表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
三話「新たな生活環境と出会い」
33/1515

暗示の実技

康太が家に帰った後、真理は早速康太の家族に暗示の魔術を施していた。

内容は大まかに二つ


『康太は一人で帰ってきた』というものと『康太は今日の夜は外出せずずっと自室にいる』というものだった。


どちらも普段の康太の行動と変わりないものであるために、康太の母とすでに帰ってきていた父は特に何の抵抗もできずに暗示を受け入れていた。


だが実際にその暗示の魔術が発動しているのには驚いた。


自分の両親が近くにいるはずの真理を認識できないのだ。


まるでそこには誰もいないように振る舞っている。


実際に理屈は理解していたが、魔術の干渉があるとここまで効果を発揮するものだとは思っていなかった。


真理が目の前で手を振っても、通り過ぎても両親は真理の姿どころか存在すら認識できないのだ。


「なんか・・・すごいですね・・・」


「特に家の中っていうのは『家族以外はいないのが当たり前』っていう空間ですから。私が存在しないように見せることくらいはできます。もちろん過度に接触すれば解けてしまいますけど」


過度な接触。つまりは強い衝撃を伴った接触という事である。要するに殴ったりしたら暗示は解けてしまうという事だ。


夕食をとりながらテレビを見てなんでもない日常が描き出されている中、一つだけ違和感がある。


さも当然のようにその場にいる真理の存在である。


いくら魔術で暗示をかけているとはいえここまで効くのかと康太は心底感心してしまっていた。


「日常に近い生活を送れば送るほど、暗示の効果は高まります。なので普通の生活を心がけてください」


心掛けろと言われても真理がいる中で普通の生活というのはなかなかに難しい。というか妙に気恥ずかしい。


近くに兄弟子がいるだけでここまで普段通りの生活ができないとは思わなかった。というか自分の家に他人がいるという事自体が非常に強い違和感を康太に与えていた。


「そう言えば康太、高校はどうだ?そろそろ授業始まったんじゃないか?」


新聞を読みながら父がそう話しかけてくる。単なる話のきっかけなのだろうが、この場に兄弟子がいるという事でどう答えたものかと困ってしまっていた。


「いや、まだ授業はそこまで始まってない・・・今日は体力テストとかだった」


「そうか・・・高校はいると勉強は一気に進むからな、頑張れよ。部活とかはどうするんだ?また陸上か?」


「一応ね・・・他にやりたいこともないし」


「まぁ学生時代は部活があってこそだからな。だけど部活ばかりに目を向けていてはだめだぞ?ちゃんと勉強もやらないとな」


まさに父親らしいセリフだ。こういう事を話しているのを第三者に見られているというのは非常に恥ずかしい。


ただの家族の会話なのだが可能なら誰かに見られたくはないなと康太は一気に夕食を腹の中に詰めていく。


「そんなに急がなくてもいいのではないですか?」


「いえ・・・さっさと行きましょう。準備とかもあるわけですし。」


真理を信用していないわけではない。だがこういうのは信用や信頼とはまた別の話だ。家族との会話というのはあまり見られていて楽しいというものでもない。


「この後は普段はどうしているのです?」


「飯食った後はたいてい風呂です・・・でも今日はさすがに・・・」


これから行動するという事もあってさすがに今風呂に入ると湯冷めしてしまうかもしれない。


それに真理がいるような状況で風呂に入るというのも正直頂けなかった。


小百合には全裸を見られたが、真理には可能ならそう言うところは見せたくないのである。


康太はすぐに真理を連れて自室に向かうことにする。


「あの暗示ってどれくらいの時間効くんですか?」


「場合によりけりですね。日常に近ければ近い程良く効きますし長続きします。解こうと思えばいつでも可能ですよ」


「そうですか・・・俺も早めに覚えたほうがよさそうですね」


「そうですね。暗示などは魔術師にとって必須の魔術ですから覚えておいて損はありません」


魔術師にとって必須の魔術。


つまり自分はそれさえも満足に扱えないという事だ。半人前以下、ひよっこよりもレベルが低いかもしれない。


そう考えると小百合も自分と同レベルなのではと思ったのだが、彼女の場合は別の分野でかなりの実績を残している。


つまり普通の魔術師には暗示は必須だが、小百合は普通の魔術師ではないので要らないという事だろう。


いや正確には必要なのだろうが、彼女の性格上覚えていても使わない可能性が高い。


本当に魔術を隠匿するつもりがあるのか疑わしいが、とりあえず自分が師匠にした人物はそう言う人なのだ。割り切るほかない。


康太はさっさと私服に着替え、自分の部屋にあるプラモを一瞥した後小さく息をつく。


このプラモが自分の魔術の始まりだ。今日初めて実戦を行うという事で康太は多少緊張してしまっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ