところ」


「それと二つ目の段ボールの簡略資料も作っておきました。目を通しておいてくださいね」


「・・・何から何まですいません・・・」


康太は何やら申し訳なく思っているようだが、これらは何も康太がやらなければいけない仕事というわけではない。


依頼に参加する以上、これをやるのは文や真理、そして倉敷もやるべき事柄なのだ。康太が一人で重責を負う必要はないのである。


とりあえず康太はまだ覚めきっていない頭を起こすべく軽く顔を洗うことにした。その上で真理が用意した資料に目を通すとその表情はどんどん悪いものに変わっていく。


康太がいろいろ考えていたいくつかの策をすでに本部の魔術師が実行に移していたのである。そしてその結果全て失敗。


やはりというか当然というか、新しい手札が一つ増えた程度では状況はひっくり返らないのだなと康太は眉間にしわを寄せてしまう。


「なんかどんどんできることが少なくなってる気がする・・・何をどうすれば勝てるんだよこれ」


「私としては消耗戦に加えてあと一つか二つほど何か手があればよいと思っているんですが・・・康太君としてはどうですか?」


「こっちのほうが数で勝ってますからね、消耗戦に関しては同意です。でも問題はその消耗戦がどれくらい効果を得られるかですよ・・・肉体的な消耗もそうですけど魔力的な消耗をどれだけ与えられるか・・・」


今回相手よりも自分たちの方が数が勝っているという事もあって相手に対して消耗戦を仕掛けるというのは康太も同意のようだった。


こちらが数で勝っている間はローテーションしながら戦う事で相手への負担を増やしこちらの負担を軽減することができるだろう。


だが問題はその負担をどれだけ相手に与えることができるかという事である。


肉体的な消耗は常に相手に強いプレッシャーと攻撃を仕掛けることができるか、そして決して休ませないという事が大前提となる。


ついでに言えば食事や睡眠と言った必要不可欠な行動そのものを取らせないようにするとなお良いだろう。


魔力的な消耗に関しては康太が行う魔力吸収に加え相手に大量に魔術を使わせるのが好ましい。より効果的な消耗方法としては相手に防戦一方にさせるのが良いだろう。


こちらに負傷者が出ればそれだけ消耗戦が短くなる可能性がある。康太が活動できる時間が短いために可能な限り相手へのプレッシャーをかける必要がある。


「消耗戦と言えば聞こえはいいですが結局は集団リンチに近いですよね・・・まぁ相手が相手なだけに逆にこっちがやられかねないわけですけど・・・」


「魔術的なアプローチだけじゃなくて物理的なアプローチも仕掛けたいですね。毒とかダメージとか」


「それ前にやったことがあるっぽいぞ・・・二つ目の段ボールの中身にそう言う作戦があるみたいだ」


「マジかよ・・・それでも倒せなかったのか」


康太が見ている簡略資料の中には消耗戦に加え物理的な攻撃や毒をまき散らすことで相手の動きを封じたりそのまま殺そうとする作戦が入っていた。


だが作戦は失敗。消耗戦を行おうとした大量の部隊は確実に一人ずつ倒されていき、遠方から毒を仕込もうとしたり物理的な攻撃を仕掛けようとしたものはことごとく防がれ返り討ちにされている。


累計戦闘時間は十四時間。消耗戦を仕掛けようとした中ではやや長めの記録である。逆に言えば今までの消耗戦において二十四時間戦い続けることもできなかったのだ。


戦闘開始から数分も経たずに第一陣が壊滅、そこから順々に戦力を投入していったのだが当然のように各個撃破。


他の資料には戦力を一度に投入したという記録もあるが、強力な範囲攻撃により最も早く壊滅している。


一度に戦力を投入したら一時間も持たずに壊滅し、逐次戦力を投入しても的確に一人ひとり確実に削られていく。


不意打ちや搦め手も一切通じない。この資料だけを読めば何でまた挑むのかわからなくなってくるレベルである。


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