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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十一話「血の契約と口約束」

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部外者としてのアドバイス

ただの敵対関係の組織であれば、その現場を見ようとするのを阻止する動きもあるかもしれないが本部の魔術師としてその二つの勢力は一応は味方の立場にある。


大手を振って見に行くのを邪魔しようとすれば組織内での立場を左右する可能性もある。


表面上仲良くしつつも、自分たちの思惑を示すためにはある程度遠回しな行動で示唆するほかない。


今回の場合で言えば康太の魔術の実演を実際に見ることで自分たちも見ているぞと相手に牽制する形になる。


今回の康太の一件にどれほどの上層部の人間が関わってくるかはさておき誰も見に来ないということはまずあり得ないだろう。


「そう言えばこの魔術って探知系の魔術には引っかかるのか?前にライブ中とかに使ってたけど」


「なんで急に・・・ってそうか、他の場所から魔術の解析ができるかどうかってことね」


康太のいいたいことを素早く把握した文はあの夏のライブ会場のことを思い出そうとしている。


康太が言っているのはやろうとしている魔術の公表に際して、上層部の魔術師が索敵や探知と言った知覚系魔術によってDの慟哭の性能や状況を探ろうとする可能性はないかという話だ。


もしそれが可能ならわざわざ危険を冒して見に行く必要もない。


「あの時使ってた索敵にはとくになにも・・・魔力が減ってるようにしか感じなかったけど・・・仮にできたとしても実際に見に来る人間はいると思うわよ?相手はそういう情報ほとんどないんだから」


「そうかな?一応だいぶ前からあった魔術なんだしそう言うところは知られててもおかしくないんじゃないか?本部としてはこれをだいぶ警戒してるみたいだしさ」


文のいう事ももっともだが康太のいう事にも一理ある。


確かに本部は康太が使用しているDの慟哭という魔術の詳細は知らない。封印指定百七十二号そのもの、あるいは発展または進化した魔術という程度の認識しかないだろう。


そう言う意味では相手はほとんど情報を有していないということになる。


対して康太のいうように封印指定百七十二号に関しては本部の魔術師はだいぶ警戒心を高めていた。


それ専用の探知魔術があっても不思議はない。そう言ったものが支部の方に伝わっておらず、あの事件の際に使われなかったという事を考えると、専用の探知魔術はないと考えるべきなのかもしれないが断定は危険である。


「だとしてもあんたにできることはないわ。その魔術に索敵されないようにするモードとかがあるなら話は別だけどね。それが嫌なら索敵魔術を使わないように条件を出せばいいじゃない」


「なるほどその手があったか・・・でもそうするとあからさまに索敵しないでくれって言うことになるよな?それはそれで警戒されないか?」


「むしろあんたとしては警戒もしてほしいんでしょ?真理さんとかに頼んで索敵魔術の警戒をしてもらえばそのあたりは解決じゃない?魔術師によっては索敵魔術が嫌いって人も結構いるし」


「そんなのいるのか?」


「割といるわよ?魔力索敵すればその人が内包している魔力の量がわかるし、物質系の索敵だったらその人の肉体的特徴がわかるからそう言うのを嫌ってる人はそれなりにいるのよ」


あんたはそう言うの気にしなさそうだけどねと小さくため息を吐きながら文は康太の体の中にある魔力をしきりに確認している。


風の魔術の発動練習をしながらの会話であるために一応文は康太の話を聞きながらもその監督をする義務がある。


今話している魔力の察知を現在進行形で行っていると知ったら康太はどう思うだろうかと一瞬思ったのだが、自分の言った通り康太はそう言う事をいちいち気にしたりはしないだろう。


自分の手の内を隠そうともしない。少なくとも文に対しては。


全幅の信頼をおいてくれているのは実に嬉しい限りなのだが、同時に不安にもなる。康太のこの考え方は時に危険ではないかと思う時があるのだ。


「じゃあそのあたりは姉さんにでも頼んでおくか。お前はそういうチェックはできないのか?」


「やろうと思えばできるけどそこまで精度は高くないわよ?索敵の索敵って地味に面倒だし・・・確実さを求めるなら真理さんに頼んだ方がいいわね。あの人ができるかどうかも現時点ではわかってないけどさ」


「たぶんできると思うんだよな。こういうことに慣れてる感じあるし」


「あぁ・・・まぁそうね。面倒事に慣れてるってのは同意するわ。あの人の一番弟子だから仕方ないのかもしれないけど」


真理は良くも悪くも小百合の一番弟子だ。デブリス・クラリスの一番弟子としてそれなりに話題にもなっただろうし注目も集めたことだろう。


そう考えると彼女が今までしてきた苦労や巻き込まれた面倒事の数は康太たちの想像をはるかに超えるものだろう。


兄弟子の不遇な環境を思って康太は一瞬涙を流しかけるが、これ以上彼女に迷惑をかけないためにも可能な限り今回の件を穏便に片付けなければならないだろう。


本部とやりあうなんてことになろう日にはさすがの康太も死を覚悟する。


小百合に襲われて以来の死の覚悟をするというのもなかなか不思議なものだなとから笑いするしかなかったが、割と真面目に窮地に立たされているのは言うまでもない。


「エアリスさんとしてはどうですか?なんか俺にできること他にありますかね?」


属性魔術の練習をしながらそんな話をしていた康太は机に向かって何やら作業をしていたエアリスの方に話を振る。


彼女も一人前の魔術師で文の師匠だ。今回の件に関していろいろ思うところもあるだろう。


何より何かアドバイスや新しい意見を貰えないかと康太は期待していた。


「そうだな・・・私としてはそこまでしっかり考えられているのだからそこまで言うことはないつもりだが・・・一つあるとすれば同行者の選別をきちんとしたほうがいいだろうね」


「同行者の選別って・・・大勢連れていくとかじゃダメなんですか?師匠と姉さんと文あたりと一緒に来てもらおうかと思ってたんですけど・・・」


康太の予定というか考えとしては師匠である小百合、兄弟子である真理、そして同盟を組んでいる文と一緒に行動しようと考えていた。


信頼できる三人だし何より一緒に訓練もやっているために連携も容易だ。危険な依頼であるのならなおさら連れて行って損はない相手であるように思う。


「本部との交渉・・・ブリーフィングの際に連れていくというのなら反対はしないが、実際の依頼の時にはやめた方がいいだろうな」


「どうしてですか?師匠って本部にも嫌われてたりするんです?」


小百合の事だから本部に目の敵にされていても別に不思議ではないのだが、今回の事は康太の方に来た依頼だ。まだ康太に選択権があるような状況なら別に連れて行っても問題はないように思える。


向こうも表向きは協力してくれると言っているのだ。そこまで気にするような事ではないと康太は考えていた。だが実際はそう簡単な話ではないようだった。


「・・・まぁ確かにあいつは結構腫れもの扱いされているが問題はそこじゃない。これは私の予想だがクラリスの奴には別件で依頼が入る。しかもそれを断ることができないような状況で」


「なんでそんなこと・・・ってもしかして師匠がいると俺に指示とか出しにくいとかそう言う話ですか?」


「当たらずとも遠からずと言ったところかな。師匠であるクラリスがいればきっと何かしら条件が変わった際に君にアドバイスなどをするだろう。それを危惧しているんだ。あいつはあれでも結構頭が回る。君を思うように動かしたかったら横からいろいろと入れ知恵をするあいつは邪魔なんだよ」


「・・・なるほど、それで本部としては俺と一緒にこれないように別件の依頼を持ってきて別行動させようと・・・」


「あくまで予想だがね・・・恐らくあいつもこのことを予想しているだろう。君の兄弟子がついてこれるかどうかは・・・正直私も予想できないが、クラリスの同行は諦めたほうがいいだろうね」


小百合はかなりの戦力だったからこそ可能なら同行してほしかったのだが、その可能性を考えていなかった。もしエアリスの予想通りのことが起きた場合小百合は同行することは難しいだろう。


康太にはまだ本部側からの遠慮があったからこそまだ選択肢を与えられているが、小百合は本部側の遠慮が一切ないかもしれない。有無を言わさずに依頼を受けなければいけないような状況にされる可能性だってあるのだ。


小百合の同行が望めなくなった今、同行者のことに関してもう一度考える必要がありそうだった。


「となるとどうするかな・・・さすがに幸彦さんは難しいだろうし・・・奏さんも忙しいだろうし・・・エアリスさんはどうです?頼んだら来てくれますか?」


「私としても君に力を貸すのは吝かではないが・・・今仕事の方が忙しくてな・・・手を貸せそうにない・・・すまないな」


康太たち学生や小百合のような半フリーターのような人間と違ってエアリスはしっかりと手に職もっている社会人だ。時間の融通というのも難しいだろう。


同じ理由で幸彦と奏も難しい。ただでさえ二人にはいろいろと迷惑をかけているのにこれ以上何か迷惑をかけるというのも康太には心苦しい。この大人三人を連れていくのは難しいだろう。


「いえ、お仕事だったら仕方ないですよ。そうなるとどうするか・・・姉さんはまだ夏休みだから頼めばたぶん来てくれると思うし文は俺とほぼスケジュール同じだから考えなくていいし」


「あんたって私の扱い案外雑よね・・・もうちょっと考えてくれてもいいんじゃないの?」


「ん・・・もしかしてなんか予定とかあるのか?部活の試合とか」


「・・・いやないけどさ・・・」


文としては一応考えて遠慮したうえで頼んでほしかったのだが、実際になにも予定がない状況ではその必要がないとしか言いようがないだけに複雑な気分である。


遠慮がないというのはそれだけ康太が親密に思ってくれているという事でもあるのだろうが親しき中にも礼儀ありという言葉があるように、ある程度考えてほしいというのが本音である。


「せめてあと一人は戦力が欲しいよな・・・しかもある程度信頼できる奴・・・俺魔術師の知り合い少ないしな・・・文誰かいないか?」


「私だってあんたと同じようなものよ・・・しかもこれだけの面倒事に同行してくれるような魔術師なんてそうそういないでしょ」


康太も文も魔術師としての交友関係はそこまで広くない。特にこれ程の事件に一緒についてきてくれるような人物というと先にあげた大人以外では思い当たらなかった。そんな中思いついたようにエアリスが手を上げる。


「それならこちらから一人推薦したい。実力に関しては君たちもよく知るところだ。存分に使ってくれて構わんぞ」


土曜日なので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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