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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
十話「古き西のしきたり」

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装備一新気分一新

康太は真理と一緒に商品のチェックを終えた後、自分の元に届いたという荷物を開いていた。


そこには確かに康太が頼んでおいた武器、防具、そして魔術師の外套もしっかりと入っていた。


「おぉ、こんな感じになったのか。うんうん、いい感じ良い感じ」


「へぇ・・・これが康太君の・・・どうです?早速着てみませんか?」


「そうですね。サイズ確認のためにまずは試着っと・・・」


康太は荷物の中の外套を手に取りとりあえず着てみることにした。


今まで着ていた外套と比べると若干こちらの方が大きめだろうか。動きにくくもなくゆとりを持たせているのがわかる。


これから康太が成長するのを見越しているのだろうかと訝しんでいる中、真理はその姿を見て何度か頷いていた。


「へぇ・・・なかなか格好いいですね。ところどころにあるオレンジと白がいい感じのアクセントになってます」


康太が羽織っている魔術師装束である外套。今まではただの黒い布だけで構成されたデザインだったのだが今はところどころにアクセントとしてオレンジや白の装飾が施されているのがわかる。


よくよく見ればそれらは昆虫の甲殻や、蜂の姿をイメージしたものだというのがわかるだろう。


だがそこまで露骨なものでもなく、しっかりと見なければただのアクセント程度にしか見えないさりげないものだった。


そしてところどころに装甲のようなものが追加されている。単純なデザインの問題だけではなく多少なりとも防御力を上げた代物だというのが一見して理解できた。


「自分じゃよくわかんないけど・・・着心地はいい感じだな・・・あとこっちもつけてみるか」


康太はそう言って入っていた荷物の一つを手に取る。それは康太の片腕に付ける用の小型の盾だった。


今までも使っていた小型の盾だが、正直近接戦闘や魔術師としての戦いでは使いどころがなくもてあましていたのだ。


だが今回の装備一新を機に新しいギミックを加えようとしたのである。


「そっちは正六角形・・・ハチの巣ですか?」


「ハニカム構造っていうらしいです。これを使っていろいろとできるんですよ。まだ何も仕込んでないんでただの盾ですけど・・・」


康太の考えるようなギミックをつけるには他ならぬ康太自身が手を加えなければならないのだ。


そこまで手間ではないとはいえまだ実用することはできない。だが装備が順調にそろっているのは良いことだった。


「それで、新しい槍とは?もう入っているんですか?」


「えっと・・・あった、これですね。こいつが俺の新しい槍です」


そう言って康太が取り出したのは竹箒の先端部分に似たパーツだった。


槍の本体ともいえる棒状の物体だが、今までの槍パーツとは大きく異なっているのが一見して理解できる。


今までの槍は棒の先端部分から刃が出ていたのに対し、今回の槍は棒の側面部分から二つ刃が出ており、棒の先めがけてやや弧を描く形となっている。


だがその先端は交わることがなく、二叉の刃を持つ槍となっていた。


「また随分と珍妙な形ですね・・・どうしてこのような形にしたんですか?普通の槍よりも強度が落ちるように思うんですが・・・」


「まぁそうなんですけど・・・ぶっちゃけ叩き付けるとか斬りつけるとかしてると普通の槍でも強度的にはそう変わりないんで・・・今回のこれはギミックを加えたいがためのものですからね。むしろそっちのギミックが今回の一番の目玉なんですよ」


康太はそう言いながら自分が今まで使っていた槍の先端部分を今回新しく作られたパーツに付け替える。


すると今までより若干ではあるが槍の長さが増したように見えた。


先端パーツが従来のものよりも少し長めになっているのだ。重量もそれなりに増しただろうが、そのくらいの違いならば康太は問題なく扱えるだろうと真理は何度か頷いた状態でその槍をまじまじと観察する。


「どんなギミックなのか気になるところではありますが・・・そのあたりは内緒ですか?」


「ちょっと驚かせたいんでまだ内緒です。準備とかもありますからまだお披露目はできませんけど・・・」


盾のギミックと同じく、この槍のギミックも康太の手間なくして完成しないのだ。まだ時間はかかるがそう遠くないうちに真理に見せることもできるようになるだろう。


「これで『ブライトビーの外套』に『竹箒改』に『ハニカムの盾』。作っておきたかった装備は一通りできましたね」


「ふふ・・・康太君がどんどんたくましくなっていって嬉しい限りです。これならもっと強くなれそうですね」


「まだまだ覚えなきゃいけない魔術は多いですけどね。それでもできる事とやることが増えるってのはいいもんです」


新たに自分の装備となった『ブライトビーの外套』『竹箒改』『ハニカムの盾』の三つ。


康太にとって初めてと言ってもいい自分だけの装備に興奮を隠せなかった。


量産された誰にでも使える武器にも魅力はあるが一点物の装備というのもまた男心をくすぐるものがあるのである。



















夏休みというのは当然だが学生にとっては遊ぶためにあるようなものだ。康太も高校生という身分を使ってそれ相応に遊ぶつもりだったのだが、当然魔術の修業や部活動などがあるとなかなか遊ぶこともできなかった。


そんなある日、部活動に精を出していると同級生の友人の青山がふと呟いた。


「・・・なぁ・・・プール行かね?」


夏の暑さと走り続けているせいもあって青山の体からは滴るほどの汗が流れている。そしてそれはそのつぶやきを聞いていた康太と島村も同様だった。


「プールって・・・また唐突だね。どうしてまた?」


「だってさ、せっかく夏休みなんだから泳ぎたいじゃん?ずっと部活とかで時間潰してるよりずっと有意義だろ?」


「まぁ確かに、夏休みなんだから海とかプールとかは一度は行きたいよな」


「だろ?そう思うだろ?行こうぜプール!」


康太も島村も別にプールに行くことを拒否しているわけではない。せっかくの夏休みなのだ。どこかに遊びに行ったり泳ぎに行ったりという楽しみがあっても罰は当たらないだろう。


実際康太も毎日のように魔術師としての修業や部活動があるせいでほとんど遊べていなかった。たまには息抜きというものも必要なのではないかと思える。


「いくならどこのプール?市民プールとかだと流石にちょっと・・・」


「近くにあるでかいプール行こうぜ。あの滑り台みたいなのがあるところ」


「あぁあそこか・・・でもあそこ行くとなるとちょっと距離あるな・・・電車でどれくらいかかるだろ・・・」


康太の記憶の中には大きなプールや飛び込み台、流れるプールなどがあるプールというより若干アミューズメントパーク的な施設が浮かんでいた。


ここからだと少し距離がある。魔術協会の門を使わせてもらえるならだいぶ楽に行くことができるのだろうが今回は一般人としての行動だ。協会の門は間違いなく使えない。


そうなってくると電車での移動が一番楽だ。ここでバイクでの移動も考えたが、泳いで疲れた帰りに事故でも起こしては冗談では済まされない。


「いくならいっそのこと女子誘おうぜ女子!八篠、鐘子とか呼んでこいよ」


「お前そっちが目的だろ・・・いやまぁ構わないけどさ・・・いつ行くんだ?」


「みんなの都合のいい日で。俺ら基本暇なんだからいつでもいいって感じだけどな」


夏休みという事もあって学生は基本暇だ。部活動に本格的に精を出している人間は一分一秒を惜しんで練習をしているが、康太を含め文もそこまで部活動に全力を注いでいるというわけではない。


そう言う意味ではみんないつでもいいということになる。


可能なら土日を外し平日の内に行きたいところである。


「俺ら三人に・・・女子も三人くらいの方がいいな。前に一緒に行動したテニス部連中連れていこうぜ」


「まだ向こうの予定とか聞いてないのに勝手に決めるなよ・・・ていうかお前まだ文のこと狙ってたのか?」


「んー・・・正直かなりの鉄壁っぷりにちょっと心がくじけかけてる。夏休み始まる前に何人か告りに行ったらしいけど玉砕したらしいぞ」


「へぇ・・・それは知らなかったな。鐘子さん大人気だね」


夏休みが始まる前に告白されていたというのは康太も知らなかった。康太と一緒に行動している時もそんなそぶりは一切見せていなかったのだ。


それだけ誰かからの告白に慣れているのか、それともただ単に告白自体をどうでもいいと考えているのか。


どちらにせよ文が一般人と付き合うつもりがないというのがうかがえる一面である。その事情を知っている康太としては青山が文に対して若干あきらめの気持ちを抱きかけているのは僥倖だった。


最初から勝ち目のない恋路をさせるよりは諦めさせた方がいいだろう。良い友達どまりの方がいいこともある。


「なんであいつのことがそんなにいいんだろうな・・・見た目はいいけど中身はいろいろとあれだぞ?」


「そりゃお前見た目がいいからだろ?俺なんて中身より見た目重視だからストライクど真ん中だったしな」


「もう少しオブラートに包みなよ・・・でも鐘子さんって見た目もいいけど性格もある程度良いように思えるけど?」


「面倒見はいいんだけどな・・・なんというか内弁慶というか・・・親しくなった奴にはズカズカといろいろというぞ?少なくとも俺に対してはそうだ」


文の面倒見の良さと優しさには心の底から感謝している。そこに嘘はないしまして嫌うようなことは一切ない。


だが康太のいうようにはっきりとものをいうあたり文の性格の強さがうかがえる。


自分のいいたいことははっきりという。しかもしっかりとものを考えたうえでの発言が多く正論ばかりなのだ。


反論しようものならその数倍の言葉が打ち返されてくる。一緒にいると楽しいのだがそれがつらいと思う人間がいるのも確かだろう。


「お前は親戚だからな、身内状態なのが普通だろ?・・・っていうかお前ちょっとテニス部のところ行って鐘子誘ってきてくれよ」


「えー・・・何で俺が・・・」


「だって親戚だろ?俺らの中で一番話しやすいじゃんか」


青山の言葉にも一理ある。確かに学校内では康太と文は親戚同士という事で話を広めてある。学校内で一番文と話しやすい男子は康太だというのは間違いないだろう。


だからと言って使いパシリ扱いされるのはあまり良い気はしなかった。


誤字報告を五件分受けたので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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