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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十話「古き西のしきたり」

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二対二

そして康太たちがそんなことを話しながら進んでいる中、三人はすでにその存在に気付いていた。


一つの建物から出てくる二人の魔術師。そして索敵用の魔術を発動した真理はさらにその裏手から二人の魔術師が出ていくのが確認できた。


「師匠、あの建物の裏から二人出ていきました。恐らく主犯格二名です」


「ふむ・・・じゃあ私は先に行く。この辺りは任せたぞ」


自分達めがけて走ってくる二人の魔術師。恐らくは裏から逃げた二人のための足止め、時間稼ぎと言ったところだろうか。


魔術師がこちらに向かってくるのを見て康太と真理は同じように走りながら魔術師との距離をつめていく。


小百合はというと少し迂回する形で廃屋の裏から出てきた主犯の二人を追うつもりのようだった。


だからこそ今目の前からやってきた二人の魔術師は康太と真理で抑えなければならない。


小百合の道を塞ぐかのように一人の魔術師が地面を隆起させ土の壁を作り出す。土属性の魔術を使う事はわかったが地味に厄介な魔術だった。なにせ地形を変化させることができる魔術というのはそれだけで優位性がある。


だが土属性の魔術が使えるのはこちらも同じことだった。


真理は相手が小百合の道を塞いだのを見ると同じように魔術を発動して人一人通るには十分すぎる通路を作って見せた。


小百合は結局止まることなく悠々と先に進むことになる。


「ビー、すぐに終わらせますよ!」


「了解です!フォローはお願いします!」


康太は槍を構えて二人の魔術師めがけて突進する。相手の魔術師も今までの康太と真理の戦闘を見ていただろう。康太が主に接近戦をするところを見ていたはずだ。


となれば相手が取る手段は大まか二つに分かれてくる。


康太と同じように近接戦闘を挑むか、康太を近づけさせないために射撃系の魔術を用いて牽制するか。


結果的に言えば今回の相手は後者を選択した。


一人の魔術師が土属性の魔術で地面をランダムに隆起させることで康太の進行を妨げ、もう一人の魔術師が人形の腕のようなものをいくつも康太へと飛ばしてきていた。


土の隆起はそこまで驚くものではなかったが、こちらに飛んできている人形の腕を見て康太は僅かに眉をひそめた。


情報にはなく、今まで見たことのないタイプの魔術だ。一体どのような効果を持っているのかと訝しんでいるとその人形の手には小型ではあるが刃物の類が握られているのがわかる。


どうやらあの手を操って攻撃や補助を行うためのもののようだった。


康太自身が振り払う事は簡単だが、ここは様子を見たほうがいいかもしれない。そんなことを考えると同時に康太はその案を破棄する。


すぐに終わらせる。自分の兄弟子がそう言ったのだ、様子を見ているような余裕はこちらにはない。


康太は槍を手に隆起する地面を軽々と飛び越えながら魔術師二人に対して一気に距離をつめようと肉体強化の魔術を発動していた。


急に速度を上げたことで人形の腕は康太の動きを捉えることができずに康太の振るう槍によって弾き飛ばされていく。


だが無数に放たれた人形の腕は康太の槍では弾き飛ばし切ることはできずに康太の腕や足を軽くつかんでいるようだった。


なるほどこういう魔術かと康太はこの魔術の特性に気付いていた。


人形の手を操る魔術。これは人形に道具を使わせることで一定以上の戦力を疑似的に有するのと同時に、その文字通り手数の多さで相手を拘束するための魔術なのだろう。


今は数個しか康太の体を掴んでいないが、これが十個二十個と増えていけばいくほど康太から体の自由を奪っていくだろう。


攻撃をすると同時に拘束を行うこともできる。特に相手が何の考えもなく突進してくるような相手であれば十分以上に効果を発揮する魔術だ。


もっとも康太が何の考えもなしに突っ込んでいるような間抜けではないのは当然である。


康太が一人であれば苦戦したかもしれない。だが今康太は一人ではなく真理と一緒に行動しているのだ。


真理も康太の体に付きまとう人形の腕の特性に気付いたのだろう。康太が近づいているのを確認して長期戦に持ち込むのはなおさら危険だと判断し早々に勝負を決めるつもりでいた。


康太が地面の隆起を飛び越えているのを確認して真理は魔術を発動。自らの周りから薙ぎ払うかのような怒涛の水流を生み出していた。


隆起によってやや上部にいる康太は全く影響を受けずに、地面を這い真っ直ぐに二人の魔術師めがけて襲い掛かる水はその足を簡単に飲みこんだ。


慌てて片方の魔術師が防波堤を作ろうと土の魔術を発動しようとするがすでに真理の術中にはまっている。真理は水属性の魔術と同時に土属性の魔術を発動し、二人の魔術師の足元の土を軽く撹拌し始めた。


水と細かな土が撹拌されることによって二人の魔術師の足はどんどんと地面の奥へと吸い込まれていく。


今さら防波堤を作っても遅いと理解した魔術師だが、目の前に迫る康太、そして水、沈んでいく足という三つの状況のせいで若干混乱したのか正しく魔術を発動できなかった。


もう片方の魔術師が先程よりも大型、恐らくはマネキンの腕を何本も康太に向けて放ち、少しでも時間を稼ごうとするも、康太はすでにこの魔術に対して対策を有していた。


再現の魔術を発動し槍の投擲をマネキンの腕めがけて放つ。


マネキンの腕は槍の一撃によって貫かれ、そのまま地面に縫い付けられるように動かなくなってしまう。


もちろん再現の魔術なので弾かれるのも動けなくなるのも一瞬だったがその一瞬ですら康太と真理にとっては十分すぎた。


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