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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十話「古き西のしきたり」

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347/1515

情報収集のための

「ダメよ小百合ちゃん、それはさせられない。あなたたちを巻き込むことはできないの」


「巻き込むもなにもこちらは早く商談を終わらせて帰りたいんです。こちらにも都合というものがあるんですから」


そちらの都合など知ったことではないというかのように小百合は吐き捨てるが、今回のことに関しては利己的、あるいは自己中心的な理由ではなく土御門昭利を助けに行くという目的の下動くことになる。


小百合にしては珍しく人助けという善行を積もうとしているのだ。もっとも昭利が彼女の知り合いだったからというのもあるのだろうが。


「小百合ちゃん、あの人を連れていけるだけの戦力を向こうは用意してるのよ?あなたとあなたのお弟子さんだけじゃ・・・」


「私は京都の事情は疎くてそのあたりはわかりません。不勉強で申し訳ない」


以前小百合からも聞いたが今回商談をする予定だった土御門昭利というのは隠居しているとはいえ連盟内でもかなりの発言権を持つ人間だ。


今回の商談に当たりある程度警備も強化していたようで周囲には警備役あるいは警戒役だった魔術師が多く負傷していた。


それらを全員倒し、なおかつ昭利本人もつれていける程に相手は戦力を有しているということになる。


もしかしたら何らかの取引の末に連れていかれた可能性も否定できないが、それだけの戦力を有しているというのにこちらで動ける人間は三人しかいない。どう考えても戦力不足は否めない。


「教えていただけないというのなら私達で勝手に探すまでです。とりあえずこの場にいても話は進まなそうなので今日はお暇させていただきます」


「ちょ・・・ちょっと待ちなさい小百合ちゃん!晴君明ちゃん!あの子を止めて!」


「え?お、俺ら!?」


「ちょ・・・どうすれば・・・」


唐突に話を振られた晴と明からすればどうすればいいのかわからないという状況だっただろう。


なにせ本心から言えばむしろ小百合たちの手伝いをしたいとすら思っているのだ。なのにその小百合を邪魔するなんてことが二人にできるはずもなかった。


「どうしよう晴・・・止めたほうがいいのかな?」


「いや・・・ちゅうてもこれ・・・止めない方が・・・」


もしかしたら昭利を助けてくれるかもしれないという点から止めたいとは思わなかったのだ。


だが近くにいる詩織が強い視線を向けている手前何もせずにただ黙って立っているということはできるわけがない。


だがこうして迷っている間にも小百合とその弟子二人はこの場から去ろうとしていた。さすがにあれを放置しておくのだけはよくないだろうという事は二人にも理解できていた。


「と、とりあえず追うぞ!俺らが見張ってなきゃやばいって!」


「わ、分かった。それじゃおばさん、行ってきます!」


「お願い!あの子を止めてね!」


自らが負傷していなければ、そして家がこんな状況でなければ詩織が自らの魔術を使ってでも小百合を止めたのだろう。


いや、もしかしたら詩織の中にもほんのわずかにではあるがもしかしたら小百合が自分の夫を助けてくれるのではないかという感情があったのかもしれない。


家の問題に他人を巻き込んでしまったという申し訳なさとそれを止めることができなかった自己嫌悪で詩織は押しつぶされそうになっていた。


「おい!ちょ、ちょいまてや!」


「来たか・・・お前達もついてくるか?事情を知っている人間がいるのはこちらとしてもありがたい」


「そ、そやのうて・・・さすがにまずいやろ・・・三人だけで突破なんてできるわけ・・・」


「あぁそれと・・・いつまでその口調でいるつもりだ?目上の人間に対して敬語も使えないのかお前は?」


「いだだだだだだだ!す、すんません!すんません!やめ!頭放せやぁぁ!」


晴の頭を思い切り握りつぶさん勢いで力をかけていく小百合を見てやはりこの人はこの二人を知っているのだなと思いながら康太は少しだけ安堵していた。


少なくともこの二人は敵ではなさそうだということがわかったからである。


「師匠、この二人ってどういう知り合いなんですか?」


「ん・・・こいつらは土御門の家の分家の人間なんだがな・・・才能だけは土御門の家の中でも随一だ。双子で兄の方が晴、妹の方が明。昔の大陰陽師の安倍晴明からとってつけられたらしい・・・今年で中三だったか?」


年下だったのかと康太は二人を見比べる。確かに片方は男っぽく、片方は女の子っぽい。よく良く言われなければわからないほどに二人は似ている。


二人とも中性的な顔立ちのせいでどちらがどちらか時折分からなくなってしまう。


「だ、だから何で俺らの事しっとんのや!あんた誰や!?」


「ほう、まだそんな口がきけたか。小1まで寝小便していたくせに偉そうに・・・」


「な・・・なんでそのこと・・・あだだだだだだ!」


本当に昔のことを知っているのだろう。昔の自分の失敗や恥ずかしいことを覚えられているというのはかなりの弱みだ。


もしかしたら自分の弱みも握られているかもしれないと思うと、今頭を潰されかけている晴が他人のような気がしなかった。


なんというか晴をいじめている時の小百合はかなり輝いているなと康太は思いながらそろそろ止めるべく真理と視線を合わせて同時に頷いていた。


「はいはい、話が進みませんからそこまでに」


「大丈夫か?師匠の頭潰しはだいぶ痛いよな。下手に逆らわない方がいいぞ?」


「うぅ・・・なんなんやあの女・・・!暴力反対や・・・!」


「いきなり斬りかかった人間に言われても説得力ないけどな」


康太たちが敷地内に入った時有無を言わさずに刀で斬りかかった晴が言っても説得力は皆無だと思ったが、今は置いておくことにする。


問題はこれからの行動だ。


「で、師匠。本当にどうするつもりですか?まさか虱潰しとか言わないですよね?」


「そんなわけないだろう?藤原の仕業だというのはわかっているんだ。とりあえず藤原の本家に行って当主に確認させる。もししらばっくれるのならそれ相応の対応を」


「そんなことはさすがにさせられませんって。もうちょっと現実的な案を出してくださいよ」


「一番早い案だと思ったんだが?」


「危険すぎます。藤原の家そのものを敵に回すつもりですか?」


相手の勢力がどの程度なのか康太は正確に把握はしていないが、真理が小百合を止めるというあたりやはりそれなり以上に大きな勢力であるのは間違いない。


各家に四つの下部組織があるという事もあって少なくとも十人二十人規模の組織ではないのは間違いない。


最悪百人を超える規模の組織を相手にしなければいけない可能性があるのだ。それがただの一般人だったのならまだいいが、今回の相手は全員が魔術師。この場に幸彦がいても勝てるかどうか怪しいところだった。


「あ・・・あの・・・ちょっといいですか?」


若干控えめな声で康太たちに声をかけたのは晴の妹の明だった。


一体なんだろうかと視線を向けると、言おうかどうしようか迷っているような感じの後で彼女は口を開く。


「えと・・・私藤原の家に仲のいい子がいるので、その子に今の家の事情とかある程度聞いておきましょうか?」


「え?それって・・・大丈夫ですか?ただでさえ今家同士がぎすぎすしてるのに・・・その子との関係も悪くなるんじゃ・・・」


「大丈夫です、そんなことで仲が悪くなるようなことはないです。今までも何度か家同士で小競り合いありましたけど、あんまり変わりはなかったし」


大人が組織間でのコミュニティを持っているように子供も子供間で独自のコミュニティを形成している。


次世代の四法都連盟の関係とでも言えばいいのだろうか、大人の理屈は子供には通用しない。


対岸の火事のような状況でこういったことを眺めているのかもしれない。どちらにしろ向こうの思惑や考えがわかるのならこうした提案はむしろありがたい。


「そう言う事なら頼む。今は情報が欲しい。相手が何を求めているのか、どういう状況なのか、それが知ることができれば上手く立ち回れるかもしれん」


「わかりました・・・ちょっと待っててください」


そう言って明は電話を始める。相手はさっき言っていた仲のいい子だろうか。時折頷きながらも向こうの事情を聞きだそうと話をしているのがわかる。


「師匠、相手が徹底抗戦の構えだったらどうするんですか?」


「その時はその時だ。こちらも全力で相手をするまで・・・幸いある程度の武装は持ってきている。全員ではなく本家の人間だけでいいのならそこまで苦労はしないだろう」


「またそんな事言って・・・相手を殺す気ですか?」


「今回に関しては殺すくらいのつもりで行かないとこちらがやられかねん。いちいち加減して反撃されるのも面倒だしな」


小百合の魔術は康太の魔術以上に攻撃的なものが多い。それこそ一撃必殺でいいのなら相手がこちらに気付く前に切り伏せてどんどん前進していけばいいのだ。


邪魔をする人間は康太たちが押さえ、小百合はどんどん前へと進んでいく。そうすることで本家の人間を黙らせるつもりでいたのだろう。


どちらにせよ康太たちが苦労することに変わりはない。


「お前達だって今回装備一式は持ってきているだろう?それならある程度は立ちまわることもできるはずだ」


「そりゃ持ってきましたけど・・・あくまである程度ですよ?どれだけ持つか・・・」


真理の装備はさておき康太の武装は半分以上は消耗品だ。使えば使うほどその残弾は少なくなり長期戦になればなるほど不利になっていく。


康太の素質そのものが短期決戦向きだというのもあるが、何度も何度も戦闘を繰り返せるようなことができるようなタイプではないのだ。


「お前はあの黒いのを駆使して連中の目をくらませると同時に攪乱をしていればそれでいい。あとは真理が何とかするだろう」


「まぁそりゃ何とかしますけど・・・でもあまり過信しないでくれるとありがたいんですが・・・」


康太の使うデビットの残滓であるDの慟哭は使いようによっては相手に大きな混乱をもたらすこともできる。


その混乱に乗じて真理が攻撃を繰り出せば相手を突き崩すこともできるだろう。


兄弟弟子同士のコンビネーションとでも言えばいいだろうか、康太と真理はそこまで協力して戦った経験はないが、小百合との訓練の際に何度も手合わせをしているのだ。ある程度相手の手の内を知っているために連携はそこまで難しくはないだろう。


問題は多対多という状況を康太自身があまり経験していないという点である。


日曜日なので二回分投稿


所要につき予約投稿しました。反応が遅れるかもしれませんがどうかご容赦ください。


これからもお楽しみいただければ幸いです

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