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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十一話「血の契約と口約束」

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受けない場合

「康太に対するメリットは相手が言った通り、多大な評価と過大な金銭、そして本部内での康太の立場の変化・・・ついでに言うと普通の魔術師なら絶対にできないだろう好待遇での脅威との対峙・・・まぁ他にもいろいろあるが、私が依頼を受けたほうがいいと思った理由は別にある」


あの場では康太に利があるなんて言い方をしたがなと言いながら小百合は眉をひそめて茶の入った湯呑を傾ける。


評価や金銭、そして康太に対する印象や得られる経験。確かに他の魔術師だったら喉から手が出るほど欲しい状況なのかもしれない。


だが康太が望むような結果が得られるかどうかも分からないのだ。それだけこの状況は複雑になっている。康太を取り巻く環境が面倒なものになっているという方が正確かもしれない。


どちらにせよ、小百合はそう言ったものとは別に依頼を受けるべきであると判断しているのだ。その理由こそ康太と真理が知りたいと思っている理由でもある。


「まず、私が考えたのはお前がこの依頼を受けなかった場合の対処だ。あいつが言っていた言葉を覚えているか?」


「・・・それってどのあたりの言葉ですか?」


「あいつにこの依頼の思惑を聞いたときの話だ。今回の依頼の対象の監視状況に関して示唆していただろう」


あの時のヘンプ・ドートの発言なら康太も覚えている。『本部はすでに今回の対象を監視下に置いている』というものだ。


ついでに言えば必要な場合は本部の戦力を使って足止めをするようなことも言っていた。


小百合はその言葉を理由に、というかきっかけにして康太を説得できるようなことを言っていたが、この発言にどのような意味が含まれ、そしてどのような理由があってそのように考えたのか今でもわからない。


「あれがどうかしたんですか?いつでも状況を次の段階に話を進めることができるみたいなニュアンスですけど」


「よくわかっているじゃないか。その通りだ。向こうはすでに次の段階に進めることができるだけの手札を用意している。その意味が分からんか?」


「わかんないです」


即答しないで少しは考えろと小百合は額に手を当ててあきれ果ててしまうが、隣で話を聞いていた真理は眉をひそめてもしかしてと呟く。


何か気付いたのだろうか。さすがは我が兄弟子と康太が羨望のまなざしを向けている中小百合は話を先に進めていた。


「今回の依頼の対象、それは件の生物だけではなくお前も含まれているんだよ」


「え?何で俺が・・・ってそうか俺に依頼が来てるんだもんな・・・まさか今も監視されてるってことですか?」


「今のところその気配はないがな・・・ここではなくお前の家の方に注意を向けているのかもしれんぞ。相手に言う事を聞かせたいのなら近しい人を使って話を進める。交渉の常套手段だな」


「・・・それって脅しじゃないですか」


「そうだな。だが立派な交渉手段の一つだ。間違ってはいない」


自分の家族が人質にとられるかもしれない。その可能性を考えた時に康太の中でざわめく感覚があった。


それがデビットの残滓が引き起こすざわめきであり、同時に自分自身が怒りを覚えているという事の証明でもあった。


だが今はその怒りを収めなければならない。冷静に考えて対処しなければ今回の件はより厄介な状況になるだろう。


そしてこの可能性を先程真理も気づいたのだろう。小百合と一緒に居続けたからこそ分かったのかもしれない。相手が無茶な行動に出ることもあり、同時に小百合が無茶な行動をとることもあるのだ。


相手も自分の師匠もそう言う手段を多用していれば予想するのは難しくないという事だろう。


「だがだからこそ、あいつは最後お前に一言付け足したじゃないか。よく考えろと」


「・・・念を押すって意味だけじゃないんですか?向こうからしたら依頼を受けてくれた方が話もスムーズになるし」


「無論そう言う意味もあっただろうな。だがあいつに関していえばそれだけではなさそうだ」


話を順調に進めるためにはそれだけ高い交渉能力が必要になる。今回の康太のケースで言えば康太が求めるもの、状況をいかに作り出せるかがポイントだった。

だが康太は良くも悪くも最近評価を上げ金銭も多く入手した。得られるものをすでに得てしまった状態でいたために交渉がうまく運ばなかった。


だからこそ強硬手段に出るというのは理解できる。そして可能ならその手段をとりたくなかったというのも本音だろう。


だがそれだけではないという事は他に理由があったという事だ。それが康太にはわからなかった。


「気づいていなかったか。あの男、お前が高校生だということを知った時に初めて言いよどんだ。動揺したというよりは純粋に驚いたんだろう。件のブライトビーがまだ高校生だったという事を知らなかったんだろうな」


「なんでです?そんなもの調べればいくらだって調べられそうなもんですけど」


「一応魔術師の情報は秘匿するものだからな。個人情報はほとんど載せていない上に魔術師にとって年齢はあまり意味がない。お前のことを調べたとしてもそれは資料の上でのお前の魔術師としての活動だ。お前個人の情報じゃない」


魔術師としてのブライトビーは調べたが、八篠康太については調べていないという事だろう。だがそんなことがあるのだろうかと康太は疑問符を浮かべていた。


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