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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
九話「康太とDの夏休み」

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事情説明

「トム、こいつらはなんだ?この魔術は一体なんの真似だ?」


「前に丁寧な女の子に話されたこと覚えてるか?ほらあのデブリス・クラリスの弟子の」


「・・・あぁ、ジョア何とかの話か・・・じゃあこいつが例の?」


「あぁ、あのブライトビーだそうだ」


康太の事しか二人は触れていないようだったが『あの』という意味深な単語が聞こえてきた意味を康太と文は正確に理解していた。


康太の、いや魔術師ブライトビーの名前はそれなりに知れ渡ってしまっている。

今年の四月から精力的に活動を始め、今回の八月で封印指定の事項を一つ解決に導いた。


しかも支部長の贔屓無しでも康太の功績が大きいというだけにその手柄を誰か別のものにするということもできそうにない。


文の名前が出てこないのも仕方のない話だろう。だが文としては康太ばかり目立ってしまうというのもあまり良いことともいえない。


一人の魔術師としてないがしろにされるというのは良い気はしないのである。


「それでそのブライトビーが何の用だ?それにそっちのは?」


「初めまして、ライリーベルです。今回はビーの協力者として行動を共にしています。今回の行動内容に関しては・・・」


文は自己紹介だけしてその場を康太に任せようと視線を康太の方へと移す。

自分のことをアピールしたいのであればそれだけの活躍を見せればいいだけの事。この場でするべきは康太のアシストをすることだ。出しゃばって変な目立ち方をすることではない。


「今回俺たちはサリエラ・ディコルからこのライブに参加する人員を対象にある依頼を受けました。その関係で今ライブ会場に方陣術の準備をしてあるところです。今回お二人をこんな形で呼んだのはそのことについてあらかじめお話ししておこうと思いまして」


康太がそこまで説明してようやくジェリー・パックマンは状況を読みこめたのか、警戒を完全に解いて肩を落とす。


恐らくどこかの魔術師が喧嘩を売りに来たと勘違いしたのだろう。唐突に人払いの魔術が発動したために一体何事かと思いとんできたのだ。


その心配が杞憂であったことは喜ぶべきことだが、それならば何もここまで焦る必要はなかったなと自分の行動に若干ではあるが後悔しているような節がある。


「あー・・・なるほどな・・・状況は読み取れた。で?その術ってのはどんなものだ?場合によってはその使用は許可できないけど」


「範囲内の索敵を容易にするための魔術です。範囲はライブ会場とその周囲十数メートル程度。一定間隔で術式基盤を設置してそれに魔力を流して発動するタイプです。なんなら術式までお教えしましょうか?」


文が堂々と自分の使おうとしている術式の説明をすると、二人は腕組みをした状態でその言葉が真実であるかを見抜こうとしているようだった。


文の言っているのは紛れもなく事実だ。そこには裏はない。自分だけならまだしも康太もかかわっているような状況でこんな嘘を吐くだけの理由はない。


そして何よりここで嘘をついてこの魔術師二人を敵に回すというのもあまり良い状況とは言えない。


「・・・わかった。そのくらいなら問題ないだろう。ジェリーもそれでいいだろ?」


「あぁ・・・でも言っとくけど俺とトムはその件に関わるつもりはないからな。もしそっちで面倒を起こした場合お前達だけで対処するんだぞ」


「それに関しては大丈夫です。もとより俺たちだけの行動のつもりでしたから。手伝ってもらうつもりはありません」


この辺りを行動範囲とし、魔術に関する統治をおこなっている二人としてはこの辺りで面倒を起こされるというのは非常に困るのだろう。


わざわざそのことを口に出していったのは康太が小百合、いや『デブリス・クラリス』の弟子であることが原因であると思われる。


良くも悪くも優秀で面倒事を引き起こすタイプの魔術師。その弟子ともあればそう言う行動をすることも視野にいれなければいけない。


大ごとにならなければいいが、康太は最近よく功績を上げている。功績を上げているというのは裏を返せばそれだけ面倒事に遭遇するという意味でもある。


短期間で何度も掲示板に掲載されればそれは警戒もするというものだ。特に先の封印指定の話から康太への危機感は周囲の魔術師には大きく周知されていた。


こうして目の前にやってきて警戒するなという方が無理な話である。


「こっちとしては面倒を起こされなければそれでいい。万が一がないように努めてくれるとこちらとしても助かる」


「わかっています・・・ライブっていう大きな祭りみたいなものですから人も多くなりますのでそのあたりは特に注意しておきます」


人が多くなればそれだけ面倒事は発生する。それは当然の事であり康太もそのことは十分に理解していた。


何かあるかもしれないという気持ちと、何かあるだろうなという気持ち、そして何もなければいいんだがという三つの気持ちが同居する中、康太はうまいこと状況を切り抜けるために頭を使っている。


今回の場合は一般人が相手になるがその中に魔術師がいないとも限らないのだ。そう考えると面倒が起きない可能性は限りなく低い。


いやそもそもこの状況そのものが面倒事なのかもしれないが。


「とりあえず話はそれだけか?それなら俺は巡回に戻るぞ」


「はい、わざわざ来てくれてありがとうございました」


「・・・あと一つ忠告しとくぞ。周辺の魔術師を呼ぶのにでかく魔術を張るのはやめておけ。俺らみたいのだからよかったけど他の連中からしたら喧嘩売ってるように思われるかもしれないからな」


ジェリーはそう言い残して康太たちの居る建物の屋上から去っていく。


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