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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十一話「血の契約と口約束」

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正式な返事

「なるほど・・・結局受けることにしたんだね」


「はい・・・それ以外に選択肢はなさそうだったので」


康太たちは協会の日本支部に向かい支部長に依頼の件を報告していた。


そして今回自分たちが提示する条件に付いても支部長にはすべて話しておいた。無論どの条件を話しておいていいかなども含めて。


事前に伝えることを優先するべきものは康太の持つDの慟哭の動作確認の件についてと依頼の詳細を話す際に互いに記録員と通訳を用意すること。それ以外はまだ伝えなくてもいいと判断した。


むしろ唐突に突き出す形にすることで相手の反応を見たほうがより向こうの思惑を知ることができるだろうとの判断である。


「通訳と記録員に関してはお前の方で手配しろ。できないとは言わさんぞ」


「もう少し言い方を考えてくれるとこちらとしては嬉しいんだけどね・・・まぁいいさ。何もできない分そのくらいは力になるよ。こちらで信頼できる人物を手配しよう」


小百合の物言いに支部長は複雑な声を出している。もう少し物腰柔らかにできないのかと思っているようだが、それももう今さらだと諦めている様子だった。


長い付き合いだからというのもあるのだろう、これ以上言っても無駄だというのは誰よりも理解しているのかもしれない。


「さて・・・本部の方への伝達は任せてくれていい。だがすぐにというわけにはいかないだろう。たぶん二日か三日くらい時間が空くと思うよ?その点は理解しておいてくれるかな?」


なにせ内容が内容だからねと付け足しながら支部長は康太の方を見る。


康太が出した条件の一つ、Dの慟哭の動作確認に関しては向こうもいろいろと思うところがあるだろう。


組織内での派閥や思惑によっては行動内容が大きく変わってくることもある。そうなると一日程度では話をまとめることはまず難しい。だが康太がその気になってくれているのにもかかわらずいつまでも待たせているというわけにもいかない。


可能な限り早急に話をまとめてすぐにでも依頼を正式に受諾させたいところなのだ。圧力もかけずにこちらが乗り気になっているのであれば康太を敵視していないものとしては懐柔することもできるのではないかと思うだろう。


片方の勢力が早々に形だけでも自分の立ち位置を決めれば、当然もう片方の勢力や第三勢力もそれに遅れないように急がなければならない。


もしかしたら勢力内での意思統一ができないかもしれないが、それでも他の勢力に弱みを見せるよりは何倍もましなのだ。


「わかりました。それに関しては支部長の方から俺の方に連絡をください。店にいる師匠に連絡してくれればすぐに俺の方にも伝わるので」


「まるで私が常に店にいるような言いぐさだな。私にだって予定くらいあるのだが」


「俺の記憶ではほぼ毎日のように店にいるような気がしますが・・・まぁこの二、三日は店で大人しくしておいてくださいよ。今後の話とかもあるんですから」


小百合としてはまるで自分が引きこもりのような扱いをされているのは不満なのだろう。だが実際に小百合はほとんど店にいる。というか店に住んでいるようなものなのだ。康太の言い分もあながち間違っているものではない。


小百合に伝われば当然康太にも伝わる。連絡手段はすでにあるのだからそこまで情報伝達のロスがあるとも思えない。


「はいはいそこまで。とりあえずクラリスの店に連絡をつければいいんだね。連絡が来たらすぐに伝えよう。その方が君としても助かるだろうしね」


「はい。準備時間だとかそう言うのも必要ですから。三連休にやろうと思ってますのでまだ余裕はありますけど・・・」


九月の三連休は九月の半ばを過ぎたあたりから始まるものだ。まだ九月の上旬であるために話がまとまれば二週間近い猶予があることになる。


その間できることは山ほどある。新しい魔術の修得や、道具の手入れ、必要な物資の購入や入手。


相手が不明であるためにどの程度役に立つかはわからないがあって損はないだろう。今回は本部からの支援によって武器の所有数にほとんど制限がない形なのだから。


もっともそれだけの武器を保有していても勝つことができるかは未知数ではあるが。


「必要なものは大体クラリスの所にあるだろうけれど、必要なら声をかけてくれ。力になれるかもしれないからね」


「支部長もそう言う道具を扱うところに心当たりあるんですか?」


「心当たりっていうか・・・魔術協会そのもので扱っている道具とかならある程度は用意できるってことさ。一応魔術師の活動を支援するうえで必要な物資は大体揃っているつもりだからね」


魔術協会はもともと魔術師が所属し、多くの支援を受けることができる組織だ。協会の門を使った移動、魔術協会が保有している魔導書の閲覧、そして今あげたように魔術師が使用する道具などの売買なども挙げられる。


さすがに支給することなどは難しくとも入手することを容易にすることは可能だ。もっとも多くの物資を扱うと言っても何でもあるわけではない。


ある程度汎用性の高いものを扱ってはいるが、特定の状況にのみ使用できるような購買者が少ない物資などは取り扱っていないのだ。


そう言う物資を買うために小百合の経営している店が存在している。


「あぁそうか、購入相手が協会だったこともあったのはそう言う事か。うちの店から商品を提供してるところもあるってことですね」


「まぁそう言う事。協会そのものが売買契約を結べていないところもクラリスの店はコネを持っているからね。ちょっと高くつくけどそのあたりは仕方がないって話さ」


自分のいつもいるあの店が実は案外すごいところだったのだなと実感しながら康太はとりあえずその日やるべきことをすべて終える。


支部長から小百合へと連絡が入るのはその二日後の事だった。


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