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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
九話「康太とDの夏休み」

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正式な依頼

「でも師匠、これだけの内容だと受けようにもどんな内容なのかわからな過ぎてどうしようもないんですけど・・・これで判断しろと?」


「・・・ん・・・?あぁそう言えばお前は個人で協会経由の依頼を受けるのは初めてだったな。真理、説明してやれ」


「たまには自分で説明すればいいじゃないですか・・・えっとですね・・・基本的に協会、あるいは個人から協会を経由しての依頼は大抵このような概要を渡して受けるか受けないかを選択してもらうんです」


「何でそんなことを?さすがにこれだけじゃ判断しにくいんじゃないですか?これだけじゃほとんど何も伝えてないのと同じですよ」


康太のいう事は間違っていない。今回書類に書かれている内容は『ある地点における一般人の護衛と対処』それ以外には本当に書かれていないのだ。


一応書類としての体裁を保っているため普通に印刷されている部分にはいろいろと書かれているが結局のところ内容のない、意味のない書類であることがわかる。


重要なのは方陣術の応用で記述されたこの一文だけなのだ。これだけで判断しろというのはあまりに酷ではないだろうかと思えてしまう。


「あまり内容を書きすぎるともしそれを受領してくれなかったときに情報が洩れすぎてしまう可能性があります。受けると判断し協会で依頼人と協会の人間の合同でブリーフィングをして初めて詳細な内容を知ることができるんです」


「漏れたところで困ることなんてないんじゃないんですか?そもそも依頼してるってことは人手が足りないかその人にしかできないってことなんだし・・・」


「確かにそうかもしれませんが、もし依頼された側がその思惑を阻止したい側の人間だったらどうします?依頼は受けてくれない上に思惑を看破されて邪魔をされる可能性だってあります。魔術師が個人的に依頼を出すというのはなかなかにリスクが伴うんですよ」


今回の場合は奏さんと康太君は知り合いですのであまり適用されませんがと付け足しながら説明する真理の言葉に康太は少しずつではあるがこの明らかに足りない説明の依頼文の意味を納得しつつあった。


魔術師といえど人間だ。それぞれにそれぞれの思惑があり、その時々によって判断が大きく変わることもあるだろう。


そういう時に協会を経由して依頼を受けることを受諾させることでその依頼を完遂するという方向以外にとれる手段をなくすという意味合いもあるのだ。


依頼を受けた以上その依頼を完遂しなければ、当然魔術師としての評価は下がる。


仮に魔術師としての評価を下げてもいいほどに阻止したいような事なら話は別だが、ほとんどの場合は依頼を受けたら完遂しなければいけないような状況になってしまう。


そう言う状況に持っていくためにもこうして不完全すぎる形での説明文にする必要があるのだろう。


今までは小百合の随伴、あるいは真理との協力という形でいろいろと依頼を受けてきたりしていたが今回は康太個人に来た依頼だ。そのような手順もこれからのために覚えておいた方がいいのだろう。


「じゃあとりあえず受諾するって形にして協会に行ったほうがいいんですかね?そうすれば話も聞けるでしょうし」


「そうだな・・・あと協力者の事も考えておけ」


「協力者って・・・あぁ、この依頼のですか?」


「あぁ、大抵の依頼では協力者が許されている。今回の場合も同じだろう。私は忙しいので無理だが、真理か文当たりでも連れていけ」


「それって事前のブリーフィングにも一緒にいたほうがいいですよね?」


「その方が協力はしやすいだろうな・・・奏姉さんにも話を通しておいた方がいいだろう。今回に関してはある程度事前にやり取りをしておいた方がスムーズに話が進む」


考えてみれば今回の依頼者は奏なのだ。確かに事前にいろいろと話をしておいた方がある程度話を進めやすくなるだろう。


文にもあらかじめ話を通しておけば行動しやすくなる。予定なども決めなければいけないのだから早め早めに連絡をしておいた方が良いかもしれない。


「わかりました、とりあえず文にはメールで・・・奏さんには電話しておかなきゃ」


「でもいいんですか師匠?これじゃあまり依頼を受ける練習にはならないんじゃ・・・」


「今回に関しては大目に見てやれ・・・いきなり何もかもやれと言われても無理だろう・・・何よりこいつはそう言うマネジメントが得意じゃないだろうからな」


「・・・あー・・・まぁそう言う感じはありますけど・・・」


康太は自分の訓練やスケジュールを組むことはある程度できるが、他人のものまで入ってくると処理しきれない可能性がある。


一人二人程度ならまだいいが今回に関しては練習という意味も含めてのこの待遇だ。ある程度大目に見て丁度いいのかもしれない。


「康太、あの人の事だから割と面倒な内容であることは覚悟しておけ。文にもそのように伝えておいた方がいいだろう」


「了解です。まぁなんとなく嫌な予感してますからたぶんだいぶ面倒だと思いますけど・・・そのあたりは何とかします」


何とかする。今までの康太だったら弱音だけ吐いていたかもしれないが今の康太はいろいろと達観している節がある。


なんというか頼もしささえ感じられる表情だ。


もっともそれは表層的なものだけでその内心はどんな面倒事がやってくるか戦々恐々しているわけだが。


そして康太が文にメールを送信し終わって数分後、文の怒りを含めたメールが飛んできたのは言うまでもない。


その怒りは奏に向けてほしいんだがなとできるはずもないことを思いながら康太は奏に電話することにした。


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