精霊の相性
「ちなみにこれはまだ覚える必要はないかもしれませんが、好みを把握しておくことによって相性のいい精霊を複数引き連れることもできるようになるかもしれませんよ?」
「相性・・・例えばどういう精霊が相性がいいんですか?」
「そうですね・・・ビーの使える属性の火と風は比較的相性がいいですよ。互いに助長し合う間柄ですから精霊によっては仲良しになれます。あとは水と雷の属性も相性がいいですね」
「へぇ・・・案外相性がいい精霊っているんですね。じゃあ逆に相性が悪い精霊って何ですか?」
「水と火なんかは相性最悪ですね。あとは風と土、それと雷と土もあまり良くないです。しいて言えば火と土も相性が悪いかな・・・」
「・・・なんか土属性相性悪いの多くありません?」
各属性はゲームなどでよく相性の話がされるためになんとなく相性の良し悪しは理解できるのだが、どうにも土属性が妙に冷遇されているような気がしてならない。
他の属性が土属性を仲間外れにしているのではないかと思えるほどの冷遇っぷりである。土属性の精霊には同情を禁じ得ない。
「確かに土属性は他の属性と相性が悪いものが多いですが、その分土属性は大抵の状況を乗り越えられるだけの能力を有していますからね。大抵の属性に対して有利に立てますし」
どこかのポケットなモンスターでもそうだったが、土の属性というのは電気を無効化し炎に焼かれることもなく、風をものともしない。
そう言う意味では確かに単純なスペックで見るなら土属性というのはなかなかに優秀なタイプなのかもしれない。
優秀であるが故に冷遇される。なんというか土属性の精霊のキャラが見えて来たなと康太は眉をひそめていた。
「逆に土属性と相性がいい属性って何ですか?」
「そうですね・・・相性がいいというのは少し違いますが水属性は土属性よりも若干優位に立てますね。あとは・・・有名な属性だと他にはあまりないですね・・・」
「マジっすか・・・土属性ってボッチだったんだな・・・」
「そう言ういい方はちょっとあれですが・・・でも土属性はとても優秀ですよ?それだけで大抵のことはこなせます。攻撃防御補助、ある意味万能です。空は飛べませんが」
ある程度属性魔術を覚え、技術を上げていくと大概空を飛ぶことができるようになる。
風属性なら風を使って飛行機の真似事、火属性なら火を使って気球のような事ができるし雷属性なら電磁力を使っての浮遊くらいならできるだろう。
だが土属性はどうしたって空を飛ぶことができない。地面を足場にすることはできるだろうが空中で自由に動くということはできないのだ。
だが確かに真理のいう通り土属性の魔術は空を飛べないことを除けばそれなり以上に優秀である。
土を使っての攻撃は物理的な威力を持っているためになかなか使い勝手がいいし、防御はそれなり以上の強度を持っているため大抵の攻撃は防げるだろう。
相手の足場を崩したりこちらの足場を作ったりと補助的な動きも十分可能だ。一見地味かもしれないが土属性でできることは数多い。特に戦闘においてはこれ以上ない程の優位性を秘めていると言って良いだろう。
問題は他の属性との相性がそこまで良くないという点だろうか。
「でもそれなら精霊術師だって複数の精霊を連れることくらいできるんじゃないですか?普通に相性がいい精霊だけ集めるとか・・・二つの属性くらいならいけそうな気がしますけど」
「そこが微妙なところでして・・・相性がいいとは言いましたが精霊たちの好き嫌いとはまた別の次元なんですよ。康太君も和食というカテゴリーが好きでも、その料理の中で嫌いな料理はあるでしょう?たとえご飯のおかずにあっていても、個人の好き嫌いというのはどうしても出てしまうんです」
精霊の好みを食事に例えることでわかりやすく説明したつもりだったのだろうが、康太は微妙にわかりにくくなっていた。
確かに康太は和食のカテゴリーが好きだ。そして真理のいうように和食の中でもあまり好きではない料理は確かにある。
和食というカテゴリーを属性、そして料理一つ一つを精霊個人個人と考えればなるほど確かにそう言う解釈もできるなと康太は少し遅れて納得していた。
「じゃあ逆に相性が悪くても仲が良くなる精霊同士もいるってことですか?」
「そう言う事です。同じ属性でも仲が悪くなる精霊もいれば、相性が悪い中でも仲が良くなる精霊はいます。ですがそう言うのは本当に希少です。少なくとも私は見たことがありませんね」
「・・・じゃあ二個以上の属性の精霊を連れてる術師ってどうやってるんですか?まさか仲のいい精霊を引き当てるまで頑張るとか?」
「いえ、その場合はその精霊たちが望むもの、好むものを与え続けるんです。仲が悪い人と一緒にいてでも得られるものがあると思わせ続けるんですね。マイナスよりもプラス方向に意識を向けさせ続けることで相性の悪さなどを無効化するんです」
どんなに仲が悪い人間同士を同じ部屋に入れたところで、互いに別なことをしていたり全く干渉せずに別方向を向いていれば全く問題ない。
小百合やエアリスのように同じ空気を吸うのも嫌だというレベルで嫌っているなら話は別だが、生憎精霊たちにそこまでの知性はない。
子供にお菓子やおもちゃを与え続けて喧嘩をさせないようなものだ。やっていることは単純だがそれをやり続けるとなるとだいぶ苦痛だろう。
特にそれをし続けるというのがみそだ。どんなことでも継続し続けるというのはそれなり以上にエネルギーを消費するものだ。一流の精霊術師というのはなかなかに不便なものだと康太は悩ましく思っていた。




