免許を取ったら
「じゃあ姉さん、もし俺が精霊を連れる場合火と風になるわけですよね?その場合こいつと仲悪くなったりしますかね?」
康太の中に宿るデビットの残滓。康太自身の使用できそうな属性は火と風だ。この二つの属性の精霊を将来的に引き連れる場合、中にいるデビットと喧嘩しないか少しだけ不安なのである。
ただでさえ面倒を抱え込んでいる身としては体の中で喧嘩されるのは正直あまりいい気がしない。
「んー・・・どうでしょう・・・先ほども言いましたが精霊というのはあくまで個人での好き嫌いがありますから・・・そもそもビーの中にいるそれが精霊と喧嘩をするという事があるのかどうか・・・」
デビットの残滓がいくら精霊に近い性質を持っていたとしても実際の精霊のように互いの存在といがみ合うかどうかは微妙なところである。
もしかしたら精霊同士の仲裁役をする可能性もあるし、逆に喧嘩を誘発させる可能性だってある。
どうなるかは実際に康太が精霊を引き連れるまで分からないのだ。
「ちなみに俺は何時になったら精霊を連れていいんですか?もう精霊は見えるわけですけども」
「そうですね・・・実戦で使える属性魔術を一つでも覚えておけば連れてもいいと思いますけれど・・・まだ使えませんよね?」
「・・・はい・・・風属性で実戦向きなのを一つ覚えてる最中です。まだ練度が足りないですね・・・他にもいろいろ覚えなきゃいけない魔術が多くて・・・」
康太は今覚えなければいけない魔術が山積みだ。智代や奏から教わった魔術、小百合から教わった新魔術、そして文から教わっている風属性の魔術、真理から教わっている火属性の魔術、まだまだ課題が山積みなのだ。
「ふふ・・・確かにやることはたくさんですね。まずはできることからこなしていきましょう」
「でもそろそろ暗示の魔術はいけそうなんですよ。最近はほとんど失敗してませんし」
「そうですね。ではそろそろ暗示の魔術の試験でもしなければいけませんね。成功率百%になれば私がいなくとも暗示をかける許可を上げましょう」
「ありがとうございます・・・ようやく姉さんの負担を減らせますね」
今まで夜に魔術師として活動する際などはほとんど兄弟子である真理に暗示を手伝ってもらっていた。
だが康太が自分一人で暗示の魔術を使えるようになればようやく真理の負担を減らすことができるだろう。
今まで頼りきりだったがこれからは少しでも真理の手助けをできるようにしなければ。ただでさえ面倒くさい師匠を持っているのだ。弟子同士助け合わなければこの境遇に打ち勝つことはできないだろう。
もっとも弟子二人が協力したところで師匠である小百合に打ち勝てる保証は全くないのだが。
「そう言えばビーに師匠から何か頼みごとがあるようなことを言っていましたが・・・もう話は聞きましたか?」
「え・・・?なんか嫌な予感凄いするんですけど・・・一体どんな話か聞いてますか?可能な限り聞かなかったことにしたいです」
「ま、まぁまぁそう言わずに・・・たぶん何かしら依頼があるんじゃないでしょうか?少なくとも師匠もそこまで面倒事を回すことはしないでしょうし・・・」
「今度免許の合宿あるからあんまり面倒なことはしたくないんだけどなぁ・・・師匠の頼みごとって大抵面倒なんですよね・・・」
「あ、もう申し込みしたんですか?早いですね」
「はい、夏休み中にとっておかなきゃいけないので」
この前の封印指定の一件で大量の資金が入手できた康太はさっそく免許の合宿の申し込みをしていた。
当然万単位の金が軽く吹っ飛んだがそれでもさっさと免許を取ることができるという利点には代えられない。
免許をとったらバイクを購入しようと考えているが、どのようなバイクにしようかはまだ考えていない。
とりあえず最初は運転しやすい小型のバイクにしようと考えているが、まだ気に入った車種が見つかっていないのが現状である。
「いいですねバイク・・・もし免許が取れたらツーリングにでも行きましょうか?そのあたりの海とかにでも」
「いいですね。せっかく夏なんだしどっか旅行に行きたいところです。どうせなら避暑地とかも悪くないですね」
せっかくの高校最初の夏休みなのだ、可能な限り青春を謳歌しても損はないだろう。
最近の康太は忙しくて休むという事をしていない。日中は部活か魔術の訓練。夕方から夜にかけては魔術師として問題解決に奔走。
最近まともに休暇というものをとっていない。というより今年度に入ってから本当にただダラダラした記憶がないのだ。
そろそろ休みを入れないといろいろとダメになる気がすると康太だけではなくその様子を見ていた真理も思っていた。
常日頃努力するのは当然として、問題なのはどのタイミングで息抜きをするかという事である。
人間ストレスを抱えすぎると必ずどこかが壊れるものだ。早めに休息をとってやらねばと真理も少しだけ心配していた。




