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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十話「古き西のしきたり」

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相手の出方

「行きましょう二人とも。あとは主力級と主犯だけです」


「いいんですか?あんなの相手に二つも使ってしまって」


「多少は仕方有りません。それにまだ四つストックがあります。あとの連中にこれらは使いますよ」


「死んでないといいですけど・・・」


「周りに木々がたくさんありますし死んでないでしょ。こいつも死んでないって言ってますし」


康太の体の中から僅かに漏れる黒い瘴気、デビットの残滓は先程やってきた四人の魔術師が死んではいないという事を感じ取っていた。


どうやらこのデビットの残滓は人の生き死にや触れた対象の状態をある程度察することができるらしい。


もっともその対象が生きているか死んでいるか、元気か死にそうか程度の把握しかできないが。


それに能力というか、彼自身がそれを知ろうとしている節がある。一応神父だった頃の名残なのだろう。人の生き死に関しては多少思うところがあるらしい。自我も記憶も感情もほとんどなくしたまさに残滓というにふさわしい彼も、人が死ぬということに関しては何かしらの感情を持つのだろう。


それがプラスの感情なのか、マイナスの感情なのかは康太にもわからなかった。


「そいつは今回のことに関して何か動きはあるのか?瘴気の動きからして妙にざわついているように見えるが」


「そんなことはないですよ、割と落ち着いてます。そこまで暴れるってこともないし、手伝ってくれるようなこともなさそうですね」


今回の連中はこいつの琴線には触れてないみたいですと言いながら康太は前へと進む。


これから相手がどのような動きをするのかは不明だ。今までの演技にかかってくれているのであれば一人か二人の主力級の魔術師を送ってくるだろう。


もし演技に引っかからなかった場合は五人、小百合の読みが正しいのであれば四人の主力級を一度に相手にしなければならなくなる。


最悪、藤原を含め六人、もしかしたら主犯を含めた七人の強力な魔術師たちを相手にしなければいけない可能性が出てくるのだ。


そうなってくると康太と真理ははっきり言ってかなりつらい状況になる。ただでさえ複数戦闘というのは面倒くさいのにその中で相手がそれなりに強いとなれば康太たちとしても取れる手段が少なくなる。


真理はまだ補助に防御に攻撃、妨害と取れる手段は多くあるが、康太の場合複数戦闘となると攻撃しかまともにとれる手段がないのだ。


ここが一番の分岐点になるなと思いながら康太たちは足早に相手が本拠地としている場所へと走る。


廃屋と打ち捨てられた倉庫が建ち並ぶ場所の中でいったいどこにいるのか康太たちは未だにわかっていない。


真理が索敵用の魔術を使ってもいいのだが、相手に警戒心を与えるにはまだ早い。せめて主力級が二人出てくるまでは相手を刺激する行動は避けるべきであると康太と真理は考えていた。


「ビー、この後相手の出方について今のうちに話しておきます。もし四人同時に出てきたら三人は私が引きつけます。一人片付けてすぐに援護しに来てください」


「一人で三人も・・・?大丈夫ですか?」


「倒そうとしなければ時間稼ぎくらいはできます。ビーが早めに助けに来てくれれば三対二の状態に持ち込めます」


「・・・それくらいなら・・・相手の事を考えなければいけそうですね」


「えぇ、ただ倒すだけなら苦労はしないでしょう」


康太たちが修得している魔術は攻撃のためのものが多い。特に破壊の権化とまで言われる小百合の修得したものがその半数以上を占めている。


攻撃力だけで言えば康太も真理もそれなりどころかかなりの実力は有しているのだ。


それこそ相手の体や命の心配をしなくていいのであれば三対二の状態に持ち込めば確実に一人は倒せる。そうなれば後は数を減らすだけの作業だ。


相手がこちらの戦力を誤認していようといなかろうと、戦況を優位に進めることができるのであればその手段をとるに越したことはない。


「もし、それ以上の数が来たら、どうしますか?」


康太がしている想定は小百合の予想が外れ、主力五人が一斉に来た場合と主犯を含めた全員が来た場合だ。その場合、露払いとして康太たちが相手をするべきは主犯一人を除いた六人、残った一人の雑魚を含めれば七人になる。


それほどの数を康太と真理で相手をするとなった場合、さすがに真理にほとんどを任せるというようなことは言っていられない。


「可能なら私が足止めしたいところですが、恐らくビーにもだいぶ負担を強いると思います。その場合は先制攻撃で相手に対して無差別攻撃をしましょう。相手の戦力を少しでも削ることを優先に範囲攻撃の連発です。それが済んだら各個撃破を狙います。分散するよりは一度に相手にした方がまだ弱みも見つけられますからね」


一人で七人のうちの数人を相手にするのではなく、二人で七人を同時に相手にしようというのだ。


それも康太と真理の持つ範囲攻撃を前面に押し出した無差別攻撃。


康太たちは小百合を主犯の下へと送り届ければそれでいいのだ。それで小百合がしっかりと主犯を沈めてくれればこちらもいろいろと楽になる。


問題はこの後相手がどう動くかその一点に絞られる。そして康太たちがしっかりとその相手を倒せるかどうかにかかっている。


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