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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
九話「康太とDの夏休み」

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依頼の始まり

「ところでお前達、現地に行ってからの食事に関しては何か考えてあるのか?」


「え?いや適当に店で済ませようとか思ってますけど・・・あれ?ライブ会場の近くって飯屋あったっけ?」


「ある程度はあると思うけど・・・ってそうか、ライブ中だと人が集まっちゃうか・・・朝と夜はホテルのレストランでいいかもしれないけど・・・」


考えてなかったのかと奏はため息を吐きながら額に手を当てる。ライブ会場という事もあって近くには出店やらが出ることもある。コンビニも近くにあるし少し行けば食事処もあるのだが当然多くの人間がやってくればそう言うところも必然的に混雑するのが当たり前だ。


最悪食事がとれなくなることもあるかもしれない。そう考えるとあらかじめ食事は用意しておいた方がいいだろう。


なにせスタッフの人たちは基本的にライブの会場から離れることはない。事前に弁当などを用意して控室などで食事をとるのだ。


「そもそもの疑問なんだが、お前達はライブというものに行ったことがないのか?」


「はい・・・俺はそう言うのあんまり興味なくて・・・普通に曲聞ければいいかなと思うくらいで」


「右に同じくです。それにあまり人が多いところで騒ぐっていうのもちょっと・・・」


「・・・まぁ高校生ではライブなどに行くのは少々ハードルが高いかもしれないが・・・今の子供はそう言うものなのだろうか・・・?」


康太と文のいう事も一理あるしこれは個人の趣味嗜好であるために奏としてもあまりとやかく言えないようだ。


それに高校生という年代ではライブというのは地味にハードルが高いというのは十分にうなずける話である。


夏休みの間とは言え子供だけでライブに行くということは当然子供だけで寝泊まりするという事でもある。


親から見れば不安だし何より目の届かないところに子供を行かせるというのはあまり好ましい状況ではない。


放任主義の家などはさておき、泊りで行動するのであれば保護者代わりに誰かしら同伴するのが鉄則だ。


それに金銭的問題もある。


康太たちの場合魔術師としてある程度の収入があるためにそこまで気にしないが、基本的に高校生となるとバイトでもしない限り基本は小遣いをやりくりする形となる。


ライブとなると一日行われるため、電車賃などの移動費に加えライブのチケット代、そして当日泊まるホテル等々、かかる金は高校生が出すには若干多すぎるものになる。


高校生に敷居が高いというのも頷ける内容なだけに康太たちは苦笑してしまっていた。


個人的にライブというものにそこまで興味がわかなかったというのもそうだし、そこまでしてミュージシャンなどに会いたいという気持ちもなかったのだ。


本当のファンの方々には申し訳ないが今回は事が事だけに便乗させてもらうほかない。


「途中のコンビニとかで軽食買っておく?」


「買うのはいいけど保存がきく食べ物じゃないとまずいよな。今の時期弁当とか腐らせると怖いぞ」


「そうね・・・無難にカロリーメイトとかそう言うのかしら」


「栄養的にはいいかもだけど・・・腹もつかな・・・」


康太はそこまで大食漢というわけではないが育ち盛りの男子高校生が昼食をカロリーメイトだけで過ごすことができるかと聞かれると微妙なところだった。


「まぁとにかく食事に関してはしっかりとっておけ。朝食夕食はホテルの方でいいかもしれんが、実際活動するならしっかり食わんと力が出ないぞ」


「わかってます。もしもの場合は交代でなんか買ってもらったりしますよ。そう言う時のために助っ人として文と組んだわけですし」


「パシリ扱いはごめんだけど・・・まぁいいわ。こればっかりは仕方ないし」


「・・・ん?買い出しに行くのは俺の仕事だぞ?お前は探知ずっとやっててもらうから」


「・・・え?なに?私ずっと働いてなきゃいけないの?」


「だってお前しか探知できないじゃん」


てっきり交代しながら買い物などに行くのかと思っていたが、どうやら康太が必要なものを適宜買い出しに行くという形をとるらしかった。


確かに索敵ができる文が常に現場にいたほうが状況を把握しやすいのはわかるのだが、それにしたってずっと魔術を発動しているというのはなかなかに疲れる。

肉体的な疲労もそうだが精神的な疲労も相当なものになるだろう。


それを三日も続けるとなると彼女の疲労は計り知れない。


もしかしたら本当に倒れるかもしれないなと思いながら文は嫌そうな顔をしていた。


「一応三日間は晴れる予定だ。暑いから熱中症などにも気を付けろ。ある程度注意していても倒れる時は倒れるからな」


「わかってます。部活のとき何度かやったことがありますからね・・・」


「運動部やってると熱中症対策とか必然的に覚えるわよね・・・そう言う意味では運動部でよかったかも」


二人とも屋外活動系の運動部であるためにある程度熱中症に関する対策はしてあるつもりだった。


康太に関しては何度か熱中症で倒れたこともある。どうしてもそう言うのは出てくるものだし運動をしているのだから仕方がない。


今回はずっと立っていたりする立場なので熱中症に関してはあまり心配はしていないがある程度準備はしておかなければならないだろう。


ライブ会場の対策として熱中症対策の項目も挙げられている。この夏の時期なのだ、どこもかしこも熱中症に対しては敏感になっているという事だろう。



















ライブ前日の朝、康太と文は移動を開始していた。


奏に詳しく今回の護衛対象のスケジュールを聞き、現場に護衛対象が到着する時間にはもう現地にいることができるようにほぼ始発での出発となっていた。


さすがに夏休みという事もあって始発電車に乗る人物も多く、荷物を多く持った康太たちもそこまで目立つことはなかった。


「ふぁぁ・・・こんなに早く動くなら昨日の段階で移動しててもよかったかもしれないわね・・・」


「そう言うなよ・・・最寄りの教会からの方が時間かかるんだから」


今回のライブ会場は山梨にある特殊な公園だ。こういった野外ライブを頻繁に行える場所らしく芝の地面に若干ではあるが中心が低く、徐々に周りに行くにつれて起伏が作られている特殊な公園である。


資料によると収納人数は約五千人。少し改築すればもう少し入るらしいが実際五千人がどれくらいの規模なのか康太たちには上手くイメージできなかった。


康太たちは近くにある教会に行くために始発の電車に乗り、そこから現場最寄りの教会へと協会の門を利用して移動。そこからさらに現場へと移動することで現地へと移動していた。


現地の到着は朝七時になる少し前。目的の人物の到着が七時半より少し前という事もあり少し余裕を持っての現地到着になっていた。


「やっぱ夏とはいえこっちは涼しいわね。朝だからかしら?」


「それもあるだろうけど・・・ちょっと霧も出てるな・・・いやこれは靄か?どっちにしろ日が完全に昇ればもっと温度が上がるだろ・・・どうする?今のうちに仕込みしちゃうか?」


「そうね、できることはやっておきましょ。えっと・・・とりあえずこの敷地の把握から。地図は?」


「持ってる。行くか」


康太はあらかじめ用意しておいたこの公園の地図を用意する。


公園と言っても康太の近所にあるこじんまりとした様な公園とは規模が違う。敷地面積だけで遊園地がいくつか入るのではないかと思えるほど大きな公園だ。ところどころ湖ではないかと思えるほどの池があったり、子供たちが遊ぶ用の遊具が固まっていたりとかなりの規模の公園である。


国立公園にも近いその規模の中に康太たちが目的地とするその場所はあった。

既にステージの設営はほとんど終盤に差し掛かっている。あとは装飾や照明の確認などの本当に最終段階といったところだろうか。


康太たちがいるライブの敷地範囲ギリギリの場所だとその光景がよく見える。あらかじめ調べておいた通り若干ではあるが遠くなれば遠くなるほど起伏ができているようだ。


「こういう場所は確かにライブ向きかもな。その為用に作ったのかな?」


「かもしれないけど・・・逆でしょうね。本来この辺りには別の遊具があったんじゃない?ところどころにそれらしいあとがあるわ。たぶんだけどターザンロープとか滑り台とか、そう言うのがあったんじゃないかしら?それをライブ用に改造したんでしょ」


そっちの方が需要ありそうだしねと言いながら文はあちらこちらに視線を向けている。


確かにこういった地形では先にあげた二つの遊具は楽しく遊ぶことができるだろう。だが広い面積をその二つの為だけに使うというのは若干もったいない。それなら人を多く呼び込めるライブ会場代わりにした方がいいということになったのだろう。


遊具であれば別の場所にも作ることができるが広い敷地面積というのは日本では地味に珍しい、というか貴重なのだ。


文の考えに同調しながら康太は周囲に目を配る。


既に多くの人間が設営に関わっており、スタッフらしき人物が最終確認や設営の最終準備にかかっているのか大きな声を張り上げながら作業している。この中に入っていくのはなかなか勇気がいるだろう。


「んじゃ仕込みに入るか。場所はもう決めてあるんだろ?」


「もちろん。その地図にもう書き込んであるわ。等間隔で打ち込みたいから私も行く。まずは外周から埋めていきましょ」


「オッケー。準備はバッチリだ。目標がこっちに来るまでに終わるかな?」


「それは難しいでしょ。この広さよ?目標が到着するのが七時半として・・・ちょっとオーバーするでしょうね。あんたの魔術で打ち込んでも移動にかかっちゃうもの」


それもそうだなと言いながら康太はカバンの中にある杭を確認しながら文の後に続いていく。


今回用意した杭と布は両方とも地面に分解される素材のものだ。杭に関しては安物だが布の方は文が方陣術を発動しやすいように選んだものである。

最終日に回収の時間がないことも考慮した対策としては最低限のものと言えるだろう。


数年証拠が残ってしまうことになるが、方陣術自体が消えるのは恐らく数週間もかからない。


この夏の時期であれば恐らく二週間程度で布自体は地面に同化しかけ、方陣術は機能しなくなってしまうだろう。


それまでばれないようにある程度の調整くらいはしておいた方がいいだろうかその程度であれば何の問題もないだろう。


「問題は今回の護衛対象がどれくらい大人しくしてくれるかってことだよな・・・両方対処しなけりゃいけないとなると最悪二手に分かれることになるし」


「まぁ今日に関してはリハーサルとかで一日つぶれるでしょうし問題ないと思うけどね。明日からが本番だから今日の内にマネージャーに話を通しておきましょ。目標が来てリハーサルが始まったあたりで声をかけるのがベターかしら?」


「そこには上手いこと侵入しなきゃな。ダンボールでも運ぶ振りして近づくか」


こうして周りが作業している中に紛れるだけであればそこまで苦労はしない。康太たちだって魔術師だ。一般人を欺くくらいは訳ないのである。


土曜日なので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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