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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
九話「康太とDの夏休み」

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処女と童貞

奏のいう事が正しいと理解できてなお、納得できていても文はどうしようものかと悩み続けているようだった。


携帯で実際に泊まる部屋の内装などを調べた結果、一応ベッドは別々になっているようなのだがそれでも康太と同じ部屋で泊まるというのは初めての経験だ。

いや、実際は初めてではない。


康太が意識を失い苦しみ続けたあの三日間。文はずっと康太のそばにいた。康太が吐いても汗をかいても呻いてもずっとそばにいたのだ。


思えばあの三日間をカウントするのであれば康太と文はすでに同じ屋根の下で夜を過ごしたことになる。もっとも文にその自覚があっても康太にその自覚はないだろうが。


「まぁまぁ文。もし不安なら俺がバスルームとかそう言う場所で寝るって。そこまで不安がるなよ」


「・・・あんたは何でそんなにあっけらかんとしてんのよ・・・同級生と一緒に寝泊まりするのに何も感じないわけ?」


「・・・何も感じないかって言われりゃうそになるけどさ・・・今まで姉貴とか姉さんとか普通に女の人と接してきたからそこまで・・・それに文ならなんかあっても俺くらいはぶちのめせるだろ?」


「・・・そりゃそうだけどさ・・・」


確かに仮に康太が獣の様に襲い掛かってきたところで文にとっては何も問題ないのだ。魔術を発動してしまえば康太に勝ちの目はない。


もし康太が本気で文を手籠めにしようというのであれば分からないが康太がそう言う事をする人間ではないことは文も理解していた。


「ていうかそれだと真理さんとかとは一緒に寝泊まりしたことがあるみたいな言い方よね。そんなことあったの?」


「ん・・・いやまぁ近いことはあったな。そりゃ俺だって何も思わないわけじゃないけど普通に女兄弟とかいると気にならないもんだぞ?」


「・・・そう言うものかしら・・・」


姉がいる康太と違い文は一人っ子だ。どうしても男性に対してのイメージの違いが出てしまっているのである。


これで文に兄か弟でもいれば話は違ったのだろう。または男の兄弟弟子でもいれば違ったのだろう。男に対しての奇妙なイメージが文の中に存在しているのである。


そのイメージがどのようなものであるにせよ、文にとって男性と同じ屋根の下、同じ部屋で寝食を共にするというのは特別なもののように感じられた。


「いかにも処女らしい反応で何よりだが、最低限の恥じらいは残しておくのはいいとしてある程度割り切るようになれ。そうじゃないとこれから不便だぞ」


「しょ・・・処女であることとこの話関係ありますか!?」


「あるぞ。男に抱かれたことがない女というのはわかりやすい。男から見てどうかは知らんが同じ女からすれば丸わかりだ」


唐突に処女であるか否かについての話になって文は顔を真っ赤にして憤る。


実際文は処女であるのだがそれに関してどうこう言われるのは非常に遺憾である。割り切るかどうかは処女である以前の問題だというのが文の考えだった。


「・・・そうか、すまんな文。処女であるお前にそこまで求めるのは無理だったか。俺は大人しく風呂場で寝るよ」


「あんたも何言ってんのよ!処女バカにしてんの!?」


「・・・じゃあ初心なねんねとでもいったほうがいいのか?」


「あんた歳いくつ!?何その古い言い方!」


別に処女であることが恥ずかしいなどと思ったことはないがこうして康太にネタにされるのは非常に不愉快だった。


いや不愉快というより単に恥ずかしいというのがあるのかもしれない。康太に関しては対等でありたいと思っているのだ。自分だけそう言うところを辱められるのはなんだか不公平のように感じてしまうのである。


「そう言うあんただって童貞でしょうが!処女も童貞も大差ないっての!」


「なんだと!?確かに俺は童貞だけど俺らの歳じゃ童貞なんて普通だっての!それに俺はそれなりに女慣れしてるぞ!無駄に周りに女の人が多いんだから!」


確かに康太の周りには女性が多い。師匠である小百合、兄弟子である真理、同盟相手である文、文の師匠であるエアリス、そして小百合の師匠である智代、小百合の兄弟子である奏。


これだけ見てもすでに六人もの女性がいることになる。年齢層に関していえばかなりの層をキープしていると言えるだろう。


逆に周りにいる男は同級生の青山と島村、精霊術師の倉敷、小百合の兄弟子の幸彦と割と少なめだ。


だが文の男性関係の交友関係に比べればだいぶ多いのは言うまでもないだろう。


「やめろお前達。処女であろうが童貞であろうが要するにこの状況を割り切ることができればいいんだ。文、今回のことに関しては康太を風呂場で寝かせるようなことは許さん。またお前が風呂場で寝るなどというのも却下だ。二人ともちゃんとベッドで寝るように」


「で・・・でも奏さん・・・その・・・さすがに・・・」


「その処女臭い反応を止めろと言ってるんだ。別に処女をさっさと捨ててこいとは言わん。せめて同年代の男には慣れておけ。そうじゃないとこれから苦労するぞ」


奏の言葉に返す言葉もないのか文は複雑な表情をして分かりましたと不承不承ながら了承していた。


「頑張れよ処女。俺もなるべく気を使うからさ」


「うっさいわよ童貞。もしなんかやらかしたら不能にしてやるから・・・」


「・・・え・・・?そんな魔術あんの・・・?」


康太は一瞬冷や汗をかきながらとりあえず妙な行動だけは絶対にとらないようにしようと心に誓っていた。


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