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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
九話「康太とDの夏休み」

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康太の出来ること

荷物を運ぶ関係上、近くの道路までトラックで物資を運搬し、スタッフがそれを取りに行くという行動をとる必要がある。


その場合注意なのはスタッフが受け取りの判子やサインを運送屋にしたとしても、それをライブ会場の裏まで運び込む人間がスタッフではない可能性があるのだ。


康太たちがそうしたようにバイトだと嘘をついて裏側まで荷物を運び紛れ込む可能性が出てくる。


文の魔力感知によってある程度は感知してくれるだろうがすべての人間の状況を把握するのは文だってつらいだろう。


可能な限り自分がフォローしてやらなければいけない。


そんなことを考えていると康太の携帯が震えだす。着信が来ているらしくその相手は文だった。


「もしもし。問題発生か?」


『えぇ。とりあえず魔力の吸収お願い。座席番号を言えば場所はわかるかしら?』


「あぁ、その人が魔力が多くなっちゃってるんだな?」


『そうよ。危険水準まではまだあると思いたいけど、なるべく早くお願い』


時間的にそろそろ来るとは思っていたがこのタイミングで来るかと康太は内心舌打ちしていた。


やはりこういう時にもう一人人手がいれば楽になるなと思いながら康太は通話を切る前に文にもう一つ頼みごとをしておく。


「文、一度裏側から離れるから警戒頼むな。来るならたぶんこの辺りの時間帯だし」


『わかってるわ。監視は任せてあんたは吸収に集中しておきなさい。通話は続けておきなさいよ?魔力の量とか指示するから』


「了解。イヤホンに切り替える。こっちは返事できなくなるからそっちで指示だけしてくれ。あとはそっちに従うよ」


そう言って康太は自分の携帯にイヤホンをつなぎ携帯をポケットの中に入れた状態で移動を開始する。


その間に文に座席番号を聞き、場所を特定した時点で今回の自分がやるべき仕事を始めることにした。


Dの慟哭を発動しその座標の人間の下へと黒い瘴気を飛ばしていく。


位置座標の認識と指定は遠隔動作の魔術によってある程度修得しているため比較的容易に行えた。何より文が上から見て指示してくれるというのがありがたい。

康太は目標の人間に瘴気を宿らせると徐々に魔力を吸い上げていった。


一気に吸い上げると危険であるために本当に少しずつ、微量ずつの吸収によって対象に危険がないようにゆっくりと魔力を吸い上げる。


『その量を維持して・・・カウントダウンするわよ・・・三・・・二・・・一・・・やめて』


文の指示よりほんの少し早めに魔力の吸引を止めるとどうやら丁度魔力はゼロになったようだ。


調整が難しいなと康太は内心冷や汗をかきながら小さくため息を吐く。


『オッケーよ康太。今のところ魔力が多くなってる人はいない。監視に戻る前にお昼適当に買ってきてくれる?こっちの監視は私がやっておくから』


そう言えば時間も時間だ。そろそろ昼食を適当に用意したほうがいいだろうと思いながら康太は自分のポケットから携帯を取り出して通話を始める。


「それはいいけど、何買ってくる?コンビニ飯になるけど」


『なんでもいいわ。適当にお腹が膨れればそれでいいもの。あ、でもなるべく冷たいものも一緒に買ってきてくれるとうれしいかも』


「了解、適当に選んでおくよ」


『あと悪いんだけどなるべく早くお願いね。警戒はするけどここからじゃ止めるのに時間かかるから・・・』


「わかってる。なるべく急ぐよ」


昼時が最も危険だというのは康太だって理解している。康太はすぐに買って戻ってこれるように再び肉体強化の魔術を発動する。


まだ康太の肉体強化では超常的な身体能力は発揮できないがそれでも普段よりはだいぶ速く走ることができる。


この暑いのに全力疾走というのはなかなかに疲れるし暑いからやりたくないのだが事情が事情だけに仕方がない。


文に仕事を押し付けてしまっている分自分はこういう仕事をしなければ申し訳が立たないのである。


明日は事前に食事を購入して用意しておくべきだなと、自分の手際の悪さを反省しながら康太は全力で最寄りのコンビニに向かっていく。


適当に昼食を見繕って購入し、また文の元に戻るがとりあえず問題は起こっていないようだった。


「はいよ・・・お待たせ」


「ありがと・・・悪いわね走らせちゃって」


「気にすんな。ずっと集中しっぱなしってのもきついだろ?あとついでに冷たいもの幾つか買ってきたから、適当に食え」


昼食と一緒にアイスや飲み物を渡しながら康太は一度席に着いて深呼吸する。


この暑さで全力疾走したため康太の服はすでに汗まみれだ。こういうことも考慮して着替えを多く持ってきているとはいえ午前中だけでここまで疲れるとは思っていなかったのである。


ただ戦えばいいのではない、面倒ではあるがやらなければいけないことがいくつもあるというのはなかなかに疲労を蓄積させる。


これが普通の依頼なのだなと実感し康太はため息を吐きながら冷たい飲み物を一気に口に流し込んでいた。


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