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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
三話「新たな生活環境と出会い」
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ただの女子にあらず

ようやく追いつめた。


康太は必死に追いかけながら相手の電撃を防ぎながら徹底的にライリーベルを追い詰めていた。


回り道をしながらも校舎の端、つまりは行き止まりに追い詰めることに成功する。この場所ならばたとえ教室の中に入ったとしても自分のいる場所を通らない限りは逃げ出すことはできない。


魔術戦では勝てないだろうが、ただの乱打戦に巻き込めばまだ勝ち目はある。あとはどれだけ接近できるかという事を考えるだけだ。


相手の魔力切れは正直期待できない。なにせ相手の素質のランクはA、それに対して自分のランクはC-。まともにやりあえばこちらが先にガス欠になるのは目に見えている。


じりじりとその距離を詰めていく中で、ライリーベルも自分が置かれている状況を理解したのだろう。仮面の向こう側にある瞳を細めながら康太を睨んでいた。


今まで一度しか魔術を発動していない康太、舐められていると思われても仕方がないだけの行動をしてきたのだ。


もしかしたらムカついているかもしれないがこちらとしても師匠からのバツがかかっているのだ。手を抜くわけにはいかない。


一気に接近したいところだが、相手だってこちらが接近戦を挑もうとしていることは把握済みだろう。その状態で何の策も用意していないとは考えにくい。


何とか隙を作ってから接近したいが、どうやって接近したものか。


康太が悩んでいると、ライリーベルは廊下にある窓の一つに手をかけた。


電撃を壁にでも流すのだろうかと思ったら、特に何も特別なことはしなかった。ただ窓を開けただけである。


ここは二階だ。たとえ飛び降りたとしても無事では済まない。そう考えていた時思い出す。今自分が相対しているのがただの女子高生ではないことを。


康太は意を決して全力で近づこうとするが、もうすでに遅かった。ライリーベルは窓に足をかけ思い切り反動をつけてから窓から飛び降りた。


普通に見れば気でも違ったのかと思うだろう。二階から飛び降りるなんてスタントマンでないとやろうとも思わない芸当である。


だが彼女は魔術師なのだ。あの階段の跳躍でも風の魔術を使って着地の衝撃を和らげていた。二階からの着地でも同様のことができると考えていい。


だが彼女は康太の予想を軽く上回る行動をとって見せた。


彼女が着地したのは渡り廊下の向こう側にある校舎の二階、いつの間にか開けていたのだろう窓の桟に軽く足をかけていた。


ただの跳躍ではない。まるで空を飛んでいるかのような軌道だった。風の力を利用して体を浮かせているのだという事が康太にも理解できる。


だがただ着地するだけではなく隣の校舎に移動するなど予想もしなかった。


当然だ、相手は自分より格上の魔術師、空を飛ぶくらいのことはしてもおかしくないと考えるべきだったのだ。


そもそも自分はまだ魔術師の考え方というものが完全にできていないのだ。あぁするかもしれないこうするかもしれないという予測がまだ不完全なのである。


どうしても常識的な考え方をしてしまう。普通の人間の考え方をしてしまう。魔術師においてその考え方ははっきり言って邪魔でしかないのだ。


相手が人間だと思ってはいけないのだ。それくらい突拍子もないようなことを普通にするのが魔術師なのだから。


康太は歯噛みしながらもと来た道を戻り渡り廊下を全力で走り抜けて彼女が到着した校舎に戻ってくる。


すると先程の光球がすでに廊下中に配置されつつあった。設置するのに時間がかかるようだが、康太が移動してくる少しの間に設置し始めたのだろう。


少しでも距離を置くとすぐに魔術で対応されてしまう。この距離を潰すのはまた難儀になるなと歯噛みしながら康太は視線の先にいるライリーベルを睨んでいた。


彼女との距離は約十五メートル程。康太の足なら数秒かからずにたどり着ける場所に立っている。


だが光球の光を廊下が妙に反射しているのが康太にも理解できた。足元が大量の水で覆われているのである。


これでは先ほど行った床に電撃を流して無力化するのが難しくなる。なにせ水を通して自分も感電してしまうかもしれない。


なんというか対応が早い。こちらの行動をすぐに潰しに来るあたりさすがというべきだろうか。


幸いなのはこちらに来るのが早かったおかげで光球の数が少ないという事だろう。通り方によっては何とか光球に触れずに相手まで接近できそうである。


だが当然向こうだってただ光球の間を通すだけの案山子状態でいるはずもない。恐らくこちらに攻撃を仕掛けてくるはずだ。


そうなったときどうすればいいか。


ここまで考えたうえで康太は覚悟を決める。魔力はほとんど使用していないため十分に残っている。この辺りで勝負を仕掛けないと自分がどんどん不利になっていくだけだ。


最速で駆け抜ける。それをするためには自分の手の内の全てを明かす必要があるだろう。


後はうまく光球を躱していく作業。さらに言えば防御も固めたいところである。


上手く動けるかどうかは自分の運動神経にかかっている、できるかどうかは不明だがやるしかない。


康太は意気込んで一気に駆けだした。


光球に接近すると同時に康太は魔術を発動した。天井に設置されている蛍光灯に加え、窓ガラスや教室の引き戸などが一斉に『外れ』ていく。


相手との視界を塞ぐ目くらまし程度になればいい。もっと言えば光球の数を少しでも減らせればよかった。


その現象を確認したうえでライリーベルは自分に向けて電撃を放ってくる。


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