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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
九話「康太とDの夏休み」

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夜までのひと時

「・・・なぁ、スタッフの人間にあらかじめ魔力を注いでおくってのできないかな?」


「え?魔力を注ぐって・・・いやまぁ・・・できなくはないけど・・・まさかそれで探知しろってこと?」


「あぁ・・・俺が一般人の客はとにかく魔力吸い上げて、裏側に入ろうとする奴を確認できないものかと」


康太がやろうとしていることを理解した文はどうだろうかと首をかしげながら口元に手を当てて唸りだす。


実際康太がやろうとしていることはできなくもない。


康太がやろうとしていることを順序立てて説明すると、まずスタッフなどのライブ関係者にある程度、体に影響のない程度の魔力を注ぎ込む。そしてその魔力は放置しておいてスタッフ以外の観客などの魔力は限りなくゼロに近くなるほどに魔力を吸い出しておく。


こうすることでライブのステージや裏方には基本的にある程度魔力を保有したものだけが存在することになる。


ライブのステージやその裏側に近づくのは基本的に関係者だけだ。もしそこに一般客が近づくようなことがあればそれは護衛としては排除する対象となりえる。


このマナの不安定な場所で観客の魔力を常にゼロにし続けるのはそれはそれで苦労するだろうが、気を付けるべき時間が昼時に集中するのであれば不可能ではない。


少なくとも今できる中では最も確実かつ効率的な方法だと言えるだろう。文もそれ以外の策は今のところ浮かんでいなかった。


「・・・穴はありそうだけど・・・確かに悪くない案ね。今できる中では一番確実かも知れないわ」


「マジか。ところで魔力注ぐのならどれくらいかかる?」


「ちょっと魔力を入れる程度であればそこまで時間は必要ないわ。一秒も触れてれば十分に魔力は注げる。たぶんあんたでもできるわ、入れる量に注意すればね」


魔力を注ぐ程度の事は康太でも可能だ。康太の場合その魔力の属性や波長などを変えるのに少々時間がかかるが今注ぐのはあくまでただの魔力。そう言った訓練は今まで山ほどやってきたのだ。そこまで苦労するという事ではない。


問題は各個人に存在する許容量の限界だ。魔術師としての素質の話にもつながるが個人によっては魔力の貯蔵ができないようなタイプの人間も存在する。そうなってくるとこの策は使えない、とは言わなくとも例外を作ってしまうことになる。


「あと確認するべきなのは人員の補充があるかどうかだな。もしこれから後にも人員が増えるとなると魔力を入れても意味がないぞ?」


「そうね・・・マネージャーに確認することが増えたわ。もし人員が増えるのであれば他にも何か手段を考えないと・・・」


「お前の魔術でスタッフ用のカードに全部マーキングすることはできないのか?」


「生き物に対してはマーキングできるけど・・・そう言えば私生き物以外の索敵ってやったことないわね・・・ていうか生物以外の索敵ってのもよくわからないけど」


本来索敵というものは生き物に対して扱うものだ。何故なら基本的に動くものは生き物で動いていないものは生き物ではない。誰かが動かそうとしない限り、何かの動力がない限り勝手に物が動くということはあり得ないのだ。


ならば生物を索敵したほうが手間が省ける。文の考えはいたって普通な索敵に対するものであると言えるだろう。


今回のように特定の状況において侵入してくる第三者を索敵する場合には生き物に対してだけの索敵では難しい。特にすでに人が多く存在している状況ではなおさら難易度は上がるだろう。


「またこんなことがないとは限らないし・・・今度までに覚えておくわ。今度がいつになるのかはわからないけど」


「もしかしたら来週にでもまた変なことに巻き込まれたりしてな」


「やめてよそういう事言うの。縁起でもない・・・それに来週あんた合宿あるんでしょ?協力できないじゃない」


「おう。だから文だけ巻き込まれる感じで」


「そんなのもっとごめんよ。あんたみたいなのでもいるのといないのとじゃ全然違うんだから」


「・・・あれ?ひょっとして俺って結構頼りにされてたりする?」


「はいはい、頼りにしてるからもっと頑張ってちょうだい。そうすれば私がもっと楽できるんだから」


文としては康太ががんばってくれるとありがたいのは事実だし、康太が思っている以上に頼りにしているのもまた事実だ。


最初あった頃は本当にただのポンコツだった康太も、徐々にではあるが魔術師として成長していっている。


とはいってもただのポンコツから少しましなポンコツにレベルアップした程度で実力面としてはまだまだと言わざるを得ない。


だが文とて康太が未熟なのは百も承知。まだ高校生であり魔術師になってから一年も経っていないのにこれだけ実力を付けただけでも驚くべきことだ。


「ふむふむ・・・頼りにされるってのも悪い気はしないな・・・よーし康太君頑張っちゃうぞ」


「はいはい頑張って。頼りにしてるんだから」


頼りにされて嬉しくない者はいない。というのは言い過ぎかもしれないが文の言葉から当てにしているのではなく本当に頼りにされているという事を感じ取ったのか、康太は笑みを浮かべながら準備運動をしている。


やる気になったのなら何よりだと思いながら文は残っていた昼食を口の中に放り込む。


今日の内にできることは残り少ないが、やるべきことはすべてやっておくべきだという考えに変わりはなく康太に続くように文も軽く準備運動をしていた。
















夕方、夏の日差しも若干ではあるが弱まりつつ全体的にオレンジ色が強くなる時間帯に康太たちは一度ライブ会場を離れていた。


何故なら護衛対象である森本奈央が大まかなリハーサルを終えホテルにチェックインすることになったのである。


ライブ会場における工作活動の全てを終えた康太たちも彼女に追従する形でホテルにチェックインすることとなった。


護衛というのは護衛対象のスケジュールに合わせて行動しなければいけないのがなかなかに面倒である。


だがさすがに真夏の日差しが襲い掛かる中ずっと屋外にいるというのもなかなかに疲れる。水分補給は適宜行っていると言っても限界がある。大々的に魔術を使えば涼を得る方法はいくらでもあるのだがそう簡単に魔術が使えないのがなかなかにもどかしいところである。


森本奈央の視界に入らないように同じホテルに入り、チェックインを済ませるために康太と文は一緒にロビーまでやってきていた。


「予約している八篠康太です。チェックインをお願いします」


「八篠康太様ですね、少々お待ちください・・・何か身分証明するものはありますか?」


「これでいいですか?」


「・・・ありがとうございます。こちらが部屋のキーになります。お食事はお部屋にご用意いたしますか?」


「いえ、レストランを使おうと思っていますが、別料金かかりますか?」


「すでに頂いているので全て無料でご利用できます。どうぞごゆっくり」


受付の人間は康太が学生であるということに若干ではあるが驚いていたようだが、こういうことが今までなかったわけでもないのか常に平静を保ちながら対応していた。そのあたりはやはりプロというべきなのだろうか。


「オッケー、チェックインできた。行こうぜ」


「さすがに汗が酷いわ・・・さっさとシャワー浴びたい・・・」


「ずっと外にいたからな。日焼けとかも酷そうだ」


「・・・ふふふ、その点は私は完璧よ。ある程度紫外線はカットしてたもの」


「・・・え?そんなのもあるのか?」


「さすがに周囲の気温までは変えられないから暑いことには変わりないけどね・・・って結構上の階なのね・・・あの人はなんていうか・・・」


奏としてはせめて部屋はいいところをとってやりたいという親切心からくるものなのだろうが、文からすれば大げさなことをと思ってしまうのだ。


もちろん安宿をとられるよりは嬉しいしモチベーションが上がるのは確かだが、なんというか複雑な気分になってしまうのである。


「まぁまぁ、あの人なりに気を使ってくれてるんだろ。こういうのは楽しんだもの勝ちだぞ?」


「あんたは随分と順応してるのね」


「さすがに毎週会ってればそうもなるって・・・慣れないとやってられないっていう感じだけどな・・・」


康太と文は一緒にエレベータに乗り込み自分たちのあてがわれた部屋のある階まで一気に移動する。


その間に康太は少しだけ声音を変えて文の方に視線を向けた。


「それで?目標は何階の何号室だ?」


「十階、しかも角部屋。なかなかいいところ取ってるわ。私たちの部屋の一つ下ね。何かあってもすぐに対処できるわ」


「もし何かあったらダイナミックに侵入することになりそうだけど・・・そのあたりはご愛敬か?」


「それは仕方ないでしょ。暴漢に襲われるよりはましだわ。ホテルにまで侵入してくる暴漢がいるとも思えないけど」


こういったホテルは基本的にロビーよりある程度上の階に行くためには専用の鍵などを差し込まないとエレベーター自体が動かないような仕掛けが施されている。


非常階段で登るにしても誰がどこの部屋にいるかわからなければ襲いようがない。


文は今魔力ではなく個人を特定するための索敵を常に発動し続けている。森本奈央がどの部屋に向かい、どの部屋で停止したのかを把握するのには事欠かない。こういう索敵は楽に行える分文は優秀だ。


「夜の護衛はどうする?ホテルの部屋ならある程度防犯はしっかりしてると思うけど・・・徹夜で見張りするか?」


「私は大丈夫だと思うけどね・・・今のところ目標がその部屋に入っていったのを確認したのはマネージャーだけ。第三者の目には入ってないわ。今のところはほぼ安全と思っていいんじゃないかしら」


「ふぅん・・・ちなみにこの建物の中にはどれくらいの人がいる?」


「明日からライブってこともあって結構人がいるわね。関係者なのかお客さんなのかは判別できないけど」


「少なくとも目標が部屋に向かって、寝たと思える行動をするまでは注視してなきゃいけないわけだ・・・文には頑張ってもらわなきゃな」


「あんたもそろそろ索敵の魔術を覚えなさい。そうしないと私の負担が減らないわ」


そうこう話しているうちに目的の階に到着し康太たちはエレベーターを降りて自分たちの部屋へと移動する。


奏が予約したという事もあってそれなり以上に広く、十分にくつろげる環境はそろっているようだった。


今日からライブが終わるまでの間、この部屋が一種の拠点になる。康太たちはとりあえず安全に行動できるように部屋の中をしっかりと調べ、魔術的な道具を広げ始めていた。


誤字報告を五件分受けたので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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