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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十一話「血の契約と口約束」

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交渉の後

「上々・・・とは言えん結果だったな。封印指定だったのはまぁ予想通りだったとして・・・そんな化物を相手にすることになるとは」


必要な話をすべて終えた康太たちはひとまず協会本部を後にして日本支部に戻ってきていた。


話をしている場所は支部長室だ。すでに人払いも済ませまともに話せるだけの環境を作っている。


とはいえもちろん小百合の店ほど安心感はないが。


「ひとまずひと段落ってところなのかな・・・?でもよかったのかい?依頼を受けることにして」


そんなことを言いながら支部長は三人にそれぞれ紅茶と茶菓子を出してくる。小百合は礼も言わずにそれを口に運んでいた。


「えぇ、相手は本部ですから。無駄に反抗して脅しでもかけられたら条件を出すようなこともできなかったでしょうし・・・ていうか師匠、せめてありがとうくらい言ったらどうですか?」


「私達は客だぞ。そしてこの部屋の主はこいつだ。もてなすのがこいつの義務だ」


支部長が茶と茶菓子を出してくれたことに対してまったくもって感謝の感情を持っていないのか、小百合はさも当然であるかのように振る舞っている。


付き合いが長いからこそ横柄な態度に出られるのだろうが、その様子を見て康太と真理は辟易してしまっていた。


「師匠、客は神ではありませんよ?最低限の品位と礼節を持ってないなければその辺の暴漢と何ら変わり有りません」


「くれるものは貰う。もてなされたのならそれを最大限享受する。それが私なりの品位と礼節だ。文句は言わせん」


「支部長、今度から師匠への茶菓子はゲテモノ料理でいいですよ。虫料理とかいいんじゃないですかね」


「弟子の言葉とは思えないね・・・まぁ検討しておくよ」


「ちなみに私は虫料理もおいしくいただけるぞ。私を呻らせたければトマトでも持ってくるんだな」


「・・・あぁ、そう言えば君はトマトが嫌いだったね・・・次からはそうしよう」


小百合にも嫌いなものがあったのかと康太は少し意外そうにしていたが、虫料理が大丈夫なのにトマトがダメというのはどういう事だろうかと少し苦笑してしまう。


案外子供っぽいものがダメなのだなと思いながら康太は話しを進めることにした。


「それで支部長、実は折り入ってお願いがあるんですけど」


「うん、なんとなくそんな気はしてたよ。話し合いの後にわざわざこの部屋に来た時点で嫌な予感はしてた」


康太たちが一度小百合の店に帰らずにそのまま支部長室にやってきたのにはわけがある。というか康太が支部長に頼みがあるからこの場にやってくるように誘導したという方が正しい。


普通なら拠点に戻ってゆっくりするところを自分の拠点に近い場所にやってきたことで支部長はある程度予想がついているようだった。


「それで?頼みっていうのは?」


「この日本支部内にある情報の閲覧権限が欲しいんです。いろいろと調べたいこととかできたんで」


情報の閲覧権限というとひどく抽象的だが、つまり普通の魔術師では閲覧することができない秘匿情報を見せてくれと言っているようなものだ。


その秘匿情報は何も件の封印指定がらみの話だけではない。中には依頼の内容やその結果、あるいは事件の内容などが記された文書なども存在するだろう。


そのようなものを見せてくれと言ってくる理由を支部長は理解できているつもりだった。


つまり今回の依頼の対象である封印指定二十八号のかかわる事件を調べようというのだ。本部にある資料はすでに向こうに提出するようにいってある。何より本部の資料を読み漁ろうにも康太では翻訳に時間がかかりすぎてまともに読むことはできないだろう。


そこで日本の中で起こった事件、あるいは関わるものを探そうという事なのだ。


それだけ長く生きている魔術師なら何かの拍子に日本にやってきていても不思議はない。幸か不幸か日本支部の記述の中にそれらしいものがあるかもしれないのだ。


無論封印指定二十八号の記録は閲覧禁止になっているためにそれに関わる事件に関しても閲覧することは難しい。そこで康太は支部長に頼んでいるのだ。


「んー・・・まぁ個人的には事情が事情だしみせてあげてもいいんだけど・・・条件が一つだけ。閲覧できる期間と閲覧できるものに制限をかけさせてもらうよ」


「具体的には?」


「期間に関しては君が依頼を達成するまでの間、つまりは今度の三連休の終わりまでだね。閲覧制限は封印指定二十八号とそれに関わったことのある事件に限られる。こちらとしてもそれが限界なんだけど・・・構わないかな?」


確かに今の康太には不要な情報でも、協会そのものが知られると困るような情報も中には入っているだろう。


弱みとなるようなものは見せることはできない。そう言う意味を含めて本来は閲覧禁止などの制限がかけられているのだ。


支部長も康太の事情を知っているために協力したいのはやまやまなのだろうが、あまりに何でもかんでも許容すると組織の長としての面子に関わる。この辺りは仕方のないところと言えるだろう。


だがそれだけでも十分すぎる。康太にとっては封印指定二十八号の情報さえ手に入ればいいのだ。それ以外の物は求めていないために必要ない。それだけしてくれればありがたい限りだった。


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